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「退職給付に関する会計基準(案)」、および「退職給付に関する会計基準の適用指針(案)」のポイント

2010.03.23
新日本有限責任監査法人 会計情報トピックス
佐伯 洋介
<企業会計基準委員会が平成22年3月18日に公表>

平成22年3月18日に、企業会計基準公開草案第39号「退職給付に関する会計基準(案)」および企業会計基準適用指針公開草案第35号「退職給付に関する会計基準の適用指針(案)」が公表されています。

本公開草案は、国際的な動向を踏まえての検討に当たり、その改訂作業を二つのステップに分け、そのステップ1として、未認識数理計算上の差異および未認識過去勤務費用の処理方法、退職給付債務および勤務費用の計算方法ならびに開示の拡充を中心に審議を重ねた結果、公表されたものです。

本公開草案は平成22年5月31日(月)までコメントが募集されています。

1. 本公開草案によって改正される会計基準等について

本公開草案は、次の会計基準等(以下、改正前会計基準等)を改正し、または統合されています。

  改正するまたは統合する会計基準等(改正前会計基準等)
本会計基準案 改正
  • 企業会計審議会「退職給付に係る会計基準・同注解」
統合
  • 企業会計審議会「退職給付に係る会計基準の設定に関する意見書」
  • 企業会計基準第3号「『退職給付に係る会計基準』の一部改正」
  • 企業会計基準第19号「『退職給付に係る会計基準』の一部改正(その3)」
本適用指針案 改正
  • 日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第13号「退職給付会計に関する実務指針(中間報告)」
統合
  • 企業会計基準第14号「『退職給付に係る会計基準』の一部改正(その2)」
  • 日本公認会計士協会「退職給付会計に関するQ&A」
2. 主な改正点

(1)

未認識数理計算上の差異および未認識過去勤務費用の処理方法

論点 従来 改正後
貸借対照表上の取り扱い オフバランス B/S認識
税効果を調整した上で「その他の包括利益累計額」を計上するとともに、「退職給付に係る負債(又は資産)」を計上

(2)

退職給付債務および勤務費用の計算方法

論点 従来 改正後
期間帰属方法の見直し 原則として期間定額基準 期間定額基準または給付算定式に従う方法
割引率算定の考え方の見直し 原則:見込支払日までの平均期間
平均残存勤務期間に近似した年数も認められる
原則:見込支払日までの期間ごとに設定された複数のものを使用
給付見込期間および給付見込期間ごとの退職給付の金額を反映した単一の加重平均割引率を使用することも認められる
予想昇給率反映の考え方の見直し 「確実に見込まれる」昇給等が含まれる 「予想される」昇給等が含まれる

(3)

開示の拡充

退職給付債務や年金資産の増減の内訳など、国際的な会計基準で採用されているものを中心に、開示項目を拡充しています。

(4)

複数事業主制度の取り扱いの見直し

論点 従来 改正後
類似した制度を採用している場合等の取り扱い 複数事業主間において類似した退職給付制度を有している場合は、自社の拠出に対応する年金資産の額が合理的に計算できる制度とみなす 制度の内容を勘案して判断する

(5)

長期期待運用収益率の考え方の明確化

長期期待運用収益率の算定が、退職給付の支払いに充てられるまでの期間等を考慮して設定することを明らかにしています。

なお、従来の考え方を改めるものではないことから、会計方針の変更には該当しないとしています。

(6)

名称等の変更

従来 改正後
  • 退職給付引当金
  • 前払年金費用
  • 過去勤務債務
  • 期待運用収益率
  • 退職給付に係る負債
  • 退職給付に係る資産
  • 過去勤務費用
  • 長期期待運用収益率
3.適用時期
  • 2.(1)、(3)(および(5))は、平成23年4月1日以後開始する事業年度末に係る財務諸表から適用します(早期適用あり)。過去の財務諸表に対する遡及(そきゅう)処理はせず、会計方針の変更の影響額は、その他の包括利益累計額に加減します。
  • 2.(2)および(4)は、平成24年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用します(早期適用あり)。過去の財務諸表に対する遡及処理はせず、会計方針の変更の影響額は期首の利益剰余金に加減します。
4.今後のプロジェクトの進め方

「コメントの募集」において、参考としてすでに公表されている論点整理に対する今後の進め方が以下のように示されています。

論点整理の論点 今後の進め方
[論点4-1]数理計算上の差異の会計処理
[論点4-2]重要性基準と回廊アプローチ
[論点4-3]過去勤務債務の会計処理
[論点5]損益計算処理における退職給付費用に係る表示
[論点7]清算と縮小の会計処理と表示
IASBの動向を踏まえステップ2として進めていく
[論点1-1]予測単位積増方式による測定方法等の見直し
[論点3-1]年金資産と退職給付債務の総額表示
[論点8]キャッシュ・バランス・プランの会計処理と表示
現在、国際的な見直しの議論の中で検討対象とされていないことを考慮し、当面の見直し対象としていない
[論点1-3]小規模企業等における簡便法の容認
[論点2-2]退職給付信託の取扱い
[論点10]その他の退職後給付
国際的な会計基準と重要な相違が生じるとは必ずしもいえないなどを踏まえ、見直し対象としていない

本稿は「企業会計基準公開草案第39号『退職給付に関する会計基準(案)』及び企業会計基準適用指針公開草案第35号『退職給付に関する会計基準の適用指針(案)』の公表」の概要を記述したものであり、その詳細については、以下の財務会計基準機構/企業会計基準委員会のウェブサイトをご参照ください。



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