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監査委員会報告第66号の取扱いなどを移管する「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」の公開草案のポイント

2015.05.27
新日本有限責任監査法人 会計情報トピックス
吉田 剛

<企業会計基準委員会が平成27年5月26日に公表>

企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成27年5月26日に企業会計基準適用指針公開草案第54号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」(以下「本公開草案」という。)を公表しています。
税効果会計に関連する会計基準の体系は、企業会計審議会が平成10年10月に公表した「税効果会計に係る会計基準」(以下「税効果会計基準」という。)を中心に、日本公認会計士協会から公表されている会計上の実務指針及び監査上の実務指針(会計処理に関する定め)が実務上の適用指針として定められる形となっています。これらの実務指針については、基準諮問会議から平成25年12月にASBJへ移管するための審議を行うことが提言され、平成26年2月からASBJにおいて審議が続けられてきたものです。
審議の中で、監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」に対する問題意識が強く聞かれたことから、繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針の開発(移管)を先行して進めることとされました。具体的には、以下の実務指針等のうち、繰延税金資産の回収可能性に関する定めを本公開草案に引き継ぎ、見直しが必要と考えられる点について検討が重ねられ、今般、本公開草案が公表されたものです。

  • 会計制度委員会報告第10号「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(以下「個別税効果実務指針」という。)
  • 会計制度委員会報告第6号「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」
  • 会計制度委員会「税効果会計に関するQ&A」(以下「税効果Q&A」という。)
  • 監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(以下「監査委員会報告第66号」という。)
  • 監査委員会報告第70号「その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い」(以下「監査委員会報告第70号」という。)

また、本公開草案に対しては、平成27年7月27日(月)までコメントが募集されています。

なお、日本公認会計士協会から公表されている上記実務指針等のうち本適用指針に含まれないもの及び会計制度委員会報告第11号「中間財務諸表等に関する税効果会計に関する実務指針」並びに監査・保証実務委員会実務指針第63号「諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取扱い」については、ASBJの適用指針として開発していく予定であることが示され(本公開草案第54項)、これらの移管については、本公開草案の公表後、可能な限り早急に着手する予定であるとされています。

1. 本公開草案の概要

(1) 目的(本公開草案第1項)

本公開草案は、繰延税金資産の回収可能性について、税効果会計基準を適用する際の指針を定めるものであるとされています。

(2) 繰延税金資産の回収可能性に係る取扱い

本公開草案では、監査委員会報告第66号における企業の「分類」に応じて回収可能性を判断するという枠組みを基本的に踏襲するものとしています。すなわち、企業を五つの分類に分け、それぞれの分類に応じて繰延税金資産の回収可能性を判断する現行の方法を原則として引き継いだ上で、当該定めの一部について、必要に応じた見直しを行うという形で本公開草案は作成されています。

以下では、監査委員会報告第66号の定めなどの現行の取扱いと異なる点を中心に、本公開草案における提案の概要を説明します。

① (分類1)から(分類5)の要件のいずれにも該当しない場合の取扱い(本公開草案第15項、第16項)
前述のとおり、本公開草案では監査委員会報告第66号5(1)における「会社分類」という考え方を踏襲しており、各企業は将来の課税所得による繰延税金資産の回収可能性の判断に当たり、それぞれ(分類1)から(分類5)に区分されます。これらの各分類の要件は、極力隙間が生じないように作成されていますが、それでも(分類1)から(分類5)のいずれも満たさないようなケースが想定されます。本公開草案では、そのような場合に、過去及び当期までの実績、並びに将来の見込みを総合的に勘案し、各分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに分類することが提案されています。

② (分類2)及び(分類3)に係る分類の要件(本公開草案第19項、第22項)
(分類2)及び(分類3)に係る分類の要件を判断する際の指針として、これまでの規準であった「経常的な利益(損益)」に代え、「臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得」を用いることとし、繰延税金資産の回収可能性の判断において求められる要件が「将来の課税所得の十分性」であることと平仄を合わせる形とするための提案がされています。
なお、このときに「臨時的な原因により生じたもの」を除くこととされているのは、過去において「臨時的な原因により生じたもの」は、将来においても頻繁には生じることが見込まれないと推定されるためとしています。

③ (分類2)に該当する企業におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異に係る取扱い(本公開草案第21項)
これまで、監査委員会報告第66号5(1)の(分類2)の企業におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異については、一律にそれに係る繰延税金資産の回収可能性がないものとして取り扱われていました。本公開草案では、原則としてこれまでの取扱いを踏襲するとした上で、一定の要件を満たす場合(将来のいずれかの時点で損金算入される可能性が高いと見込まれるものについて、当該将来のいずれかの時点で回収できることが合理的に説明できる場合)には、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性があるものとして取り扱うことが提案されています。

④ (分類3)に該当する企業における将来の合理的な見積可能期間に係る取扱い(本公開草案第23項、第24項)
監査委員会報告第66号では、「おおむね5年」とされていながら実務上は5年を上限として運用されていたものと考えられる(分類3)の会社における将来の課税所得の合理的な見積可能期間について、見直しが提案されています。
具体的には、各企業の実態を反映すべく、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している原因、中長期計画、過去における当該計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得の推移等を勘案した上で、5年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた将来減算一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを合理的に説明できる場合には、当該繰延税金資産に回収可能性があるものとすることが提案されています。

【図1】(分類3)に該当する企業における将来の合理的な見積可能期間に係る取扱い(本公開草案第23項、第24項)

⑤ (分類4)に係る分類の要件を満たす企業が(分類2)又は(分類3)に該当する場合の取扱い(本公開草案第28項、第29項)
現行の定めにおいて、監査委員会報告第66号ではいわゆる「④のただし書き」と呼ばれる分類があり、期末において重要な税務上の繰越欠損金が存在していたとしても、一定の要件を満たす場合には(分類3)として取り扱うものとされています。
本公開草案ではこの取扱いに一部見直しを加える形で、(分類4)の要件を満たす場合において、重要な税務上の欠損金が生じた原因、中長期計画、過去における当該計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得又は税務上の欠損金の推移等を勘案した上で、将来5年超にわたり一時差異等加減算前課税所得(後述)が安定的に生じることが合理的に説明できる場合には(分類2)に、将来においておおむね3年から5年程度一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることが合理的に説明できる場合には(分類3)に該当するものとして取り扱う提案がなされています。

【図2】(分類4)に係る分類の要件を満たす企業が(分類2)又は(分類3)に該当する場合の取扱い(本公開草案第28項、第29項)

⑥ その他


  • (分類4)、(分類5)の要件(本公開草案第26項、第30項)
    監査委員会報告第66号では、(分類4)の要件として「期末における重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社」、(分類5)の要件として「債務超過の状況にある会社や資本の欠損の状況が長期にわたっている会社で、かつ、短期間に当該状況の解消が見込まれない場合」といった要件が設けられていました。これらの要件は期末の「残高(ストック)」ベースとなっており、当該分類の他の要件や、(分類1)から(分類3)までの要件である「発生(フロー)」ベースのそれと整合しないものとなっていました。
    本公開草案では、要件を過去、当期、将来の「発生(フロー)」ベースに統一することとし、監査委員会報告第66号のときのような「残高(ストック)」ベースの要件は削除することが提案されています。
  • 「一時差異等加減算前課税所得」の定義(本公開草案第3項(9)、第11項(5)、(6))
    本公開草案では、スケジューリングされた将来減算一時差異と比較(相殺)する将来課税所得の概念を明確化しています。具体的には、「将来の事業年度における課税所得の見積額から、当該事業年度において解消することが見込まれる当期末に存在する将来加算(減算)一時差異の額(及び該当する場合には、当該事業年度において控除することが見込まれる当期末に存在する税務上の繰越欠損金の額)を除いた額」を「一時差異等加減算前課税所得」として定義し、当該「一時差異等加減算前課税所得」と、スケジューリングされた将来減算一時差異とを比較(相殺)するものとして整理されています。
  • 長期解消将来減算一時差異の取扱いなど(本公開草案第35項、第36項)
    監査委員会報告第66号5(2)で定められていたいわゆる「長期解消将来減算一時差異」の取扱いは、本公開草案でも踏襲されるものとされています。すなわち、建物に係る減価償却超過額や退職給付引当金(退職給付に係る負債)のように、スケジューリングの結果、その解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異に関する特例は、本公開草案の第35項に引き継がれることが提案されています。なお、固定資産の減損損失に関して、この「長期解消将来減算一時差異」の特例が適用とならない取扱いも、監査委員会報告第70号の取扱いが踏襲されます。

(3) 開示等(参考)

本公開草案では、注記事項に係る追加の提案は行われていません。
開示(注記)に関しては、前述した今後行われる他の実務指針の移管の際に、税効果会計に関する注記事項の見直しを行う方針が示されています。

2. 適用時期等

(1) 適用時期(本公開草案第49項(1))

平成28年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から原則適用とすることが提案されています。
ただし、平成28年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末から早期適用できるとすることが併せて提案されています。

(2) 経過措置(本公開草案第49項(3)、(4))

公表後の適用指針の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、当該期首時点の影響額を利益剰余金に加減する取扱いとすることが提案されています。ただし、その他の包括利益累計額又は評価・換算差額等に係る影響額に関しては、当該その他の包括利益累計額又は評価・換算差額等に加減することになります。
なお、後述の4. 公開草案に対するコメントの[質問8]では、本公開草案公表までの検討に際し、当該影響額を適用初年度期首の利益剰余金に加減することは適切ではないとの意見も聞かれたとし、この点に関する意見などが求められています。

3. 設例

税効果会計基準及び本公開草案で示された内容についての理解を深めるため、本公開草案では参考として以下の設例が示されています。

[設例1] 一時差異等加減算前課税所得の算定方法
[設例2] 過年度にその他有価証券を減損した場合の税効果
(税効果Q&A Q3から移管)
[設例3] 繰越外国税額控除の税効果
(個別税効果実務指針 設例6から移管)

4. 公開草案に対するコメント

本公開草案では、コメント提出者の便宜のため、以下の個別の質問が示されています。

[質問1] 企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い(66号の取扱いの枠組みを踏襲する方針への同意の有無)
[質問2] 各分類の要件を満たさない場合の取扱い(要件からの乖離度合いが最も小さいものに必ず分類するという考え方への同意の有無)
[質問3] (分類2)及び(分類3)に係る分類の要件(会計上の利益から課税所得に変更する提案への同意の有無)
[質問4] (分類2)に該当する企業におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異に係る取扱い(一部のものについて回収可能性があるとする提案への同意の有無)
[質問5] (分類3)に該当する企業における将来の合理的な見積可能期間に係る取扱い(5年超の見積可能期間を一定の場合に認めるとする提案への同意の有無)
[質問6] (分類4)に係る分類の要件に該当する企業が一定の場合に(分類2)や(分類3)に該当する取扱いを設けることへの同意の有無
[質問7] 注記事項(現行の注記事項で十分な開示が行われているかどうか、及び行われていないと考えている場合にはどのような項目を追加開示すべきか(質問7-1)、並びに本公開草案で提案された内容に伴い追加的に開示することが望ましい注記事項があるかどうか(質問7-2)など)
[質問8] 原則適用(質問8-1)、早期適用(質問8-2)及び適用初年度の取扱い(質問8-3)
[質問9] その他

なお、本稿は本公開草案の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。

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