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不正リスク対応基準案のポイント

2012.12.25
新日本有限責任監査法人 会計情報トピックス
江島 智

<企業会計審議会が平成24年12月21日に「不正リスク対応基準(公開草案)」を公表>

企業会計審議会監査部会では、昨今の企業不祥事を契機とした会計不正等に対応した監査手続等、監査基準の見直しを平成24年5月30日より審議し、平成24年12月21日に「監査における不正リスク対応基準(仮称)(以下「不正リスク対応基準案」という。)の設定及び監査基準の改訂について(公開草案)」を公表しました。本公開草案は、平成25年1月25日(金)まで意見募集されています。

1. 基本的な考え方

公開草案の中心となる不正リスク対応基準案は、不正による重要な虚偽表示のリスク(以下「不正リスク」という。)に対応する監査手続を規定していますが、不正摘発自体は意図していません。また、不正リスクに画一的に対応するための追加的な監査手続の実施も求めておらず、不正による財務諸表に重要な虚偽の表示を示唆するような状況が識別されなければ、現行の監査基準に基づく監査実務と基本的には変わりはありません。

2. 適用範囲

不正リスク対応基準案は、財務諸表及び監査報告について広範囲な利用者が存在する金融商品取引法に基づいて開示を行っている企業(非上場企業のうち資本金5億円未満又は売上高10億円未満かつ負債総額200億円未満の企業は除く。)に対する監査を念頭に置いて作成されています。

3. 主な内容

不正リスク対応基準案は、(1)職業的懐疑心の強調、(2)不正リスクに対応した監査の実施、及び(3)不正リスクに対応した監査事務所の品質管理体制で構成されています。

(1) 職業的懐疑心の強調

職業的懐疑心の考え方は現行の監査基準と変更はありませんが、不正リスクに対応するためには、誤謬による重要な虚偽表示のリスクに比し、より注意深く批判的な姿勢で臨むことが必要であることが強調されています。

(2) 不正リスクに対応した監査の実施

監査実務に影響を及ぼすものや審議の過程で論点は、以下の項目です。

  • 不正リスク要因を考慮した監査計画の策定
    前文の考え方には、財務諸表全体に関連する不正リスクが識別された場合には「抜き打ちの監査手続の実施」という表現が使用されていますが、財務諸表全体レベルで不正リスクが識別された場合に、企業が想定しない要素の組み込みに留意することの強調であり、現行の財務諸表監査の枠組みから変更はありません。
  • 不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況
    監査実施の過程において付録2に例示されているような「不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況」を監査人が識別した場合、監査人は追加の監査手続を実施し、その上で適切な階層の経営者に質問を求め「不正による重要な虚偽の表示の疑義」が存在していないかどうかを判断します。
  • 不正による重要な虚偽の表示の疑義があると判断した場合の監査手続の実施
    不正による重要な虚偽の表示の疑義がある場合には、識別した不正リスクに対応する監査手続の結果から必要と判断した追加的な監査手続を実施してもなお十分かつ適切な監査証拠が入手できない場合と、「不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況」について関連して入手した監査証拠に基づいて経営者の説明に合理性がないと判断した場合があります。
    その場合には、想定される不正の態様等に直接対応した監査手続を立案し監査計画を修正し、監査手続を実施することとなります。

(3) 不正リスクに対応した監査事務所の品質管理

監査実施の各段階における不正リスクに対応した監査手続を実施するための監査事務所としての品質管理が規定されていますが、新たな品質管理のシステムの導入は求められず、不正リスクに対応する観点から特に留意すべき点が明記されています。
ただし、問題となった会計不正事件において、監査事務所間の引継に疑問が投げかけられたことから、監査事務所交代時において、前任監査事務所は、後任監査事務所に対して、不正リスクへの対応状況を含め、企業との間の重要な意見の相違等の監査上の重要な事項を伝達し、後任監査事務所から要請のあったそれらに関連する監査調書の閲覧要請に応じる、引継に関する方針と手続を定めなければならないとされました。また、後任監査事務所は、前任監査事務所に対して、監査事務所の交代理由のほか、不正リスクへの対応状況、企業との間の重要な意見の相違等の監査上の重要な事項について質問するように、引継に関する方針と手続を定めなければならないとされました。

4. 適用時期等

平成26年3月決算に係る財務諸表の監査から適用となります。なお、監査事務所の品質管理については平成25年10月1日から適用となります。



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