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平成22年度税制改正(グループ法人税制の導入等)に対応する税効果実務指針の改正のポイント

2010.09.09
新日本有限責任監査法人 会計情報トピックス
吉田 剛
<日本公認会計士協会が平成22年9月3日に公表>

日本公認会計士協会(会計制度委員会)は、平成22年9月3日に、平成22年度税制改正(グループ法人税制の創設等)に対応する以下の会計制度委員会報告の改正を公表しています。

  1. 会計制度委員会報告第6号「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(以下、連結実務指針)
  2. 会計制度委員会報告第10号「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(以下、個別実務指針)

これらの実務指針の改正は、平成22年度税制改正に対応して行われたものであり、グループ法人税制の創設等に関連した所要の改正が行われたものです。また、グループ法人税制の創設等に伴う連結納税制度に係る諸規定の整備に対応し、平成22年6月30日に企業会計基準委員会(ASBJ)より 実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」等の改正 がすでに公表されていますが、今回の改正では、この改正実務対応報告の公表に伴う対応も行われました。

1. 改正内容の概要

(1) 完全支配関係を有する国内会社間の資産の譲渡損益の繰延べに関する改正

グループ法人税制の導入により、完全支配関係にある国内会社間での資産の移転のうち、一定の条件を満たすものについては、譲受法人で譲渡・償却・除却等の事由が生じるまで、譲渡法人にてその譲渡損益に対する課税を税務上繰り延べることとされました。
このような税務上の譲渡損益の繰延べに係る規定については、これまでも連結納税制度を導入している会社では適用されていましたが、今般の税制改正により、連結納税を採用していない場合であっても、すべての会社で適用されることとなりました。
この税務上の規定の改正に伴い、税効果会計上の取扱いが以下のように定められています。

① 連結財務諸表上の取扱い(連結実務指針第12-2項、第30-2項、第47項、第53-2項)

税務上繰り延べられた損益について、譲渡当事会社が属する連結財務諸表においては、会計上も基本的にはその損益が繰り延べられる(未実現損益として消去される)ため、繰延税金資産および繰延税金負債を認識しないことが示されています。ただし、会計上の未実現損失について、売手側の帳簿価額のうち回収不能と認められる部分は、消去されません(企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」第36項)。
なお、連結グループ内での投資(子会社株式または関連会社株式)の譲渡では、譲渡前の個別財務諸表上の投資簿価と連結財務諸表上の投資簿価との差額(関係会社投資に係る連結財務諸表上の一時差異)の一部または全部が解消する取扱いとして整理されていますが、完全支配関係を有する国内会社間で投資(子会社株式または関連会社株式)を譲渡した場合には、この取扱いに加えて、連結財務諸表上、個別財務諸表で認識した税効果(②参照)を修正しない旨が示されています(2.参照)。

② 個別財務諸表上の取扱い(個別実務指針第8項、第10項、第33-2項)

完全支配関係にある国内会社間の資産の移転により税務上繰り延べられた譲渡損益が一時差異の例示に加えられるとともに、譲渡側の法人において、当該一時差異について税効果会計が適用となる点が明確化されています。


(2) 完全支配関係を有する国内会社間の寄附金に対応する支出・受領法人の株主での投資簿価修正に関する改正(個別実務指針第8項、第10項)

グループ法人税制の導入により、完全支配関係を有する国内会社間での寄附金に関しては、寄附金の受領法人において益金不算入とする改正が行われています(支出側では従来、損金不算入)。また、これに伴い、支出法人・受領法人それぞれの直接出資法人における、寄附金に対応する額の税務上の投資簿価修正(利益積立金の直接修正)に係る規定が設けられており、支出法人の株主では投資簿価を減額し、一方、受領法人の株主では投資簿価を増額させることになります。
この税制改正に対応した一時差異の例示が加えられています。具体的には、支出法人の株主では税務上のみ投資簿価が減額されるため、将来加算一時差異に該当し、繰延税金負債の計上の対象となります。また、受領法人の株主では、税務上の投資簿価の増額により、税務上の簿価>会計上の簿価といった関係(会計上のみ減損処理を行った場合と同じ関係)になるため、将来減算一時差異となる旨が示されています。

2. 公開草案から変更された主な点

企業集団内における完全支配関係にある国内会社間において、投資(子会社株式または関連会社株式)が売却されることで生じる、個別財務諸表上生じる一時差異と、当該一時差異の連結財務諸表上での取扱いに関して、数値例を用いた説明が追加されました(連結実務指針第53-2項)。
このような取引が行われた場合、個別財務諸表上で、繰り延べられた譲渡利益に係る税務上の調整負債に対応し繰延税金負債が認識され、また、繰り延べられた譲渡損失に係る税務上の調整資産に対応し、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産に回収可能性がある場合には、繰延税金資産が計上されます。連結財務諸表上、投資(子会社株式又は関連会社株式)の売却に係る税効果の取扱いは、グループ法人税制が適用となる場合でも変わらないため、個別上の投資簿価と連結上の投資価額の差額である一時差異の全部または一部が解消することになります(下の図における「連結上の一時差異解消」)。一方で、前述の個別財務諸表上の一時差異は、投資に係る一時差異とは性格が異なるものであるため、引き続き連結財務諸表上で計上されることが示されています(下の図における「個別上の一時差異」)。

〔通常の取扱い(連結実務指針第53-2項第1段落)〕

通常の取扱い

〔グループ法人税制下の取扱い(連結実務指針第53-2項なお書き)〕

グループ法人税制下の取扱い

また、完全支配関係にある国内会社間での譲渡取引により発生した損益の繰延べについて、個別財務諸表上で計上される繰延税金資産または負債は、売手側に適用される税率により計算されますが、連結上の未実現損益に係る税効果とは異なり、当該一時差異の回収または支払が見込まれる期の税率による旨が示されています(個別実務指針第33-2項)。

3. 適用時期

これらの改正は、公表日(平成22年9月3日)以後終了する連結会計年度(事業年度)末および四半期会計期間末から適用するものとされています。


本稿は改正実務指針の概要を記述したものであり、詳細については以下の日本公認会計士協会のウェブサイトをご参照ください。



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