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比較情報の取扱いに関する研究報告(中間報告)のポイント

2012.05.18
新日本有限責任監査法人 会計情報トピックス
吉田 剛

<日本公認会計士協会が平成24年5月15日付で公表>

日本公認会計士協会(会計制度委員会)は、平成24年5月15日付で会計制度委員会研究報告第14号「比較情報の取扱いに関する研究報告(中間報告)」(以下「本研究報告」という。)を公表しています。

平成23年4月1日以後開始する事業年度以後に行われる会計上の変更等より、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(過年度遡及会計基準)が適用となり、また、これに伴い、財務諸表等規則・連結財務諸表規則に「比較情報」の考え方が導入され、平成24年3月期に係る有価証券報告書より適用となります。

本研究報告は、この比較情報につき、実務上の取扱いを示すものであり、Q&A方式(全体で10個のQ&A)により構成されています。また、比較情報に関連する論点(親会社又は子会社が決算期を変更した場合の会計処理・開示における実務上の取扱いなど)についても、考え方が示されています。なお、新たな実務上の論点が生じた場合には、今後本研究報告に追加することが予定されています(本研究報告I)。

1. 本研究報告の概要

(1)比較情報に関する実務上の取扱い

本研究報告Q1として、比較情報に関する基本的な考え方が示され、比較情報が当事業年度に係る財務諸表の開示が基礎となるほか、重要な会計方針や偶発債務を例に、その考え方が説明されています。また、財務諸表の利用者の意思決定に資するかどうか、企業の業績等に関する適正な判断のために必要と考えられる事項かどうかにつき、慎重な判断が求められる旨が記載されています。

このほかに、比較情報に係る以下のそれぞれの論点が解説されています。

①連結財務諸表への移行に伴う比較情報の開示(本研究報告Q2)

前事業年度まで個別財務諸表のみを開示していた会社が、当期より連結財務諸表を作成する場合、当連結会計年度(各四半期を含む。)の連結財務諸表に対応する比較情報は存在しないため、比較情報の開示を要しないとされています。

②非連結子会社の重要性が増加した場合の比較情報の開示(本研究報告Q4)

非連結子会社の重要性が増したことにより、新たに連結することとなった場合でも、連結範囲の変更は会計方針の変更に該当しないため、比較情報の数値に連結範囲の変更の影響を反映することはありません。

また、年度の途中から重要性が増した場合でも、重要性が増加したと判断された時点以降ではなく、期首からの損益を連結財務諸表に反映する考え方が示されました。この考え方は四半期決算においても同様であり、例えば、第2四半期から重要性が増加した場合でも、期首から連結していたものとして、第2四半期決算において当該子会社の第2四半期累計期間(6か月)の損益を取り込むことになります。

③表示方法の変更に係る取扱い(本研究報告Q8)

前期に特別損益として独立掲記していた科目が、当期においては発生していない場合、原則として財務諸表の組替えは行うことは予定されておらず、前期分は独立掲記のままとし、当期分については「-」と表示する考え方が示されています。

また、特別損益に表示されていた前期に比して重要性が乏しくなった固定資産売却損益を、当期においては営業外収益・費用に表示する場合、表示方法の変更には該当せず、財務諸表の組替えは行われないと考えられる旨が示されています。

④注記に関する表示方法の変更(本研究報告Q9)

例えば、販売費及び一般管理費の内訳について注記により開示している場合には、ある費目の重要性が増したことにより当期において当該費目を開示するときには、前期の注記についても組替えを行い、表示方法の変更に関する注記を行うことになります。

なお、注記については、重要性が乏しい場合には省略が可能とされます。

⑤注記に関する比較情報(本研究報告Q10)

  • 重要な後発事象の注記
    通常、前期に開示された重要な後発事象は、当期の財務諸表に反映されていることから、比較情報として開示する意義は乏しいとされています。ただし、前期の開示事項を更改・補正し、又は経緯そのものを開示するような場合には、重要な後発事象・追加情報・偶発債務などの適切な箇所に、前期の記載事項を踏まえて開示することが考えられるとされています。
  • ストック・オプションに関する注記
    前期においてストック・オプションに係る費用計上額及び科目名を開示したが、当期においては開示を行わない場合、前期の費用計上額及び科目名に関しては、財務諸表利用者の意思決定に資するかどうかなどといった観点から記載の要否を慎重に判断する必要があるとされています。
  • 企業結合等に関する注記
    企業結合等については、非経常的な特定の取引に関する開示という性質が強いことから、当期の注記の比較情報として前期分の数値を記載することの意味がそれほど重要ではなく、原則として、比較情報の開示を不要とする考え方が示されています。

(2)決算期変更に関する会計処理・開示上の取扱い(本研究報告Q5・Q6)

①会計処理上の取扱い

親会社又は子会社が決算期を変更した場合でも、会計方針の変更には該当しないため、遡及適用は行われず、比較情報には決算期の変更の影響は反映しません。

ただし、決算期の変更は、四半期報告制度や次年度以降の比較情報の有用性などを考慮し、会計方針の変更の取扱いに準じて、親会社の第1四半期決算から決算日の統一を行うことが適当とされています。なお、年度末(いわゆる第4四半期)において決算日を統一を行うやむを得ない場合もあると考えられますが、この場合には、②に記載する「損益計算書を通して調整する方法」のみが採用でき、また、年度末に統一する理由を記載することとされています。

②子会社の決算日の変更(具体例)

12月決算の子会社が、3月決算の親会社に合わせて決算期を変更する場合、当該年度の連結決算には子会社の15か月決算(例:X1年1月~X2年3月)が取り込まれることになります。このとき、子会社のX1年1月~X1年3月の3か月の損益については、連結上、以下の2つの処理のいずれかを採用することになります。

  • 利益剰余金で調整する方法(連結株主資本等変動計算書に「決算期の変更に伴う子会社剰余金の増加高」等の科目で表示)
  • 損益計算書を通して調整する方法

変更前と変更後

また、実施した会計処理の概要等として、重要性が乏しい場合を除き、採用した会計処理の方法及び影響額(損益計算書を通して調整する方法を採用した場合)などを開示することが適当であるとされました。

③親会社の決算日の変更(具体例)

3月決算の親会社が、12月決算の子会社に合わせて決算期を変更する場合、当該年度の連結決算には子会社の12か月決算(例:X1年1月~X1年12月)が取り込まれることになります。このとき、連結決算はX1年4月~X1年12月の9か月となるため、子会社のX1年1月~X1年3月の3か月の損益については、②に記載した子会社の決算日の変更の考え方と同様、利益剰余金で調整する方法又は損益計算書を通して調整する方法のいずれかを採用することになります。

(3)その他

①初めて連結財務諸表を作成する場合の会計方針の変更(本研究報告Q3)

他の子会社を取得したことにより初めて連結財務諸表を作成する場合でも、親会社において会計方針の変更が行われているときには、連結財務諸表上、当該会計方針の変更に係る注記が必要である旨が示されています。

②会計方針の変更と表示方法の変更の区別(本研究報告Q7)

従来、売上高と売上原価を総額で表示していた取引について、純額で表示する方法に変更する際に、過年度における総額表示が適切であり、取引契約の内容変更等がない場合、損益の認識又は測定の変更を伴うものであるため、会計方針の変更として取り扱われる旨が確認されています。

2. 適用時期等

研究報告は、実務指針と異なり、規範性はないため、あくまで参考としての位置付けとなります(本研究報告I)。

また、研究報告という性格から適用時期は特に示されていませんが、公表日から適用となるものと考えられ、3月末決算会社を前提とすると、本年6月に提出される有価証券報告書や、公表日を含む事業年度である平成25年3月期決算の会計処理において、研究報告の取扱いを斟酌することが考えられます。

3. 公開草案から変更された主な点

平成24年3月に公表された本研究報告の公開草案において示されていた「Q3 個別財務諸表への移行に伴う比較情報の開示」 が削除されています。

公開草案のQ3では、前連結会計年度まで連結財務諸表及び個別財務諸表を開示していた会社が、唯一の子会社を売却した結果、個別財務諸表のみの開示へと移行する場合、比較情報をどのように開示するかについて考え方が示されていました。当該項目について、公開草案の公表後にさらに関連して検討すべき事項が生じたため、結論を含めて引き続き検討することとされ、今般公表された中間報告では削除されています。過年度遡及会計基準の適用後、個別財務諸表のみの開示へと移行する場合、慎重な検討が必要と考えられますので、ご留意ください。

なお、本稿は本研究報告の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。


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