「年金資産の消失に係る会計処理に関する監査上の取扱いについて」のポイント

2012年3月26日
カテゴリー 会計情報トピックス

会計情報トピックス 佐伯洋介

日本公認会計士協会が平成24年3月22日に公表

平成24年3月22日に自主規制・業務本部平成24年審理通達第1号「年金資産の消失に係る会計処理に関する監査上の取扱いについて」が公表されています。

当該審理通達は、最近の新聞等で報道されている投資顧問会社と投資一任契約を結んだ年金基金に関する年金資産の消失事案(以下、「本件事案」という。)に関して、監査上の留意事項として、取りまとめられたものです。

1. 概要

(1)年金資産の消失の処理について

年金資産の消失の詳細な内容について不明な状況であっても、年金資産の大半の消失がほぼ確実に見込まれるとされる現状からは、入手可能な情報を収集し、消失が見込まれる金額を合理的に見積もり、退職給付引当金を計上することが適切であるとの考え方が示されています。

引当金の計上に伴い発生する損失(消失が見込まれる年金資産の額)は、通常の取引以外の原因に基づいて発生した臨時的損失と考えられることから、監査上、特別損失として処理することが適切であるとの考え方が示されています。 なお、引当金の計上にあたっては、本件事案の情報入手の困難性も考慮の上、入手可能な情報に基づいて合理的な金額が見積もられていることを確かめる必要があるとしています。

(2)複数事業主制度を採用している場合

複数事業主制度を採用し、退職給付に係る会計基準注解(注12)により、要拠出額を退職給付費用として処理している場合(例外処理)、企業年金基金における詳細な年金資産の状況が入手可能で、将来の追加拠出に伴う損失の発生の可能性について、企業会計原則注解(注18)の要件を満たす場合には、財務諸表作成時に入手可能な情報を収集し、合理的な金額を見積もり、引当金を計上するとともに費用(損失)処理することが適切であるとの考え方が示されています。

また、注記にあたっては、本件事案に係る一任契約を行っている年金資産の額が、制度全体の年金資産に占める割合が高く、将来の掛金拠出等への影響が重要であると想定される場合、当該事案の概要、将来の掛金等へ影響がある旨などを補足的に説明するという考え方が示されています。

2. 適用時期

公表日(平成24年3月22日)からの適用となります。

なお、本稿は本審理通達の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。

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