会計情報トピックス 金子裕子
企業会計基準委員会が平成22年6月30日に公表
平成22年6月30日に、企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」(以下、本会計基準)が公表されるとともに、これに関連して企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」の改正が公表されています。
本会計基準は、財務諸表における包括利益およびその他の包括利益の表示について定めることを目的としています。
1. 適用時期
(1)連結財務諸表における取扱い
本会計基準は、連結財務諸表については、次の二つの注記を除いて、平成23年3月31日以後終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用します。ただし、平成22年9月30日以後終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用することができます。また、適用初年度においては、直前年度における包括利益およびその他の包括利益の内訳金額を注記します。
① その他の包括利益の内訳項目別の税効果の金額
② 当期純利益を構成する項目のうち、当期または過去の期間にその他の包括利益に含まれていた部分(組替調整額)
上記①および②の注記は、平成24年3月31日以後終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用します。ただし、早期適用も可能です。また、適用初年度においては、直前の年度における当該注記の記載は不要です。
(2)個別財務諸表における取扱い
現在、企業会計審議会で個別財務諸表に関する議論が行われていることから、個別財務諸表に本会計基準の適用を求めるかについては、1年後をめどに判断するとされています。
(3)四半期財務諸表における取扱い
平成23年3月31日以後終了する連結会計年度の年度末から本会計基準を適用した場合には、翌連結会計年度の四半期財務諸表において、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」が適用されることから、本会計基準を遡及(そきゅう)適用して四半期財務諸表の組替を行います。一方、平成22年9月30日以後終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用した場合の翌連結会計年度の四半期財務諸表においては、前連結会計年度の対応する四半期会計期間および四半期累計期間について、包括利益およびその他の包括利益の内訳金額を注記します。
2. 包括利益およびその他の包括利益の定義
「包括利益」とは、ある企業の特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額のうち、当該企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分をいいます。当該企業の純資産に対する持分所有者には、当該企業の株主のほか当該企業の発行する新株予約権の所有者が含まれ、連結財務諸表においては、当該企業の子会社の少数株主も含まれます。
「その他の包括利益」とは、包括利益のうち当期純利益および少数株主損益に含まれない部分をいいます。
3. 包括利益の計算の表示
(1)連結財務諸表において
少数株主損益調整前当期純利益に、その他の包括利益の内訳項目を加減して包括利益を表示します。
(2)個別財務諸表において
当期純利益に、その他の包括利益の内訳項目を加減して包括利益を表示します。
4. 包括利益を表示する計算書
- 2 計算書方式:当期純利益を表示する損益計算書と、包括利益を表示する包括利益計算書からなる形式
- 1 計算書方式:当期純利益の表示と、包括利益の表示を一つの計算書(「損益及び包括利益計算書」)で行う形式
5. その他の包括利益の内訳の開示
その他の包括利益の内訳項目は、その内容に基づいて、その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、為替換算調整勘定等に区分して表示します。持分法を適用する被投資会社のその他の包括利益に対する投資会社の持分相当額は、一括して区分表示します。
なお、1.(1)の①(その他の包括利益の税効果)と②(組替調整額)の注記が必要ですが、当該注記は、個別財務諸表(連結財務諸表を作成する場合に限ります)および四半期財務諸表においては省略することができます。
包括利益の表示例(出典:本会計基準の参考より一部修正)
連結財務諸表
6. 公開草案からの変更点
適用時期を除き、公開草案から大きく変更された点はありません。
なお、本会計基準の内容の理解を促進するために、設例が拡充されています。
7. その他
本会計基準の公表に伴い、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」が改正され、連結損益および包括利益計算書または連結包括利益計算書について必要な記述を追加するなど、所要の改正が行われています。
本稿は改正の概要を記述したものであり、詳細については以下の財務会計基準機構/企業会計基準委員会のウェブサイトをご参照ください。