平成22年6月第1四半期 決算上の留意事項

2010年7月2日
カテゴリー 会計情報トピックス

ナレッジセンター 伊藤恵子・佐伯洋介・吉田剛

平成22年6月第1四半期決算においては、前期決算に引き続いて新たに適用となる会計基準等が数多くあります。本稿では、それらのうち主な決算上の留意事項等をⅠにおいて解説するとともに、Ⅱでは開示上の留意事項について整理します。また、Ⅲではその他の会計処理上の留意事項を解説します。
なお、文中意見にわたる部分は筆者の私見であり、法人の公式見解ではないことを、あらかじめお断りします。

  1. 平成22年6月第1四半期から原則適用となる会計基準等
    1. 企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」
    2. 企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第20号「セグメント情報等の開示に関する会計基準の適用指針」
    3. 企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(平成20年3月改正)および企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」
    4. 企業会計基準第20号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第23号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用指針」
    5. 企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」等(平成20年12月26日公表・改正)
    6. 企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」(平成20年3月公表)および企業会計基準適用指針第24号「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」
    7. その他(後入先出法の廃止・税制改正・実務対応報告第26号の廃止)
  2. 平成22年6月第1四半期の開示上の留意事項
  3. 平成22年6月第1四半期の会計処理上の留意事項
    1. 固定資産の減損会計
    2. 有価証券の減損

Ⅰ 平成22年6月第1四半期から原則適用となる会計基準等

1. 企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」

(1)適用時期・適用範囲など

原則として、平成22年4月1日以後開始する事業年度から適用するものとされており、また早期適用が可能となっています(基準17項)。本会計基準等の適用については、会計基準の変更に伴う会計方針の変更として取り扱うことになります(基準20項)。
また、適用初年度における期首残高の取扱いに係る定めが設けられています(基準18項)。

(2)会計基準の概略

本会計基準は、有形固定資産等の除去に関連する義務である「資産除去債務」の会計処理を定めるものであり、これまでは除去時点の費用や、もしくは引当金として処理されていたこれらの義務に関して、その発生時に負債計上を求めるものです。

① 用語の定義

会計基準において定義されている主要な用語は図表1のとおりになります。

図表1 資産除去債務会計基準での用語の定義
資産除去債務
(基準3項(1))
有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務およびそれに準ずるものをいう。
有形固定資産の「除去」
(基準3項(2))
有形固定資産を用役提供から除外することをいう(一時的に除外する場合を除く。)。
② 適用範囲

適用範囲は図表2のとおりになります。

図表2 適用範囲
対象資産 有形固定資産および投資不動産
発生原因 「通常の使用」で生じるものに限る
「除去」の範囲 売却、廃棄、リサイクルを含み、転用、用途変更、遊休化、環境修復、または修繕を含まない
「義務」の範囲 法律上の解釈により当事者間の清算が要請される債務や過去の判例等のうち、法律上の義務とほぼ同等の不可避的な支出が義務付けられるようなものを含む
③ 基本的な会計処理

資産除去債務に係る基本的な会計処理は図表3のとおりになります。
資産除去債務は、資産の取得等により発生したタイミングで負債計上します(基準4項)。また、債務の同額を資産の帳簿価額に加算し、その加算された金額は資産の使用に伴い費用配分されます(基準7項)。一方、債務については、その当初計上後、時の経過による増加額を費用に計上します(基準9項)。

図表3 資産除去債務の基本的会計処理

図表3 資産除去債務の基本的会計処理

(3)適用初年度・四半期の留意事項

前述(1)の「適用初年度の期首残高の取扱い」について、基準では以下の差額を特別損失(「資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額」など)に計上することとされています(基準18項)。

  • 期首時点の既存資産に関連する債務は、適用初年度期首時点の割引前将来C/Fの見積もりおよび割引率を用いて算定します。
  • 期首時点の既存資産の帳簿価額に含まれる除去費用は、資産除去債務の発生時点における割引前将来C/Fの見積もりおよび割引率が、適用初年度の期首時点と同じであったと見なして計算した金額から、その後の減価償却費相当分を控除して算定します。

なお、2年目以降については、資産除去債務計上額と実際の支出額との差額が異常な原因により生じたものでない限り、特別損益として処理する取扱いはないことに留意が必要です。

資産除去債務に関して、従来引当金を計上していた場合には、資産除去債務、有形固定資産の期首残高は引当金の計上がない場合と同様に算定しますが、引当金の残高を上記資産除去債務の一部として引き継ぐこととされており、その分だけ特別損失の額が減少することになります。

(4)四半期報告書における開示

  • 会計方針の変更の注記
    • 変更の旨、変更の理由、変更による影響額の注記が必要となります。
    • 会計基準の適用開始による資産除去債務の変動について、影響が重要な場合、その影響額を併せて注記する必要があります(適用指針30項なお書き)。
  • 資産除去債務関係の注記(四半期連結財規27条の2など)
    • 以下の要件を満たす場合に、資産除去債務の変動の内容、総額の増減を注記する必要があります(B/Sに計上していないものがある場合には、その旨、その理由(金額を合理的に見積もることができない理由を含む)および資産除去債務の概要を注記します)。
      • 事業の運営において重要
      • 資産除去債務のB/S計上額が前期末に比べて著しく変動している
  • 四半期(連結)貸借対照表における表示
    • 負債(「資産除去債務」)
      • ワンイヤールールで流動・固定に分類します(基準12項)。
    • 資産(関連する有形固定資産等の各科目に加えて表示)(基準43項)

なお、四半期(連結)損益計算書および四半期(連結)キャッシュ・フロー計算書については、規則上四半期固有の取扱いは設けられていないため、図表4の取扱いに従うことになります。

図表4 P/L・C/Fの表示上の取扱い
損益計算書 資産除去債務に対応する除去費用に係る費用配分額(基準13項) 関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含める。
時の経過による資産除去債務の調整額(基準14項) 関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含める。
義務履行時の債務残高と実際支払額の差額(基準15項) 原則として、資産除去債務に対応する除去費用に係る費用配分額と同じ区分に含める。
キャッシュ・フロー計算書
(適用指針12項)
資産除去債務の実際の履行額については、投資活動によるキャッシュ・フローの項目として取り扱う。

2. 企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第20号「セグメント情報等の開示に関する会計基準の適用指針」

(1)適用時期・適用範囲など

平成22年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の第1四半期会計期間から適用となります。本会計基準等の適用については、開示に関する基準であるため、追加情報として記載すると考えられます。
また、すべての企業の連結財務諸表または個別財務諸表に対して適用されますが、連結財務諸表においてセグメント情報等を注記している場合は、個別財務諸表において注記は不要となります(基準3項)。

(2)基本原則

基準4項において、以下の基本原則が定められています。

セグメント情報等の開示は、財務諸表利用者が過去の業績を理解し、将来のキャッシュ・フローの予測を適切に評価できるように、企業が行うさまざまな事業活動の内容およびこれを行う経営環境に関して適切な情報を提供するものでなければならない。

(3)マネジメント・アプローチの導入(基準46項)

セグメント会計基準等では、マネジメント・アプローチによる開示が行われます。マネジメント・アプローチの特徴として以下のものがあります。

  • 最高経営意思決定機関が経営上の意思決定を行い、企業の業績を評価するために使用する事業部、部門、子会社または他の内部単位に対応する企業の構成単位に関する情報を提供する。
  • 最高経営意思決定機関が業績を評価するために使用する報告において、特定の金額を配分している場合にのみ、当該金額を構成単位に配分する。
  • セグメント情報を作成するために採用する会計方針は、最高経営意思決定機関が資源を配分し、業績を評価するための報告の中で使用するものと同一にする。

(4)事業セグメントの識別

事業セグメントとは、以下の要件を満たす構成単位をいいます(基準6項)。

  • 収益を稼得し、費用が発生する事業活動にかかわるもの
    • 同一企業内の他の構成単位との取引に関連する収益および費用を含む
    • 企業の本社管理部門等のように、企業を構成する一部であっても収益を稼得していない、または付随的な収益を稼得するにすぎない構成単位は、事業セグメントまたは事業セグメントの一部とならない(基準7項)
    • 現時点で収益を稼得していなくとも、新規事業を立ち上げた場合などは事業セグメントとして識別する場合もある
  • 企業の最高経営意思決定機関が、当該構成単位に配分すべき資源に関する意思決定を行い、その業績を評価するために、その経営成績を定期的に検討するもの
  • 分離された財務情報を入手できるもの
① 子会社・持分法適用会社の取扱い(指針3項、4項)

マネジメント・アプローチの結果、個々の連結子会社および持分法適用会社がそれぞれ事業セグメントを構成することがあり得ます。
また、持分法適用会社について、セグメント情報として開示する額は、持分法投資損益の金額、持分法適用会社の財務情報の金額または当該財務情報の金額に持分割合を乗じた金額などによります。

② マトリックス組織の取扱い(指針7項、23項)

マトリックス組織を採用している場合、最高経営意思決定機関が、業績を評価し、資源配分の意思決定を行うに当たり、どのように区分した構成単位をより重視しているかで判断します。

(5)報告セグメントの決定

事業セグメントのうち、報告すべきものを「報告セグメント」といいます(基準10項)。

報告セグメントは、以下のように決定されます。

  • 事業セグメントを識別する。
  • 集約基準により、複数の事業セグメントを集約することができる。
  • 集約後の事業セグメントについて量的基準等を加味して、報告セグメントを決定する。
① 集約基準

以下のすべての要件を満たす場合、複数の事業セグメントを一つのセグメントに集約することができます(基準11項)。

  • 事業セグメントを集約することが、基本原則と整合していること
  • 事業セグメントの経済的特徴がおおむね類似していること

例えば、長期的な売上総利益率(平均値)が近似することが見込まれるなど、長期的に近似した業績の動向を示すことが見込まれている場合が考えられます(指針8項)。

  • 事業セグメントの次のすべての要素がおおむね類似していること
    • 製品およびサービスの内容
    • 製品の製造方法または製造過程、サービスの提供方法
    • 製品およびサービスを販売する市場または顧客の種類
    • 製品およびサービスの販売方法
    • 銀行、保険、公益事業等のような業種に特有の規制環境
② 量的基準(その1)

以下のいずれかを満たす場合、事業セグメントを報告セグメントとして開示しなければなりません(基準12項)。

  • 売上高(事業セグメント間の内部売上高または振替高含む)がすべての事業セグメントの売上高の10%以上
  • 利益または損失の絶対値が以下のいずれか大きい額の10%以上
    • 利益の生じているすべての事業セグメントの合計額
    • 損失の生じているすべての事業セグメントの合計額の絶対値
  • 資産がすべての事業セグメントの資産の合計額の10%以上

なお、量的基準に該当しない場合であっても、報告セグメントとして開示することは妨げられません。ただし、報告セグメントが10を超える場合は、当該セグメント情報の区分方法が財務諸表利用者に適切な情報を提供するものであるかについて、慎重に判断する必要があります(基準75項)。

③ 量的基準(その2)

以下の場合には、量的基準を満たしていない複数の事業セグメントを結合して報告セグメントとすることができます(基準13項)。

  • 事業セグメントの経済的特徴がおおむね類似
  • 事業セグメントの次の要素のうち、過半数がおおむね類似していること
    • 製品およびサービスの内容
    • 製品の製造方法または製造過程、サービスの提供方法
    • 製品およびサービスを販売する市場または顧客の種類
    • 製品およびサービスの販売方法
    • 銀行、保険、公益事業等のような業種に特有の規制環境
④ 量的基準(その3)

報告セグメントの外部顧客への売上高の合計額が損益計算書の売上高の75%以上となるまで、事業セグメントを報告セグメントに追加する必要があります(基準14項)。

図表5 報告セグメントの決定フロー

(6)開示項目

適用初年度の第1四半期においては、以下の事項を注記します。

  • 報告セグメントの概要(基準18項)
    • 報告セグメントの決定方法
      • 事業セグメントを識別するために用いた方法(製品・サービス別、地域別等)および複数の事業セグメントを集約した場合にはその旨等
    • 各報告セグメントに属する製品およびサービスの種類
  • 報告セグメントごとの売上高および利益または損失の金額に関する情報(四連規様式第一号)
  A B その他 合計
売上高
 外部顧客への売上高
 セグメント間の内部売上高または振替高
       
       
セグメント利益または損失(△)        
  • 差異調整に関する事項(四連規様式第一号)
    • 報告セグメントの利益または損失の金額の合計額と四半期連結損益計算書の金額の合計額に差異がある場合に、差異調整に関する事項を記載
    • 重要な調整事項がある場合には、当該事項を個別に記載
  • 報告セグメントごとの固定資産の減損損失またはのれん等に関する情報
    • 以下の場合には、それぞれ、その概要を記載しなければなりません。
      • 固定資産に係る重要な減損損失を認識した場合
      • のれんの金額に重要な変動が生じた場合
      • 重要な負ののれん発生益を認識した場合

(7)測定方法

マネジメント・アプローチの趣旨に従って測定します。

  • 財務諸表を作成するために採用される会計処理の原則および手続きに準拠する必要はありません(基準83項)。
  • 特定の収益、費用を事業セグメントに配分する場合、関係する事業セグメントの利用面積、人員数、取扱量(金額)または生産量(金額)等の合理的な基準により、各事業セグメントに配分します(指針11項)。

(8)留意事項

  • 最高経営意思決定機関に報告されている業績資料では、当期純利益まで含まれているが、セグメント利益を営業利益とすることができるか
    → セグメント利益として何を開示するべきかは、最高経営意思決定機関が、その意思決定や業績評価に何を用いているかで決定します。
  • セグメント情報等の会計基準等に準拠して前第1四半期のセグメント情報を作り直し、当第1四半期に開示する必要があるか
    → 作成は不要です。

3. 企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(平成20年3月改正)および企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」

(1)適用時期・適用範囲など

年度決算では、平成22年3月31日以後終了する事業年度の年度末から適用となっていますが、四半期決算としては、その翌年度の四半期決算が原則適用となります。
なお、前事業年度において既に会計基準等が適用となっていることから、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更には該当せず、また注記を新たに記載した場合でも、追加情報の記載は不要と考えられます。

(2)会計基準の主な改正点

  • 開示以外(会計処理に影響を及ぼす可能性があるもの)
    • 時価が開示されないことになる有価証券を「時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券」に限定
      • 債券等に関して、時価を把握することが極めて困難と認められる場合が限定的である旨が明示(指針39項)
  • 開示
    • 「金融商品の状況に関する事項」の注記の追加
    • 「金融商品の時価等に関する事項」の注記の追加
      • これまでは「有価証券」および「デリバティブ取引」のみで時価等の開示が行われていたが、これを金融商品全体に拡大

(3)四半期報告書での取扱い

四半期報告書における開示事項は図表6のとおりになります。

図表6 四半期報告書における金融商品の時価等の開示
金融商品関係
(四半期連結財規15条の2、四半期財規8条の2)
要件

科目ごと(※)に以下の二つの要件を満たす

  • 事業の運営において重要
  • 前期末の金額(B/S計上額その他の金額)に比して著しい変動がある
注記事項
  • 四半期(連結)B/Sの科目ごとの計上額
  • 時価
  • 上記の差額
  • 時価の算定方法
有価証券関係
(四半期連結財規16条、四半期財規9条)
要件

「時価のある満期保有目的債券」・「時価のあるその他有価証券」おのおので以下の二つの要件を満たす

  • 事業の運営において重要
  • 前期末の金額(B/S計上額その他の金額)に比して著しい変動がある
注記事項
  • 四半期(連結)B/S計上額
  • 時価(満期保有目的債券)または取得原価(その他有価証券)
  • 上記の差額
デリバティブ取引関係
(四半期連結財規17条、四半期財規10条)
要件

対象物の種類(通貨・金利・株式・債券・商品その他の取引)ごとに以下の二つの要件を満たす

  • 事業の運営において重要
  • 契約額等に前期末の金額に比して著しい変動がある
注記事項
  • 契約額または契約において定められた元本相当額
  • 時価
  • 評価損益

(※)有価証券・デリバティブを除き、四半期(連結)B/Sに個別掲記されていないものについては、注記を省略できるものと考えられます。

また、実務上のポイントと考えられる点を、以下項目別に記載しています。

① 金融商品関係
  • 時価について、適時に正確な金額を把握することが困難な場合には、概算額を記載することができます。
  • 時価を算定することが困難な場合にはその旨、その理由、金融商品の概要および四半期(連結)B/S計上額を記載することができます。
② 有価証券関係
  • 要件を満たすかどうかは、「時価のある満期保有目的の債券」「時価のあるその他有価証券」のおのおので判断します。
  • 減損処理を行った場合、減損処理後の額を「取得原価」の欄に記載します。
③ デリバティブ取引関係
  • 取引の種類ごとに区分して記載します。
  • ヘッジ会計が適用されているものは注記しないことができるとされています(年度末の取扱いおよび金融商品関係での取扱いとの相違に留意する必要があります)。

4. 企業会計基準第20号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第23号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用指針」

(1)適用時期・適用範囲など

金融商品の時価等の開示と同じく、年度決算では、平成22年3月31日以後終了する事業年度の年度末から適用となっていますが、四半期決算としては、その翌年度の四半期決算が原則適用となります。
なお、前事業年度において記載した、追加情報の記載は不要と考えられます。

(2)賃貸等不動産の「定義」

賃貸等不動産とは、棚卸資産に分類されている不動産以外のものであって、賃貸収益またはキャピタルゲインの獲得を目的として保有されている不動産をいうものとされており(基準4項(2))、以下の不動産が含まれます(基準5項、6項)。

  • 貸借対照表において投資不動産として区分されている不動産
  • 将来の使用が見込まれていない遊休不動産
  • 上記以外で賃貸されている不動産
  • 将来において賃貸等不動産として使用される予定で開発中の不動産や、継続して賃貸等不動産として使用される予定で再開発中の不動産
  • 賃貸目的で保有されているにもかかわらず、一時的に借手が存在していない不動産

また、物品の製造や販売、サービスの提供、経営管理に使用されている場合は賃貸等不動産には含まれないとされています(基準4項(2))。

(3)四半期報告書における開示(四半期連結財規27条の3など)

四半期決算においては、前期末と比較して著しい変動がある場合に注記が必要とされており、金融商品や資産除去債務のように「事業の運営において重要」であるかどうかは要件とされていない点に留意する必要があります。
この四半期決算における具体的な注記事項については、以下のとおりとなります。

  • 四半期(連結)B/S計上額
  • 時価

(4)四半期決算における時価等の開示の検討ポイント

四半期決算において、賃貸等不動産の時価等の開示を要するか否か、十分な検討が必要と考えられますが、そのポイントとして、例えば以下のような点が挙げられます。

  • 重要な増加(購入または企業結合など)があるか
  • 重要な減少(売却など)があるか
  • 遊休化した資産があるか
  • 時価の著しい変動はあるか

また、四半期決算では、時価の算定においても、開示の迅速性をかんがみ、会計基準の容認規定を用いることが考えられますが、そのポイントはおのおの以下のとおりと思われます。

  • 新たに取得した賃貸等不動産
    • 取得時の時価を用いることができるか検討することが考えられます。
  • 重要な減少があり開示される場合
    • 時点修正を行うか、または前期末の時価を用いることができる可能性を検討することが考えられます。
  • 遊休化・時価の著しい変動が想定されるケース
    • 通常「原則的時価算定」が求められるものと考えられます。

5. 企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」等(平成20年12月26日公表・改正)

(1)適用時期・適用範囲など

① 適用される会計基準等

本改正により適用される会計基準等は図表7のとおりとなります。

図表7 企業結合関係の会計基準等の平成20年12月改正一覧

  • 企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(以下、企業結合基準)
  • 企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(以下、連結基準)
  • 企業会計基準第23号「『研究開発費等に係る会計基準』の一部改正」
  • 改正企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」(以下、分離基準)
  • 改正企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」(以下、持分法基準)
  • 改正企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準および事業分離等会計基準に関する適用指針」(以下、改正適用指針)

また、これらの公表・改正を受けて、平成21年6月9日付で日本公認会計士協会より会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」等の改正が公表されています。

② 適用時期など

原則として、平成22年4月1日以後実施される企業結合、事業分離等または非連結子会社および関連会社に対する投資に係る会計処理から適用するものとされています(企業結合基準57項など)。この場合、その他連結財務諸表に係る事項は平成22年4月1日以後開始する連結会計年度から適用になります(連結基準44項(1))。

3月決算以外の会社においては、平成22年4月1日を含む事業年度の企業結合等の会計処理が、同日の前後で相違することになる可能性がありますが、中間または四半期・年度の首尾一貫性が保持されていない場合には該当しないものとされています(企業結合基準129項など)。平成22年4月1日の前後で相違するのは、会計基準等の適用時期が「事業年度」ベースではなく、企業結合等の「実施日」ベースとなっていることによります。
なお、首尾一貫性が保持されていない場合には該当しなくとも、同一年度内の会計処理の相違が重要な場合には、その旨およびその内容を追加情報として注記することを検討する必要があります(企業結合基準129項ただし書きなど)。

(2)会計基準の適用に伴う主な相違点

本会計基準の適用により、従来の取扱いと異なる主要な点は図表8のとおりとなります。

図表8 企業結合会計基準の改正等による従来との主な相違点
項目 改正後の取扱い 従来の取扱い
企業結合(共同支配企業の形成および共通支配下の取引以外)の会計処理 持分プーリング法が廃止され、パーチェス法にて処理されることとなった(企業結合基準17項)。
→ これに伴い、取得企業の判定方法も併せて改正されている。
企業結合が取得と判定された場合にはパーチェス法で、持分の結合と判定された場合には持分プーリング法で処理されていた。
企業結合に係る対価(株式を対価とする場合)の測定日 企業結合日の時価を基礎として算定されることとなった(企業結合基準24項など)。 原則として、企業結合の主要条件が合意され公表された前5日間の株価を基礎とするとされていた。
連結財務諸表における段階取得の会計処理 取得原価を企業結合日における時価で算定することとし、個々の取引の原価の合計額(持分法評価額を含む)との差額は損益として認識されることとなった(企業結合基準25項など)。
→ 新たに持分法を適用する場合には、この段階取得に係る損益の認識は不要とされています(持分法基準26-3項)。
個々の取引における原価の合計額(持分法評価額を含む)をもって、支配獲得時の取得原価とするものとされていた。
負ののれんの会計処理 識別可能資産・負債の把握、取得原価配分の見直しを行い、なお負ののれんが生じる場合に、発生時の利益とするものとされた(企業結合基準33項など)。 のれん(借方)と同じく、一定の年数での償却処理が求められていた。
仕掛研究開発費の会計処理 識別可能な仕掛研究開発費について、無形固定資産として取得原価を配分し、資産計上することとなった(企業結合基準28項および29項など)。 仕掛研究開発費に取得原価が配分された場合、配分時の費用とするものとされていた。
連結財務諸表作成時の子会社の資産・負債の評価方法 部分時価評価法が廃止され、全面時価評価法に一本化された(連結基準20項)。 全面時価評価法と部分時価評価法の選択適用とされていた。
在外子会社株式の取得により生じたのれんの換算 各子会社に適用される決算日時点の換算レートで、毎期換算替されることとなった(改正適用指針77-2項)。 親会社の通貨である円貨で固定されているとし、発生時のレートで換算されていた。
共同支配投資企業に対する投資の会計処理 「のれん」部分を処理する方法(通常の持分法)で会計処理を行うこととなった(企業結合基準39項(2))。 「のれん」部分を処理しない方法(持分法に準じた処理方法)で会計処理されていた。
連結会計基準に定めのない企業結合に係る会計処理・開示
(※)
企業結合会計基準に準拠した処理・注記を行うことが明確化された(連結基準注15)。 企業結合会計基準の定めに準じて処理することができるとされており、準じた処理を行った場合には注記が必要とされていた。
「少数株主損益調整前当期純損益」の表示 連結損益計算書の「少数株主損益」の直前に「少数株主損益調整前当期純損益」が表示されることとなった(連結基準39項(3)②)。 税金等調整前当期純損益と最終損益(当期純損益)との間に段階損益は表示されていなかった。

特に、開示面において、従来は企業結合や事業分離の注記が求められていなかった、連結会計基準に従って会計処理された企業結合(新たに子会社を連結に含めることとなった場合や子会社株式の追加取得および一部売却等があった場合)についても、以下の注記が必要とされたため、留意が必要です(上表(※))。

  • 取得とされた企業結合の注記(企業結合基準49項、連結財規15条の12)
  • 共通支配下の取引等に係る注記(企業結結合基準52項、連結財規15条の14)
  • 子会社を結合当事企業とする親会社の注記(分離基準54項、連結財規15条の18)
  • 重要な後発事象等の注記(企業結結合基準55項、分離基準56項、連結財規15条の19~21)
図表9 連結会計基準に従って会計処理された企業結合の注記
取引 注記事項
他の会社(関連会社を含む)の子会社化 取得とされた企業結合の注記
子会社株式の追加取得 共通支配下の取引に係る注記
子会社株式の一部売却
(引き続き子会社である場合)
子会社株式の一部売却または全部売却
(子会社でなくなる場合)(※)
子会社を結合当事企業とする親会社の注記

なお、図表9で(※)を付した取引について、株式の売却先が同社を連結しない場合には、注記が求められていないと考えられます。これは、連結基準(注15)が必要な注記として分離基準54項(子会社の企業結合の注記)を参照している一方で、分離基準28項(事業分離における分離元企業の注記)を参照していないことによるものです。

(3)適用初年度の留意事項

① 従前の会計処理等の取扱い

原則として、本会計基準等の適用により、従前の会計処理についてはその取扱いを継続し、適用日において会計処理の見直しおよび遡及(そきゅう)的な処理は行わないとされています(企業結合基準58項ただし書きなど)。従って、過年度に負債に計上した負ののれんについても、従来の処理・開示を継続することになります(平成21年内閣府令第5号附則3条1項1号)。
ただし、本会計基準等の適用前において、子会社の資産・負債の評価方法として部分時価評価法を採用していた会社は、その適用初年度の期首時点において、全面時価評価法を用いた評価額に修正する必要があります(連結基準44項(3)ただし書き)。

② 影響額の記載の取扱い

①に記載した、部分時価評価法から全面時価評価法への修正による影響額を除いて、会計方針の変更に伴う影響額の注記は要しないものとされています(連結基準44項(4)など)。

(4)四半期報告書における開示

  • 会計方針の変更の注記
    • 変更の旨、変更の理由の注記が必要となります。
    • 従来、部分時価評価法を採用していた場合には、全面時価評価法を用いた評価額に修正した影響額を注記する必要があります(前述(3)を参照)(平成21年内閣府令5号附則7条2項)。
    • 持分法基準については、平成20年12月改正分であることを明記することが考えられます。
  • 表示方法の変更の注記
    • 「少数株主損益調整前四半期純利益(または損失)」の科目で表示している旨(影響額の記載は不要と考えられます)を記載する必要があります。
    • 当該損益の区分を設けた変更のみが行われる場合には、会計基準の変更に伴う会計方針の変更には該当しないものと考えられます。
  • 企業結合関係の注記事項
    • 取得による企業結合(*)(四半期連結財規20条など)
    • 逆取得となる企業結合(注記が求められる条件が追加されています)(四半期連結財規21条など)
    • 共通支配下の取引等(*)(四半期連結財規22条など)
    • 子会社が親会社を吸収合併した場合(個別のみ)(四半期財規17条3項および4項)
    • 共同支配企業の形成(*)(四半期連結財規23条など)
    • 事業分離(分離元企業(*)および分離先企業)(四半期連結財規24条および25条など)
    • 子会社の企業結合(連結のみ)(*)(四半期連結財規26条)

(*)が付された事項については、個々の取引に重要性が乏しい場合でも、当該四半期に行われた企業結合全体で重要性がある場合には、注記が必要とされている事項になります。

6. 企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」(平成20年3月公表)および企業会計基準適用指針第24号「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」

(1)適用時期・適用範囲など

平成22年4月1日以後開始する事業年度から原則適用するものとされています(基準18項)。
本会計基準等の適用について、持分法が適用される被投資会社の会計処理の原則および手続きを投資会社と統一するために変更する場合には、会計基準の変更に伴う会計方針の変更として取り扱われることになります(基準28項)。

(2)会計基準の適用に伴う主な相違点

① 会計基準公表の目的

本会計基準公表の目的は、持分法に関する会計処理および開示を定めることにあります(基準1項)。すなわち、従来「連結財務諸表原則」に定められていた持分法に関する会計処理等を独立の会計基準として定めたものであり、原則として新たな会計処理または表示方法の採用が強制されることはないとされています(基準28項)。

しかしながら、新たな定めが一つ設けられており、同一の環境下で行われた同一の性質の取引等について、投資会社および持分法を適用する被投資会社が採用する会計処理の原則および手続きは、原則として統一するものとされています(基準9項)。従来、持分法適用関連会社の会計方針については、会計基準で特に明示されておらず、「原則として統一することが望ましい」(平成21年6月改正前会計制度委員会報告第9号「持分法会計に関する実務指針」5項)とされていました。また、持分法を適用している非連結子会社についても、「必ずしも統一することを要しない」(監査・保証実務委員会報告第56号「親子会社間の会計処理の統一に関する当面の監査上の取扱い」2. なお書き)とされていました。

② 関連会社に関する当面の取扱い

持分法適用関連会社については、本会計基準における原則的な定めに対して、実務対応報告第24号において当面の取扱いが定められており、その概要は以下のとおりとなります。

  • 連結子会社に準じた当面の取扱い
    • 監査・保証実務委員会報告第56号「親子会社間の会計処理の統一に関する当面の監査上の取扱い」の定めに準じ、必ずしも統一を要しない会計処理に係る取扱いを用いることができるとされています。
    • 在外関連会社については、実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」の定めに準じて、国際財務報告基準または米国会計基準を用いて財務諸表を作成することができるとされています。
  • 関連会社に固有の事情を考慮して、統一のために必要な情報を入手することが困難と認められる場合の取扱いが定められています。
  • 会計処理の原則および手続きの統一に当たっての重要性の考え方(一般には、当期純利益が考えられていること)が示されています。
  • 持分法の適用対象となる非連結子会社における取扱いが示されています。

(3)適用初年度・四半期の留意事項

本会計基準および実務対応報告第24号の適用による影響額について、以下のように取り扱う旨が示されています。

  • 会計方針の統一に伴う関連会社等の純資産の変動額のうち、投資会社等の持分または負担に見合う額(実務対応報告第24号「適用時期等」(2))
    • 利益剰余金に係るものは期首の利益剰余金に加減するものとされています。
    • 評価・換算差額等に係るものは、該当する科目に加減するものとされています。
  • 実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」に準じた処理を行う場合に、修正のために必要となる過年度情報の入手が極めて困難な場合(実務対応報告第24号「適用時期等」(3))
    • のれん、時価評価されている投資不動産、再評価されている固定資産に関しては、適用初年度の期首において新たに計上されたものとして取り扱う旨が示されています。
    • 退職給付会計に係る数理計算上の差異を純資産の部に直接計上している場合は、過年度において損益修正されているものとして取り扱う旨が示されています。

(4)四半期報告書における開示

  • 会計方針の変更の注記
    • 変更の旨、変更の理由、変更による影響額の注記が必要となります。
    • 期首剰余金を修正している場合には、当該影響額も注記する必要があります。
  • 株主資本等関係の注記
    • 期首剰余金等への影響が多額に上る場合には、「株主資本等の金額の著しい変動」として注記することが考えられます。

7. その他(後入先出法の廃止・税制改正・実務対応報告第26号の廃止)

(1)改正企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」

① 適用時期・適用範囲など

原則として、平成22年4月1日以後開始する事業年度から適用するものとされており、また早期適用が可能となっています(改正基準21-2項)。本会計基準等の適用については、会計基準の変更に伴う会計方針の変更として取り扱われることになると考えられます。
なお、適用初年度における影響額の取扱いに係る定めが設けられています(改正基準21-3項および21-4項)。

② 会計基準の適用に伴う主な相違点

本会計基準の適用により、従来の取扱いと異なる主要な点は図表10のとおりとなります。

図表10 改正棚卸資産会計基準の適用による従来との主な相違点
項目 改正棚卸資産会計基準 従前の取扱い
「後入先出法」の廃止
(改正基準6-2項)

棚卸資産の評価方法として以下の四つの方法が明示された。

  • 個別法
  • 先入先出法
  • 平均原価法
  • 売価還元法
企業会計原則注解21(1)において五つの方法(個別法・先入先出法・後入先出法・平均原価法・売価還元原価法)が例示されていた。
「最終仕入原価法」の要件の明確化
(改正基準34-4項)
上記四つの方法に含まれていないが、一定の条件下で容認される方法とされた。 会計基準上、最終仕入原価法への言及はなかった。
③ 四半期報告書における開示
  • 会計方針の変更の注記
    • 変更の旨、変更の理由、変更による影響額の注記が必要となります。
  • 適用初年度の損益の表示に関する特例が設けられています(改正基準21-3項)。
  • 適用初年度の影響額の注記に関しても、特例が設けられています(改正基準21-4項)。

(2)税制改正に伴う実務対応報告の改正

① 公開草案と公表予定・適用予定時期

平成22年度税制改正(グループ法人税制の導入など)に対応し、以下の実務対応報告の改正が提案されています。

  • 「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)(案)」(実務対応報告第5号の改正案)
  • 「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その2)(案)」(実務対応報告第7号の改正案)

これらについては、6月末までに改正後の実務対応報告を公表することが予定されており、実施時期として平成22年6月30日以後終了する事業年度末および四半期会計期間末からとすること(同日より前に終了する事業年度末および四半期会計期間末からの早期適用が可能)が予定されています。
なお、実務対応報告第4号「連結納税制度を適用する場合の中間財務諸表等における税効果会計に関する当面の取扱い」は、必要と考えられる定めのみ引き継いだ上で、廃止することが提案されています。

② 実務対応報告改正(案)の概要

改正案では、主に以下の事項に係る改正が提案されています。

  • 特定繰越欠損金制度の創設に伴う改正
    • 繰延税金資産の回収可能性の判定に係る基本的な考え方に変更はなく、法令の規定にのっとって見積もった欠損金の回収見込みに応じて、その回収可能性を判断
      • 連結財務諸表における回収可能性は、連結納税主体を一体として回収可能性を判断し、その際に、連結所得見積額と各社の個別所得見積額の双方を勘案することが示されています。
      • 個別財務諸表における回収可能性は、連結所得見積額と各社の個別所得見積額を考慮することが示されています。
  • 完全支配関係を有する内国法人間の譲渡損益繰延に係る改正

(3)実務対応報告第26号「債券の保有目的区分の変更に関する当面の取扱い」

金融市場における混乱を背景に債券の保有目的区分の変更に関して当面必要と考えられる取扱いを示したものであり、本実務対応報告公表日(平成20年12月5日)から平成22年3月31日までの適用となっており、平成22年4月1日以後の保有目的区分の変更の取扱いについては、あらためて検討することとされていました。適用事例が少数にとどまること、最近の経済環境を踏まえたところで継続する必要性に乏しいと考えられることから、同取扱いは廃止されることとなりました。

Ⅱ 平成22年6月第1四半期の開示上の留意事項

経理の状況以外の部分では、以下のものについて新たに開示を要求されます。

  • セグメント情報の区分ごとの記載
  • 行使価額修正条項付新株予約権付社債券等の行使状況
  • 手取金の総額、資金使途の変更

(1)セグメント情報の区分ごとの記載

以下については、従来、事業の種類別セグメント(事業部門等含む)に関連して記載されていましたが、セグメント情報に関連した記載が求められることとなりました。

  • 「企業の概況 2 事業の内容」主要な関係会社の異動
  • 「第 1 企業の概況 4 従業員の状況」従業員数の著しい増減
  • 「第 2 事業の概況 1 生産、受注及び販売の状況」前年同四半期の実績との比較
    • なお、前年第1四半期の金額の記載は不要と考えられます
  • 「第 2 事業の概況 4 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」業績の状況およびキャッシュ・フローの状況についての前年同四半期連結会計期間との比較・分析
    • なお、前年第1四半期の金額の記載は不要と考えられます。
  • 「第 3 設備の状況 主要な設備の状況」主要な設備の重要な異動

(2)行使価額修正条項付新株予約権付社債券等の行使状況

平成22年2月1日以後に開始する四半期会計期間において、行使価額修正条項付新株予約権付社債券等の行使状況として、前四半期会計期間と当四半期会計期間に係るものについて以下の開示が必要となります。

  • 四半期会計期間に権利行使された当該行使価額修正条項付新株予約権付社債券等の数
  • 四半期会計期間の権利行使に係る交付株式数、平均行使価額等、資金調達額
  • 四半期会計期間の末日における権利行使された当該行使価額修正条項付新株予約権社債等の数の累計
  • 四半期会計期間の末日における当該行使価額修正条項付新株予約権社債等に係る累計の交付株式数、平均行使価額等、累計の資金調達額

(3)手取金の総額、資金使途の変更

当四半期会計期間において、有価証券届出書、発行登録追補書類または臨時報告書に記載すべき手取金の総額ならびにその使途の区分ごとの内容、金額および支出予定時期に重要な変更が生じた場合には、その内容を記載する必要があります。

Ⅲ 平成22年6月第1四半期の会計処理上の留意事項

1. 固定資産の減損会計

(1)減損の兆候の例示

減損会計基準等では、以下の事項が減損の兆候として例示されていますが、これらはあくまでも例示であり、会社の状況に応じて適切な判断が行われる必要がある点に留意する必要があります。

  • 営業活動から生ずる損益またはキャッシュ・フローが継続してマイナス
  • 使用範囲・方法について回収可能価額を著しく低下させる事実の発生
  • 経営環境の著しい悪化
  • 市場価格の著しい下落

(2)決算上の留意事項

減損の兆候の有無の把握、減損損失認識の要否の判断および減損損失の測定に際し、特に留意して実施すべきと考えられる項目は以下のとおりです。

  • 事業計画と実績とを対比する(減損の兆候の漏れ、将来CFの見積もりの合理性を判断する)。
  • 操業状況を把握する。
  • 他の見積もりとの整合性を確かめる。
  • CFの見積期間や耐用年数の適切性を確認する。
    • 当年度から原則適用となる資産除去債務会計基準との整合についても十分に留意する必要があると考えられます。

2. 有価証券の減損

(1)時価の回復可能性の判断

時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損失として処理します。
時価が、おおむね1年以内に取得原価にほぼ近い水準まで回復することを合理的な根拠で予測できる場合は、回復する見込みがあると認められますが、以下の場合は、通常、回復する見込みがあると認められません。

  • 時価が過去2年間著しく下落した状態
  • 株式の発行会社が、債務超過である場合
  • 株式の発行会社が、2期連続で損失計上しており、翌期も損失が予想される場合

(2)時価を把握することが極めて困難と認められる株式の減損

発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したとき、相当の減額をなし、評価差額は当期の損失として処理します。
実質価額の算定に当たっては、決算日までに入手し得る直近の財務諸表を使用し、その後の状況で財政状態に重要な影響を及ぼす事項が判明していればその事項も加味します。

なお、子会社や関連会社等の株式については、事業計画の合理性および実現可能性がある場合には、5年以内に回復すると見込まれる金額を上限として回復可能性の判定を行いますが、回復可能性は毎期見直すことが必要であり、事業計画が予定通りに進まないことが判明したとき(実績が事業計画を下回った場合など)には、減損処理の要否の検討が必要になります。

企業会計ナビ

企業会計ナビ

会計・監査や経営にまつわる最新情報、解説記事などを発信しています。

一覧ページへ