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「リース会計に関する論点の整理」のポイント

2011.01.11
新日本有限責任監査法人 会計情報トピックス
牧野 幸享

<企業会計基準委員会が平成22年12月27日に公表>

平成22年12月27日に、企業会計基準委員会(ASBJ)より「リース会計に関する論点の整理」(以下、「本論点整理」)が公表されています。
国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)は、平成22年8月に公開草案「リース」(以下、リースED)を公表しており、リースを主たる事業としているか否かに関わらず、広範に重要な影響を与える可能性のある提案が含まれています。
なお、平成23年3月9日(水)までがコメント募集期間とされています。

1. 目的(第1~2項)

リースに関する会計基準に関して、今後、会計基準のコンバージェンスを検討していくにあたり、リースEDの提案について関係者の理解を促進し、受け入れ可能なものであるか又は引き続き改善を要するものであるかについて、広く関係者からの意見を求めることを目的としています。本論点整理に寄せられる意見も参考に、IASB及びFASBにおける検討に合わせ、引き続き基準確定までの間、意見発信を行い、国際的な会計基準の改善への寄与を図っていくことを予定しているとされています。
なお、本論点整理はリースEDで提案されている会計処理について検討を行うものであり、いわゆる連結先行の考え方を採用するかについては議論していないと記載されています。

2. 本論点整理で示された論点

(1)会計モデルと範囲(第10~101項)

① 借手の会計モデル-使用権モデル

我が国及び国際的な会計基準では、リース取引をファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分類し、両者で異なる会計処理を定めていますが、リースEDでは、契約におけるリース物件(以下「原資産」という。)を使用する権利とその対価を支払う義務に基づき資産と負債を認識し、会計処理する「使用権モデル」が提案されています。
使用権モデルでは、オペレーティング・リース取引に分類される取引について、リース取引開始日にリースに係る資産や負債を認識することが求められるとされています。

今後の方向性
使用権モデルは、現行の会計基準に比べて一定の財務報告の改善につながると考えられ、また、会計基準のコンバージェンスを図る観点からも、この考え方を基礎として会計基準を開発していくことが考えられるとされています(ただし、追加条件のあるリースの取扱いを含めた会計処理の考え方については2.(3)を参照)。

② 貸手の会計モデル-複合モデル

我が国及び国際的な会計基準では、借手と同様、リース取引をファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分類し、両者で異なる会計処理を定めていますが、リースEDでは、使用権モデルを適用することとしつつ、その適用方法として次の2つのアプローチを使い分ける複合モデルが提案されています。

会計処理 貸手による原資産に伴うリスクと便益の留保の程度 定義
履行義務
アプローチ
原資産に伴う重要なリスク又は便益を留保している場合 リース料を受け取る権利という新たな資産と、原資産をリース期間にわたって使用することを借手に認めるという義務を表す新たな負債(履行義務)が生じると考えるアプローチ
認識中止
アプローチ
原資産に伴う重要でないリスク又は便益(ごく僅かものを除く)を留保している場合 リースにより、リース取引開始日に貸手が借手にリース期間にわたる原資産の経済的便益を移転したと考えるアプローチ

今後の方向性
複合モデルを基礎として、IASB及びFASBが平成22年6月に公表した公開草案「顧客との契約から生じる収益」(以下「収益認識ED」)で提案されている収益認識の時期に関する取扱いとの整合性やリース取引の多様性も踏まえ、検討していくことが考えられるとされています。

③ リースの定義と適用範囲

リースEDでは、リースを「特定資産(原資産)を使用する権利が、一定期間にわたり、対価と交換に移転される契約」と定義し、かつ、下記の取引を新たなリース基準の範囲から除外することが提案されています。当該定義は、我が国の会計基準におけるリースの定義と類似しているものの、今後、リースEDにおける定義を満たすか否かを判断するための詳細な規定を参考に、我が国においてもリースの定義に関する規定を定めることが考えられるとされています。

項目 リースEDでの提案内容等 今後の方向性
原資産の売買 法的な契約形態がリースであっても、実質的に原資産の売買に相当する契約を適用範囲から除外するとされています。 原資産の売買に相当する契約を適用範囲から除外することは必要以上に複雑さを招く可能性があるため、リース基準の中で、売買に類似する取引について必要な会計処理を定めていく方法などについて検討することが考えられるとされています。
無形資産等のリース 無形資産等のリースを適用範囲から除外するとされています。 無形資産のリースを適用範囲から除外する場合、有形固定資産のリースと不整合な会計処理となる可能性があり、また、我が国の会計基準ではソフトウェアのリース取引なども対象としていることから、無形資産のリースに関する取扱いについて検討を行うことが必要と考えられるとされています。
賃貸等不動産 我が国の会計基準では、不動産のリース取引をリース基準の適用範囲に含めることとされていますが、リースEDでは、投資不動産について公正価値モデルを適用している場合、リース基準の適用範囲から除外することとされています。 我が国とは原資産に適用されている会計処理が相違していることから、その相違を踏まえて、賃貸等不動産を構成する個々の賃貸借契約への複合モデルの適用の是非を検討していくことが考えられるとされています。
サービス要素の区分 我が国の会計基準では、通常の保守等以外の役務提供に相当する部分が組み込まれたリースは取り扱っていないが、リースEDでは、契約にサービス要素とリース要素が含まれている場合、収益認識EDの提案内容との整合性を重視し、履行義務を識別するための「区別」できるかどうかという規準を用いて、サービス要素とリース要素の区分の判断を行うとされています。
  • リース要素とサービス要素の双方が契約に含まれている場合、異なる要素である限り、収益認識EDで開発された「区別」できるか否かにより区分する方向性が、基本的に適当と考えられるとされています。
  • 認識中止アプローチを適用している貸手に対してあらゆる場合にサービスとリースの区分を求めることや、借手が「区別」できない場合にサービス要素も含めてリースとして取り扱うことについて検討を行うことが必要と考えられるとされています。

④ 短期リース

リースEDでは、短期リースを「リースの開始日現在で、更新又は延長のオプションを含めた最大限の起こり得るリース期間が12か月以内であるリース」と定義し、当該定義に該当するリース取引については、次の簡便的な会計処理の選択を認めることが提案されています。

借手 貸手
リース料支払債務及び使用権資産を割引前のリース料で測定することができる。 短期リースから生じる資産又は負債を貸借対照表に認識せず、原資産の一部の認識中止も行わないことができる。

今後の方向性
借手は、提案内容に基づく会計処理のコストが実務的に相当程度大きいと考えられることから、コストと便益を勘案し、簡便的な会計処理の取扱いについて検討を行うことが考えられるとされています。

(2)借手及び貸手の会計処理(第102~147項)

① 借手の会計処理

リースEDでは、当初認識時に使用権資産とリース料支払債務をリース料の現在価値に基づき測定し、当初認識後は使用権資産をリース期間にわたって償却するとともに、リース料支払債務を実効金利法(利息法)による償却原価で測定する会計処理が提案されています。

今後の方向性
リースEDで提案されている借手の基本的な会計処理(オプションや変動リース料の取扱いを除く。)について、使用権モデルの考え方を前提とすれば適当と考えられ、これを基礎に、借手の会計処理についての定めを検討していくことが考えられるとされています。

② 貸手の会計処理

  履行義務アプローチ 認識中止アプローチ
当初認識時
  • リース料受取債権をリース料の現在価値に貸手に発生した当初直接費用を加算した金額で測定する。
  • リース料受取債権と同額のリース負債を認識する。
  • リース料受取債権をリース料の現在価値に貸手に発生した当初直接費用を加算した金額で測定する。
  • 原資産の認識を中止し、残存資産を原資産の帳簿価額の配分後の金額で測定する。
当初認識後
  • リース料受取債権を実効金利法(利息法)による償却原価で測定する。
  • リース負債を借手による原資産の使用のパターンに基づき算定する。
  • リース料受取債権を実効金利法(利息法)による償却原価で測定する。
  • 認識した残存資産については、一定の場合を除き見直しはされない。

今後の方向性
複合モデルを前提とする場合、両アプローチの当初認識時や認識後の測定について一定の合理性はあると考えられますが、履行義務アプローチにおける収益認識パターンや、残存資産の当初認識後の測定の取扱い、履行義務アプローチにおける原資産及びリース料受取債権の減損判定方法などについて検討していく必要があるとされています。

(3)追加条件のあるリースの会計処理(第148~220項)

① オプション付リース

項目 リースEDでの提案内容 今後の方向性
更新オプション及び解約オプション 契約上や事業上の要因などを考慮して、発生しない可能性よりも発生する可能性の方が高くなる最長の起こり得る期間をリース期間とし、更新オプション等の影響をリースに係る資産・負債に含めて認識することとされています。 解約不能期間に加え、解約可能期間も一定の見積りによってリース期間に含めることは、借手にとって債務性に乏しい負債を認識する可能性があるとする懸念もあり、見積りに際してより高い蓋然性の閾値を設けるなど、今後検討を要すると考えられるとされています。
購入オプション 更新オプションや解約オプションの取扱いと異なり、リース料の現在価値の算定には含めず、行使された時点で会計処理することとされています。 リース契約に含まれるオプションをリースに係る資産及び負債として認識するアプローチを前提とすれば、更新オプション等の会計処理と同様の結果となることが適切であり、この考え方を踏まえて検討を行うことが考えられるとされています。

② 変動リース料

我が国の会計基準では、変動リース料などの特殊なリースの会計処理に関する取扱いは明確に定められておらず、取引の実態に応じて会計処理することとされていますが、リースEDでは、リース取引開始日に確率加重の期待値により借手のリース料支払債務及び貸手のリース料受取債権に含めて認識することが提案されています。

今後の方向性
変動リース料の認識を借手の将来の行動に依存しないものに限定することや全ての場合において期待値に基づく手法を採用することの是非などについて検討していくことが考えられるとされています。

③ 残価保証

我が国の会計基準では、ファイナンス・リース取引に該当する場合、借手はリース債務(貸手の場合はリース債権又はリース投資資産)に残価保証額の現在価値を含めて計上することとされていますが、リースEDでは、変動リース料と同様、リース取引開始日に期待値により借手のリース料支払債務及び貸手のリース料受取債権に含めて認識することが提案されています。

今後の方向性
測定の信頼性要件を設けるかどうか、及びその際の測定方法については、変動リース料の取扱いと整合的に検討していくことが考えられるとされています。

(4)表示及び注記事項(第221~254項)

項目 リースEDでの提案内容 今後の方向性
借手の表示 使用権モデルを前提に、リース取引から生じる資産、負債及びキャッシュ・フローを他と区別して表示し、費用については他と区別して表示するかもしくは注記により開示することとされています。 使用権モデルから生じる資産及び負債は、他の有形固定資産や金融負債などと異なる特有の性質を一部有していることから、他の項目と区別して表示することは基本的に適切であると考えられるが、費用だけでなく関連するキャッシュ・フローの扱いも含め、注記事項としての開示方法について検討していくことが考えられるとされています。
貸手の表示 複合モデルを前提に、各アプローチに応じて発生した科目を他の科目と区別して表示することとされています。また、履行義務アプローチでは、貸借対照表上で、原資産、リース料受取債権及びリース負債を結合表示することとされています。 リースEDにおける表示に関する提案を基礎として検討していくことが考えられるが、履行義務アプローチにおける結合表示については、収益認識EDや未履行契約との関係も含め、その方法や必要性について検討していくことが考えられるとされています。
注記事項 新たに開示原則を定めた上で、関連資産及び負債の期首残高と期末残高の調整表等、採用する会計モデルに応じた追加的な開示項目が示されています。 リースEDにおける開示に関する提案には一定の合理性があると考えられますが、個々の具体的な開示項目の取扱いについては検討を要すると考えられるとされています。

(5)その他の論点(第255~281項)

① セール・アンド・リースバック取引

我が国の会計基準では、セール・アンド・リースバック取引におけるリース取引がファイナンス・リース取引に該当する場合、原資産の売却に伴う損益を繰延処理し、リース資産の減価償却費の割合に応じて損益に計上するとされていますが、リースEDでは、原資産の譲渡取引が原資産の売買の規準を満たす場合には売却取引及びリース取引、満たさない場合には金融取引として会計処理することが提案されています。

今後の方向性
セール・アンド・リースバック取引を売却取引として処理するための要件として、継続的関与の考慮など、厳格な要件を求めることについては適当と考えられるが、具体的にどのような要件を設けるかについて検討していく必要があるとされています。

② 転リース取引

我が国の会計基準では、借手、貸手の双方がファイナンス・リース取引に該当する場合、貸借対照表上は、リース債権又はリース投資資産とリース債務を計上しますが、損益計算書上は、受取リース料と支払リース料の差額を手数料収入として各期に配分することとされています。リースEDでは、使用権モデルを適用し、転リースにおける中間の貸手は、原リースから生じる資産及び負債を借手として会計処理し、転リースから生じる資産及び負債を貸手として会計処理することとされています。

今後の方向性
原リースと転リースを別個の取引として、対称でない貸手と借手の取扱いも含めて会計処理することの適切性に加え、通常のリースと転リースの区分表示の必要性や転リースに履行義務アプローチが適用される場合の貸借対照表及び損益計算書における表示方法など、引き続き検討を行うことが考えられるとされています。



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