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「退職給付に関する会計基準」及び「退職給付に関する会計基準の適用指針」のポイント

2012.05.18
新日本有限責任監査法人 会計情報トピックス
佐伯 洋介

<企業会計基準委員会が平成24年5月17日に公表>

平成24年5月17日に、企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」(以下「会計基準」という。)及び企業会計基準適用指針第25号「退職給付に関する会計基準の適用指針」(以下「適用指針」という。)が公表されています。

本会計基準等は、財務報告を改善する観点及び国際的な動向を踏まえ、未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の処理方法、退職給付債務及び勤務費用の計算方法並びに開示の拡充を中心に企業会計基準委員会が審議を重ねた結果、公表されたものです。

1. 主な改正点

(1)未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の連結財務諸表上の処理方法(会計基準13項、24項、15項)

論点 従来 改正後
連結貸借対照表上の取扱い オフバランス B/S認識
税効果を調整した上で「その他の包括利益累計額」を計上するとともに、「退職給付に係る負債(又は資産)」を計上
連結損益計算書及び連結包括利益計算書上の取扱い
(又は連結損益及び包括利益計算書)
費用処理 当期発生額のうち、費用処理されない部分については、その他の包括利益に含める。 その他の包括利益累計額に計上されている金額のうち、当期に費用処理された部分については、その他の包括利益の調整(組替調整)を行う。

即時認識による影響

即時認識による影響

*退職給付債務から年金資産を控除した金額が、退職給付に係る負債となるため、上記の例の場合、改正前700であった退職給付に係る負債(退職給付引当金)が、改正後3,000に増加します(名称については(6)参照)。

(2)退職給付債務及び勤務費用の計算方法(会計基準19項、会計基準(注)5、適用指針24項)

論点 従来 改正後
期間帰属方法の見直し 原則として期間定額基準 期間定額基準又は給付算定式基準
割引率算定の見直し 原則:見込支払日までの平均期間
平均残存勤務期間に近似した年数も認められる
退職給付支払ごとの支払見込期間を反映するもの
例えば、以下のものが含まれる
  • 退職給付の支払見込期間及び支払見込期間ごとの退職給付の金額を反映した単一の加重平均割引率を使用する方法
  • 退職給付の支払見込期間ごとに設定された複数の割引率を使用する方法
予想昇給率反映の考え方の見直し 「確実に見込まれる」昇給等が含まれる 「予想される」昇給等が含まれる

(3)開示の拡充(会計基準30項)

退職給付債務や年金資産の増減の内訳など、国際的な会計基準で採用されているものを中心に、開示項目を拡充しています。

(4)複数事業主制度の取扱いの見直し(適用指針64項、121項)

論点 従来 改正後
類似した制度を採用している場合等の取扱い 複数事業主間において類似した退職給付制度を有している場合は、自社の拠出に対応する年金資産の額が合理的に計算できる制度とみなす 制度の内容を勘案して判断する

(5)長期期待運用収益率の考え方の明確化(適用指針25項、98項)

長期期待運用収益率の算定が、退職給付の支払いに充てられるまでの期間等を考慮して設定することを明らかにしています。 なお、従来の考え方を改めるものではないことから、会計方針の変更には該当しないとしています。

(6)名称等の変更(会計基準52項、74項、適用指針98項)

従来 改正後
  • 退職給付引当金
  • 前払年金費用
  • 過去勤務債務
  • 期待運用収益率
  • 退職給付に係る負債(*)
  • 退職給付に係る資産(*)
  • 過去勤務費用
  • 長期期待運用収益率

(*)連結財務諸表上の名称。個別財務諸表上は従来通り「退職給付引当金」又は「前払年金費用」(会計基準39項(3))

2. 適用時期(会計基準34項~38項、80項、81項)

  • 1.(1)、(3)(及び(5))は、平成25年4月1日以後開始する事業年度末に係る財務諸表から適用します。ただし、平成25年4月1日以後開始する事業年度に係る期首の財務諸表から適用することもできます。
    適用にあたっては、過去の財務諸表に対する遡及処理はしません。
    当該部分の改正は、未認識項目の即時認識による「退職給付に係る調整累計額」(その他の包括利益累計額)の計上や注記に係るものであり、原則として当期純利益及び利益剰余金に影響を及ぼすものではありません。そのため、会計方針の変更の影響額は、「退職給付に係る調整累計額」(その他の包括利益累計額)に加減します。
  • 1.(2)及び(4)は、平成26年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用します。ただし、平成25年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用することができます。
    適用にあたっては、過去の財務諸表に対する遡及処理はしません。
    当該部分の改正は、勤務費用や退職給付債務の金額等に係るものであり、当期純利益や利益剰余金に影響を及ぼすものです。そのため、会計方針の変更の影響額は期首の利益剰余金に加減します。
    なお、実務上困難な場合には、平成27年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用することも認められます。この場合、以下の注記が必要となります。
    ① 四半期
    適用していない旨及びその理由
    ② 年度
    適用していない旨、理由及び当該定めを適用した場合の当該事業年度末の退職給付債務の概算額

また、期間定額基準を採用していた場合であっても、適用初年度の期首において、給付算定式基準を選択することが認められています。

3. 公開草案からの主な変更点

公開草案の公表から、相当の期間を経過したことから、原則適用の時期が2期遅くなりました。 また、公開草案では、未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の即時認識の取扱い(1.主な改正点(1))は個別・連結にかかわらず定められていましたが、連結財務諸表のみの取扱いとなりました。

なお、公開草案公表後、企業会計基準委員会での審議の過程で未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の即時認識について経過措置を設けるかどうかの検討がなされていましたが、経過措置は設けられませんでした。

なお、本稿については概要を記載したものであり、詳細については本文をご参照ください。


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