企業会計ナビ

平成22年度税制改正(グループ法人税制の導入等)に対応する税効果実務指針改正公開草案のポイント

2010.07.14
新日本有限責任監査法人 会計情報トピックス
吉田 剛
<日本公認会計士協会が平成22年7月9日に公表>

日本公認会計士協会(会計制度委員会)は、平成22年7月9日に、平成22年度税制改正(グループ法人税制の創設等)に対応する以下の会計制度委員会報告の改正案を公表しています。

  1. 会計制度委員会報告第6号「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(以下、連結実務指針改正案)
  2. 会計制度委員会報告第10号「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(以下、個別実務指針改正案)

これらの実務指針の改正案は、平成22年度税制改正(「所得税法等の一部を改正する法律」(平成22年法律第6号・平成22年3月31日公布)等)に対応したものであり、グループ法人税制の導入に関連した所要の改正が提案されているものです。また、平成22年度税制改正のうちグループ法人税制の導入に伴う連結納税制度に係る諸規定の整備に対応し、平成22年6月30日に企業会計基準委員会(ASBJ)より実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」等の改正がすでに公表されていますが、今回の公開草案では、この改正実務対応報告の公表に伴う対応も示されています。
なお、本公開草案に対しては、平成22年8月2日(月)までコメントが募集されています。


1. 改正内容の概要

(1) 100%グループ法人間の資産の譲渡損益の繰延べに関する改正

グループ法人税制の導入により、完全支配関係を有する内国法人間の資産の譲渡において、一定の条件を満たすものについては、譲受法人で譲渡・償却・除却等の事由が生じるまで、譲渡法人にてその譲渡損益を税務上繰り延べることとされました。
このような税務上の譲渡損益の繰延べに係る規定については、これまで連結納税制度を導入している会社では適用されていた制度ですが、今般の税制改正により、連結納税を採用していない場合であっても、すべての会社で適用されることとなりました。
この税務上の規定の改正に伴い、税効果会計上の取扱いが以下のように定められています。

① 連結財務諸表上の取扱い(連結実務指針改正案第12-2項、第30-2項、第47項)

税務上繰り延べられた損益について、譲渡当事会社が属する連結財務諸表においては、会計上もその損益が繰り延べられる(未実現損益として消去される)ため、繰延税金資産および繰延税金負債を認識しないことが示されています。
なお、連結グループ内での子会社株式または関連会社株式の譲渡では、譲渡前の個別財務諸表上の投資簿価と連結財務諸表上の投資簿価との差額(関係会社投資に係る連結財務諸表上の一時差異)の一部または全部が解消するものとして整理されていますが、100%グループ内国法人間で子会社株式または関連会社株式を譲渡した場合には、連結財務諸表上、個別財務諸表で認識した税効果(②参照)を修正しない(関係会社投資に係る連結財務諸表上の一時差異が解消されない)旨が示されています。

② 個別財務諸表上の取扱い(個別実務指針改正案第8項、第10項、第33-2項)

税務上繰り延べられた損益が一時差異の例示に加えられるとともに、譲渡側の法人において、当該一時差異に対して繰延税金負債(譲渡益の場合)または繰延税金資産(譲渡損の場合)が計上される点が明確化されています。

なお、いずれの取扱いについても、実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」Q5が参照されています。


(2) 100%グループ法人間の寄附金に対応する支出・受領法人の株主法人での投資簿価修正に関する改正(個別実務指針改正案第8項、第10項)

グループ法人税制の導入により、完全支配関係を有する内国法人間での寄附金に関しては、寄附金の受領法人において益金不算入とする改正が行われています(支出側では従来、損金不算入)。また、これに伴い、支出法人・受領法人それぞれの直接出資法人において、寄附金に対応する額の税務上の投資簿価修正(利益積立金の直接修正)に係る規定が設けられており、支出法人の株主では投資簿価を減額し、一方、受領法人の株主では投資簿価を増額させることになります。
この税制改正に対応し、それぞれが一時差異の例示に加えられています。具体的には、支出法人の株主では税務上のみ投資簿価が減額されるため、将来加算一時差異に該当し、繰延税金負債の計上の対象となります。また、受領法人の株主では、税務上の投資簿価の増額により、税務上の簿価>会計上の簿価といった関係(会計上のみ減損処理を行った場合と同じ関係)になるため、将来減算一時差異となる旨が示されています。


2. 適用時期

これらの改正は、公表日以後終了する連結会計年度(事業年度)末および四半期会計期間末から適用することが提案されています。
また、最終版の公表は本年9月中を予定していることが示されています。


本稿は公開草案の概要を記述したものであり、詳細については以下の日本公認会計士協会のウェブサイトをご参照ください。



情報量は適当ですか?

文章はわかりやすいですか?

参考になりましたか?