企業会計ナビ

「企業結合会計の見直しに関する論点の整理」のポイント

2009.07.15
新日本有限責任監査法人 会計監理レポート
<企業会計基準委員会が平成21年7月10日に公表>

平成20年12月に改正された企業結合会計基準等により、いわゆるEU同等性評価に関連した欧州証券規制当局委員会(CESR)からの補正措置項目として提案されていた会計基準等の差異(ステップ1)については、解消されました。

企業会計基準委員会(ASBJ)は、上記以外の差異(ステップ2)について、中期的に検討を進めつつ、広く一般から意見を求めるため、平成21年7月10日に「企業結合会計の見直しに関する論点の整理」(以下、論点整理)を公表しました。

本論点整理は、国際的な会計基準やその動向を踏まえ、企業結合会計に関する論点を示し、今後の議論の整理を図ることを目的としています。

ASBJでは、本論点整理に寄せられる意見も参考に、今後、企業結合(連結を含む)に関する会計基準等の見直しに向けた検討を続けていく予定であるとされています。

本論点整理に対するコメントの募集は平成21年9月7日(月)までとなっています。


本論点整理のポイント

【論点1】少数株主持分の取り扱い

連結財務諸表における少数株主持分について、わが国の会計基準と国際的な会計基準とでは、①連結財務諸表における表示等、②支配が継続している場合の子会社に対する親会社持分の変動、③共通支配下の取引等において、形式的な点を含め異なる取り扱いがあり、本論点整理では、連結財務諸表における少数株主持分および少数株主損益に関する表示等(子会社に生じた損失の配分を含む)については、引き続き、現行の会計基準に基づく取り扱いを行っていくことが適当であるとされています。

また、支配が継続している場合の子会社に対する親会社持分の変動によって生じる差額については、次の二つの案を中心に、今後検討することが適当であるとされています。

A案: 子会社に対する親会社持分が増加した場合も減少した場合も、純資産の部における評価・換算差額等として、当該差額を将来に繰り延べ、子会社ではなくなったときに損益に振り替える案
B案: 子会社に対する親会社持分が変動した理由に応じて、当該差額を処理する案

【論点2】取得原価の算定

[論点2-1]取得の基本的な処理方法

取得の基本的な処理については、わが国でも国際的な会計基準でも企業結合日における時価(公正価値)を基礎として処理されることとなるため、大きな差異はなく、特段の見直しは必要ないとされています。

[論点2-2]条件付取得対価の交付

条件付取得対価について、わが国の会計基準では、当該条件付取得対価の交付または引渡しが確実となるまで会計処理を行いませんが、国際的な会計基準では、取得日の公正価値によって認識し、取得日以後に当該公正価値の変動があった場合に一定の会計処理が行われます。本論点整理では、企業結合日における時価で取得原価に含めることが適当であるとされていますが、引き続き検討することとされています。

[論点2-3]取得に要した支出

株式交付費以外の企業結合における取得に要した支出について、わが国の会計基準では、取得原価に含めて会計処理しますが、国際的な会計基準では、発生時の費用とし取得原価に含めないものとしています。企業結合においては、取得に要した支出のどこまでを取得原価の範囲とするか、実務上、議論となることも多いことなどから、国際的な会計基準と同様に、今後は発生時に費用とすることが考えられるとされています。

[論点2-4]新株予約権の交付

企業結合において、被取得企業の従業員等に対する報酬としての新株予約権と引き換えに取得企業の新株予約権を付与する場合、わが国の会計基準と国際的な会計基準では、取得原価に含めることでは共通していますが、取得原価に含める金額について相違があり、また、わが国の会計基準では、被取得企業の従業員等に対する報酬としての新株予約権と引き換えに付与する取得企業の新株予約権を、取得に直接要した支出額に準じて取得原価に含めているため、当該支出額の取り扱いに関して見直すこととなれば([論点2-3])、この取り扱いについても検討する必要があるとされています。

【論点3】取得原価の配分

[論点3-1]識別可能資産および負債の認識原則

識別可能資産および負債の認識において、わが国の会計基準では、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準で認められる資産および負債を認識し、国際的な会計基準では、概念フレームワークにおける定義を満たす資産または負債を認識するため、大きな差異はないと考えられるとされています。
また、国際的な会計基準では、識別可能資産および負債の認識条件として、企業結合において交換したものの一部であることが定められており、企業結合とは別の取引となるか否かの規準も示されているため、わが国の会計基準でも、今後、このような取り扱いの明示を検討するとされています。

[論点3-2]識別可能資産および負債の測定原則

認識した識別可能資産および負債の測定については、わが国でも国際的な会計基準でも、時価(または公正価値)を基礎として行われ、大きな差異はないと考えられるとされています。
ただし、暫定的な会計処理の確定と見直しにより取得原価の配分額を修正した場合であって、それが企業結合年度の翌年度に行われるときの取り扱いに相違がみられ、わが国においても、現在、遡及(そきゅう)処理に関する会計基準の開発が進められており、暫定的な会計処理の取り扱いについても、国際的な会計基準と同様に、今後、取得日時点にさかのぼって修正することが考えられるとされています。
また、暫定的な会計処理は、今後も原則として、時価の算定に時間を要するものに限られると考えられますが、国際的な会計基準と同様に、取得原価の配分における識別可能資産および負債のみならず、交付した条件付取得対価や新株予約権のような取得原価自体についても、当該暫定的な会計処理の対象とすることが考えられるとされています。

[論点3-3]売却目的で保有する資産への取得原価の配分

わが国の会計基準と国際的な会計基準では、売却目的で保有する資産の取り扱いに一定の相違がみられ、売却目的で保有する資産については、「財務諸表の表示に関する論点の整理」も踏まえて検討されますが、当該論点の整理は主として表示に関するものであり、また、測定については、わが国の減損会計の取り扱いにより国際的な会計基準の取り扱いとは大きく異ならないと考え、売却目的で保有する資産の測定に関する会計基準を開発していく必要性は乏しいものと考えられるとされています。
このため、企業結合時における売却目的で保有する資産への取得原価の配分については、別の会計基準を参照して時価から売却費用控除後の金額を用いるという対応ではなく、企業結合に関する会計基準等の中で対応することが考えられるとされています。

[論点3-4]偶発負債および企業結合に係る特定勘定への取得原価の配分

企業結合において引き受けた偶発負債(偶発債務)やわが国の会計基準にいう企業結合に係る特定勘定については、国際的な会計基準とは異なる取り扱いが定められています。
これらの取り扱いについては、会計基準の国際的なコンバージェンスの観点から見直していくという考え方がある一方で、ASBJにおける引当金一般についての議論の進展と合わせて対応すべきという考え方や、現行の企業結合に係る特定勘定の方がその後の損益計算を適切に行うことができるという考え方もあることから、見直す必要があるのかどうか、引き続き検討するとされています。

[論点3-5]少数株主持分の測定(全部のれんの可否)

企業結合において少数株主が存在する場合、少数株主持分は、被取得企業の識別可能純資産の時価のうち少数株主に帰属する金額により測定する方法のほか、時価により直接的に測定する方法があります。わが国の会計基準では、前者によることとされていますが、国際財務報告基準では、前者か後者のいずれかで測定することとされています。
少数株主持分の測定については、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」と同様に、子会社の資本のうち少数株主に帰属する部分とする方法に限定することが考えられるとされています。
しかしながら、国際的な会計基準の取り扱いを踏まえ、少数株主持分を取得日の時価によること(全部のれん)も認めるべきという意見もあることから、本論点整理では、選択適用できるようにするかどうか、引き続き検討するものとされています。

[論点3-6]繰延税金資産および負債への取得原価の配分

企業結合において、被取得企業および取得した事業から生じる一時差異等に係る税金の額を、将来の事業年度において回収または支払が見込まれない額を除き、企業結合日に繰延税金資産または負債として計上するという点で、わが国の会計基準と国際的な会計基準は共通しているとされています。
本論点整理では、最近の国際的な会計基準の開発過程で取り上げられた次の点に関して検討を行っています。
企業結合に伴う取得企業自体の繰延税金資産に関する会計処理
被取得企業の一時差異等に関する税効果が取得日以降に変動したときの会計処理
会計上ののれんを超過する損金算入できるのれんから生じる税効果の会計処理(ただし、これは[論点4-2]で検討)
被取得企業の法人税等に関連する不確実性が取得日以降に変化した場合の会計処理

【論点4】のれんの会計処理

[論点4-1]のれんの償却

のれんについては、わが国における会計基準のように規則的に償却する取り扱いと、国際的な会計基準のようにのれんを償却しない取り扱いがあり、のれんの償却自体の意義やのれんの償却手続、自己創設のれんの計上との関係などから、それぞれの考え方が支持されています。
のれんの償却について、今後、わが国における会計基準を見直すかどうかは、引き続き検討するものとされています。
なお、この見直しに当たっては、その根拠のほか、会計処理の変更に伴う追加的な論点やそれらを実行した場合の実務上の負担も並行的に考慮すべきものと考えられることから、本論点整理では、[追加検討①]としてのれんの減損処理の取り扱いを整理し、[追加検討②]として無形資産への配分について整理されています。

[論点4-2]のれんに関する税効果

企業結合によって認識されたのれんについて、適格組織再編に該当する場合には、これまでと同様に、税効果を認識しないことが考えられるとされています。
一方、非適格組織再編に該当する場合、わが国の会計基準では、会計上ののれんに対して税効果を認識せず、税務上ののれん全額が一時差異を構成するものとして取り扱われ、法人税法における「資産調整勘定」または「差額負債調整勘定」は会計上ののれん(または負ののれん)に対応する税務上ののれん(または負ののれん)ではないとする考え方においては、現状の取り扱いと同様の結果になり、改めて見直す必要性は乏しいと考えられるとされています。
会計上、負ののれんとなる場合にも、適格組織再編に該当する場合には、これまでと同様に、税効果を認識せず、また、非適格組織再編に該当する場合には、わが国の会計基準でも国際的な会計基準においても、税務上の負ののれんがあるときには、その全額が将来加算一時差異として取り扱われており、国際的な会計基準との間に相違はないと考えられるとされています。

【論点5】子会社に対する支配の喪失

わが国の会計基準では、子会社株式の売却等により被投資会社が子会社および関連会社に該当しなくなった場合、連結財務諸表上、残存する当該被投資会社に対する投資は、個別貸借対照表上の帳簿価額をもって評価するとされていますが、国際的な会計基準において、残存投資は、支配喪失時における公正価値により評価するとされています。
売却および企業結合等により、被投資会社に対する支配を喪失したが関連会社に該当する場合、支配の喪失によっても、引き続き保有する関連会社に対する投資の実態または本質が変わったものと見なせないため、投資は継続していると見て、支配喪失時においても関連会社株式は帳簿価額のままとすることが考えられますが、連結財務諸表上は、国際的な会計基準とのコンバージェンスを重視し、関連会社株式を時価で評価することが考えられるとされています。
また、企業結合により被投資会社に対する支配を喪失し関連会社にも該当しなくなる場合、投資が清算されたものとみて交換損益を認識するものとされており、その処理は、国際的な会計基準と整合しているものと考えられますが、売却等により子会社にも関連会社にも該当しなくなる場合には、今後、次のいずれかの方法とすることが考えられるとされています。
第1案: 企業結合によるときと同様に、被投資会社に対する投資がすべて清算されたものと見て、売却された株式のみならず、残存投資も時価で評価し、差額を損益とする方法
第2案: これまでと同様に、残存投資については、引き続き投資は継続していると見て帳簿価額のままとする(ただし、連結財務諸表上は、国際的な会計基準とのコンバージェンスを重視し、残存投資を時価で評価し、差額を損益とする)方法
なお、関連会社に対する重要な影響力が喪失した場合も、それが関連会社の企業結合によるときには、交換損益が認識され、国際的な会計基準と整合しているものと考えられますが、売却等によるときには、今後、子会社に対する支配を喪失した場合の会計処理と同様に整理していくことが考えられるとされています。
また、共同支配の喪失の場合についても、これらの処理と同様に行うことが考えられますが、引き続き検討するものとされています。


本稿は「『企業結合会計の見直しに関する論点の整理』の公表」の概要および主な論点を記述したものであり、詳細については、以下の財務会計基準機構/企業会計基準委員会のウェブサイトをご参照ください。



情報量は適当ですか?

文章はわかりやすいですか?

参考になりましたか?