会社計算規則及び会社法施行規則の改正のポイント

2015年2月12日
カテゴリー 会計情報トピックス

会計情報トピックス 山澤伸吾

法務省から平成27年2月6日に公表

会社法の一部を改正する法律(平成26年法律第90号)等の施行に伴い、また、平成25年の企業結合に関する会計基準の改正等を踏まえて、会社法施行規則、会社計算規則、電子公告規則、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則を改正する法務省令第6号「会社法施行規則等の一部を改正する省令」が平成27年2月6日に公布されました。

ここでは、会社計算規則の改正概要及び会社法施行規則の改正内容のうち主に事業報告等に係る部分の概要についてまとめました。

1. 改正会社計算規則の概要

(1)出資の履行を仮装した発起人(改正会社法第52条の2第1項)、設立時募集株式の引受人(改正会社法第102条の2第1項)等の支払義務が履行された場合の払込金額等の取扱い(改正会社計算規則第21条)

以下の場合の履行による払込金額又は給付額についてその他資本剰余金とする規定が新設されました。

① 出資の履行、現物出資の履行を仮装した発起人の支払義務・給付義務(改正会社法第52条の2第1項)、設立時募集株式の引受人の支払義務(改正会社法第102条の2第1項)、募集株式の引受人の支払義務・給付義務(改正会社法第213条の2第1項)

② 新株予約権が行使された場合で当該新株予約権の発行による払込みを仮装した者又は仮装されたことを知って若しくは重大な過失により知らないで募集新株予約権を譲り受けた者の仮装払込金額の全額の支払義務等(改正会社法第286条の2第1項第1号)

③ 新株予約権の行使に際しての払込みを仮装した者の払込みを仮装した金銭の全額の支払義務(改正会社法第286条の2第1項第2号)、金銭以外の財産を新株予約権の行使に際して出資の目的とするときに当該給付を仮装した者の給付を仮装した金銭以外の財産の給付義務・支払義務(改正会社法第286条の2第1項第3号)、金銭以外の財産を新株予約権の行使に際して出資の目的とするときに当該財産の価額が不足する場合の払込を仮装した者の支払義務(改正会社法第286条の2第1項第2号)

(2)監査等委員会設置会社に係る規定の整備

改正会社法により新たに設けることができることとなった監査等委員会設置会社制度(会社法第399条の2)を採用する会社に対応した計算関係書類の提供、監査の報告の内容や手続等の整備を行う改正(改正会社計算規則第125条、第128条の2、第130条等)が行われています。

(3)計算書類の表示関係

平成25年改正の企業結合に関する会計基準等に対応して、以下の改正が行われています。

① 連結貸借対照表の純資産の部及び連結株主資本等変動計算書の「少数株主持分」を「非支配株主持分」に改正(改正会社計算規則第76条第1項第2号ニ、第96条第2項第2号二)

② 連結損益計算書の「当期純損益」について非支配株主に帰属する部分を含む金額で記載することに改正(改正会社計算規則第94条第1項)

③ 連結損益計算書の当期純損益の次に非支配株主に帰属する当期純損益及び親会社株主に帰属する当期純損益を表示することに改正(改正会社計算規則第94条第3項、第4項)

④ 株主資本等変動計算書及び連結株主資本等変動計算書の利益剰余金の当期首残高に当事業年度の前事業年度における企業結合に係る暫定的な会計処理が確定した場合の影響額が含まれることを定める改正(改正会社計算規則第96条第7項第1号)

⑤ 連結計算書類の作成のための基本となる事項の「会計処理基準」を「会計方針」に名称を改正(改正会社計算規則第102条第1項第3号)

⑥ 1株当たりの当期純損益金額の注記を1株当たりの親会社株主に帰属する当期純損益金額に改正(改正会社計算規則第113条第2号)

2. 会社法施行規則の改正の概要

(1)社外取締役を置いていない一定の株式会社の「社外取締役を置くことが相当でない理由」の開示の新設

改正会社法施行規則条項
開示対象会社
開示書類等
第74条の2
社外取締役を置いていない特定監査役会設置会社(株主総会の終結の時に社外取締役を置いていないこととなる見込みであるものを含む。)(注1)が社外取締役となる見込みである者を候補者とする取締役の選任議案を株主総会に提出しない場合
株主総会参考書類
第124条第2項
事業年度の末日において監査役会設置会社(大会社に限る。)であって有価証券報告書提出会社であるものが社外取締役を置いていない場合
事業報告(注2)

(注1)特定監査役設置会社:監査役会設置会社(公開会社であり、かつ大会社であるものに限る。)であって有価証券報告書提出会社であるもの。
(注2)事業報告に記載する「社外取締役を置くことが相当でない理由」は、当該監査役設置会社の当該事業年度における事情に応じて記載し、又は記録し、社外監査役が2人以上あることのみをもって「社外取締役を置くことが相当でない理由」とすることはできない(改正会社法施行規則第124条第3項)。

(2)上記(1)の図表の下段の他、以下の事項が事業報告による開示対象として新設されています。

① 内部統制システムの運用状況の概要(改正会社法施行規則第118条第2号)

② 当該事業年度の末日において完全親会社等がない株式会社に特定完全子会社(注)がある場合の特定完全子会社の名称及び住所、当該株式会社及びその完全子会社等における特定完全子会社株式の当該事業年度の末日における帳簿価額の合計額、当該株式会社の当該事業年度に係る貸借対照表の資産の部に計上した額の合計額(改正会社法施行規則第118条第4号)

(注)特定完全子会社:当該事業年度の末日において当該株式会社及びその完全子会社等における当該株式会社のある完全子会社等(株式会社に限る。)の株式の帳簿価額が当該株式会社の当該事業年度に係る貸借対照表の資産合計額の1/5(改正会社法第847条の3第4項の規定により1/5を下回る割合を定款で定めた場合には、その割合)を超える場合における当該ある完全子会社等

③ 当該株式会社とその親会社等との間の取引(当該株式会社と第三者との間の取引で当該株式会社とその親会社等との間の利益が相反するものを含む。)で関連当事者取引の注記の対象となるものについて、当該取引をするに当たり当該株式会社の利益を害さないように留意した事項(当該事項がない場合にあっては、その旨)、当該株式会社の利益を害さないかどうかについての取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の判断及びその理由、社外取締役を置く株式会社において社外取締役の意見と異なる場合のその意見(改正会社法施行規則第118条第5号)

④ 株式会社の会社役員に関する事項についての以下の項目等を新設(改正会社法施行規則第121条)
a. 会社役員(取締役又は監査役に限る。)と当該株式会社との間で責任限定契約(会社法第427条第1項)を締結している場合の責任限定契約の内容の概要(当該契約によって当該会社役員の職務の適正性が損なわれないようにするための措置を講じている場合にあっては、その内容を含む。)(改正会社法施行規則第121条第3号)
b. 株式会社が当該事業年度の末日において監査等委員会設置会社である場合の常勤の監査等委員の選任の有無及びその理由(改正会社法施行規則第121条第10号イ)
c. 株式会社が当該事業年度の末日において指名委員会等設置会社である場合の常勤の監査委員の選任の有無及びその理由(改正会社法施行規則第121条第10号ロ)

⑤ 会計監査人設置会社における会計監査人の報酬等の額について監査役(監査役会設置会社にあっては監査役会、監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会)が同意した理由(改正会社法施行規則案第126条第2号)

3. 施行日等

本改正省令は平成27年5月1日(改正会社法の施行日)から施行されますが、経過規定が設けられています。
主な経過規定は以下のとおりです。

① 企業結合に関する会計基準等の改正に伴う、会社計算規則第76条第1項、第93条第1項、第94条第1項及び第3項から第5項まで、第96条第2項及び第8項、第102条第1項、第113条の改正部分については平成27年4月1日以後に開始する事業年度に係る連結計算書類について適用し、同日前に開始する事業年度に係るものは、なお従前の例によるとされています。

② 会社計算規則第96項第7項の改正部分については平成28年4月1日以後に開始する事業年度に係る計算書類及び連結計算書類について適用し、同日前に開始する事業年度に係るものは、なお従前の例によるとされています。ただし、平成27年4月1日以後に開始する事業年度に係るものについては、同項の規定を適用することができるとされています。

③ 施行日(平成27年5月1日)前にその末日が到来した事業年度のうち最終のものに係る株式会社の事業報告及び附属明細書の記載又は記録については、なお、従前の例によりますが、施行日(平成27年5月1日)以後に監査役の監査を受ける事業報告については改正会社法施行規則第124条第2項及び第3項の規定を適用することとされています。

本稿は主として省令改正の概要を記述したものであり、全文については以下の総務省 電子政府の総合窓口(e-Gov)のウェブサイトをご参照ください。

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