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過年度遡及及び包括利益の表示に対応する実務指針(会計制度委員会報告)等の改正に係る公開草案等のポイント

2011.01.21
新日本有限責任監査法人 会計情報トピックス
吉田 剛

<日本公認会計士協会が平成23年1月19日に公表>

日本公認会計士協会(会計制度委員会)は、平成23年1月19日に、以下の会計制度委員会報告等の改正案を公表しています。

  1. 会計制度委員会報告第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」(以下「外貨実務指針改正案」という。)
  2. 会計制度委員会報告第12号「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」(以下「研究開発費実務指針改正案」という。)
  3. 会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品実務指針改正案」という。)
  4. 「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A」(以下「研究開発費Q&A改正案」という。)
  5. 「金融商品会計に関するQ&A」
  6. 「税効果会計に関するQ&A」(以下「税効果Q&A改正案」という。)

これらは、企業会計基準委員会(ASBJ)より平成21年12月に公表された企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下、「過年度遡及会計基準」という。)及び同じくASBJより平成22年6月に公表された企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」(以下、「包括利益会計基準」という。)を受け、既存の実務指針等の改正案が公表されたものです。

なお、本公開草案に対しては、平成23年2月8日(火)までコメントが募集されています。

1. 改正提案内容の概要

(1)包括利益会計基準の公表に伴う改正

金商法開示対象会社においては、平成23年3月31日以後終了する連結会計年度の連結財務諸表より、包括利益の表示が行われますが、これに対応する形で、以下の内容の実務指針等の改正が提案されています。

在外子会社等のその他の包括利益の換算(外貨実務指針改正案第31-2項、第70-2項、設例10-2)

外貨建取引等会計処理基準で明示されていない在外子会社等のその他の包括利益の換算に係る定めが設けられます。

企業会計基準適用指針第8号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針」第7項(2)また書きにおいては、親会社による株式の取得後に生じた評価・換算差額等につき、決算時の円換算額を付すものとされています。このように貸借対照表の純資産の残高は、毎期決算時の為替相場で換算される定めとなっていることから、連結包括利益計算書(又は連結損益及び包括利益計算書)のその他の包括利益に関して、当期末と前期末(当期首)の円換算額の差額で算定されることになります。

(2)過年度遡及会計基準の導入に伴う改正

平成23年4月1日以後開始する事業年度より、過年度遡及会計基準が適用されることに伴い、以下の内容の実務指針等の改正が提案されています。

① 遡及適用又は修正再表示に伴う税効果会計(税効果Q&A改正案Q13)

過年度遡及会計基準の導入による遡及処理の定めに対応し、遡及適用及び修正再表示の場合の税効果会計の考え方が示されています。 会計方針の変更に伴う遡及適用又は過去の誤謬の訂正による修正再表示により、過年度の資産又は負債の残高が修正された場合、税務上の残高は修正されないことから、この差額が通常は一時差異に該当し、税効果会計を適用することになるとされています。

また、回収可能性の判断に際し、遡及適用により過年度の監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(以下「66号」という。)5.の例示区分が形式的に変動したとしても、会計方針の変更によって会社の本質的な収益力は変化せず、また見積りの変更が将来にわたって会計処理するとされていることとの整合より、例示区分の変更の影響は、会計方針を変更した期の損益に反映することとされています。

一方、修正再表示により66号5.の例示区分が変更となったような場合には、修正後の例示区分を基礎として、過去の時点での回収可能性を判断し、修正再表示に一部として過去の財務諸表を修正することが示されています。

② ソフトウェアの見込販売数量を変更した場合の会計処理(研究開発費実務指針改正案第18項、研究開発費Q&A改正案Q22など)

ソフトウェアの見込販売数量の見直しの結果として、当初予見することができなかった原因により見込販売数量の著しい減少が見込まれる場合に、当該ソフトウェアの経済価値の減少部分を一時の費用(損失)とする定めが削除されます。

なお、耐用年数の変更により、自社利用ソフトウェアの価値減少部分を一時の費用(損失)とする定めも、廃止が提案されています。

③ 貸倒引当金の処理の見直し(金融商品実務指針改正案第123項から第125項)

債権を直接減額して取り崩す場合において、貸倒引当金の不足額が過年度の見積誤差によるときに、当該不足額を特別損失に計上するとした定めが削除されます。改正後は、それぞれの債権の性格により、当該不足額を販売費又は営業外費用として処理することになります。

また、債権の直接減額後の回収額(償却債権取立益)及び繰入額と取崩額を相殺した差額が貸方差額となった場合(貸倒引当金戻入益)について、これらを特別利益として計上する定めが廃止されます。改正後は、営業費用から控除するか又は営業外損益として計上すべき旨が示されています。

④ 振当処理から原則的処理への変更(外貨実務指針改正案第50項)

為替予約等に係るヘッジ会計の会計処理として振当処理を採用している会社が、原則的処理への変更を行った場合、過年度遡及会計基準に従い、遡及適用することになると考えられます。

これまでは、振当処理が行われた外貨建金銭債権債務が決済されるまで、当該振当処理が継続するとされていましたが、当該定めを削除することが提案されており、原則どおり遡及適用が求められることになります。

2. 改正案の適用時期

これらの改正は、過年度遡及会計基準及び包括利益会計基準の適用と合わせて適用することが提案されています。具体的には、包括利益の表示に関係する改正は平成23年3月31日以後終了する連結会計年度から、過年度遡及に関係する改正は平成23年4月1日以後開始する事業年度から適用となります。

また、最終版の公表は本年3月中を予定していることが示されています。

3. その他の実務指針の改正の概略

過年度遡及会計基準及び包括利益会計基準の導入により改正が必要と考えられた実務指針のうち、以下のものに関しては、表現の明確化や字句修正などの軽微な改正のみであったため、公開草案手続を経ることなく、平成23年1月12日付で改正が公表されています。

  • 会計制度委員会報告第6号「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」
  • 会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」
  • 会計制度委員会報告第8号「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」
  • 会計制度委員会報告第9号「持分法会計に関する実務指針」
  • 会計制度委員会報告第10号「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」
  • 会計制度委員会報告第11号「中間財務諸表等における税効果会計に関する実務指針」


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