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改正「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」等のポイント

2009.06.16
新日本有限責任監査法人 会計監理レポート
吉田 剛
<日本公認会計士協会が平成21年6月9日付で公表>

日本公認会計士協会(会計制度委員会)は平成21年6月9日付で、会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」等の改正を公表しました。以下では、今般改正された実務指針等のポイントを解説します。


1. 改正された実務指針等

  • 会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(以下、資本連結実務指針)
  • 同第9号「持分法会計に関する実務指針」(以下、持分法実務指針)
  • 同第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」(以下、外貨建取引実務指針)
  • 同第14号「金融商品会計に関する実務指針」
  • 「金融商品会計に関するQ&A」

2. 改正の目的

この改正は、主として、平成20年12月に公表された企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(以下、連結会計基準)等で示された取り扱いとの整合性を図るために行われたものであり、部分時価評価法の廃止や連結財務諸表における段階取得の会計処理が改正されたことなどに呼応して、所要の見直しを行ったものです。


3. 主な改正内容

段階取得の会計処理への対応(資本連結実務指針第8項)

連結会計基準第23項(1)などで、取得が複数の取引により達成された場合(段階取得)の取得原価が、連結財務諸表上支配を獲得するに至った個々の取引すべての支配獲得日の時価とされたことを受け、取得の対価が現金の場合において、支配獲得日の時価をその現金支出額を基礎として算定することが示されています。
また、対価性が認められる支配獲得に直接要した支出額は取得原価に含まれるが、支配獲得前に保有していた株式の取得原価に含まれていた付随費用については、支配獲得時点で算定される取得原価に含まれないことが明らかにされています。

在外子会社等ののれんおよびのれん償却額の換算の見直し(外貨建取引実務指針第40項および持分法実務指針第31項))

企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(以下、企業結合適用指針)第77-2項により、在外子会社株式の取得等により生じたのれんが、決算日の為替相場により換算することとされたことを受け、為替換算調整勘定がのれんの期末残高とのれん償却額(在外子会社等の会計期間に基づく期中平均相場等により換算)の双方から生じることが確認されています。
また、負ののれんについては、取得時または発生時の為替相場で換算することが示されています。

企業結合においてのれんまたは負ののれんが生じる場合の取り扱い(資本連結実務指針第22項)

企業結合において、純額ののれんまたは負ののれんが生じる場合の取り扱いが明確化されています。具体的には、契約等により取得の対価がおおむね独立して決定されており、かつ、内部管理上独立した業績報告が行われる単位が明確である場合には、当該業績報告が行われる単位ごとにそれを分解してのれんまたは負ののれんを算定し、処理することが示されました。

負ののれんの会計処理が変更されたことへの対応(資本連結実務指針第30項)

企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(以下、企業結合会計基準)第33項および連結会計基準第24項などで、負ののれんの会計処理が、従来の規則的償却から、識別可能資産・負債の把握、取得原価の配分の見直しを行ってもなお負ののれんが生じる場合に発生した事業年度の利益とする処理に変更されたことを受け、適切な償却期間の設定に係る定めがのれん(借方)のみに対応するように改正されています。

部分時価評価法廃止への対応

連結会計基準第20項において、連結財務諸表の作成の際の子会社の資産および負債の評価方法を全面時価評価法に一本化し、部分時価評価法が廃止されたことを受け、部分時価評価法について定めていた条文の削除等の対応が図られています。
具体的には、改正前資本連結実務指針の第14項~第16項、第18項、第20項、第27項、第34項、第38項、第43項が削除され、第23項、第24項などに必要な修正が施されるとともに、結論の背景(第53項以下)においても、必要な修正(条文の削除を含む)が行われています。また、同実務指針の設例11は、「時価評価方法を変更した場合」の設例から「連結会計基準の適用に伴い部分時価評価法から全面時価評価法に変更する場合」の設例へと変更されています。
また、持分法実務指針においても、持分法を適用する非連結子会社の資産および負債の評価方法が全面時価評価法に一本化されたことに伴う修正が行われるとともに(同実務指針第6項など)、持分法適用関連会社に適用される部分時価評価法に関する定めについて、従来は資本連結実務指針を参照する形式となっていたものが、持分法実務指針で直接定めを行う形式に変更されています(同実務指針第6-2項から第6-5項)。
さらに、外貨建取引実務指針における部分時価評価法に関連する定めに係る記述を削除する改正がなされています(外貨建取引実務指針第37項~第40項、第72-2項および第75項)。

連結会計基準に定めのない会計処理・開示について企業結合会計基準等の定めに従って会計処理を行うことまたは開示することが連結会計基準で明らかにされたことへの対応(資本連結実務指針第7-2項など)

連結会計基準第19項にて、連結貸借対照表の作成に関する会計処理における企業結合および事業分離等に関する事項のうち、連結会計基準に定めのない事項については、企業結合会計基準および企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」の定めに従って会計処理することが明らかになっています。これに伴い、条件付取得対価の会計処理(企業結合会計基準第27項)、取得原価の配分における暫定的な会計処理(企業結合会計基準(注6))、企業結合に係る特定勘定への取得原価の配分(企業結合会計基準第30項)などについて、企業結合会計基準等の定めに従って会計処理を行う旨が示されています。また、注記事項に関しても、連結会計基準(注15)に従い、取得とされた企業結合の注記事項(企業結合会計基準第49項)などが必要となることが示されています。

みなし取得日の取り扱いの明確化(資本連結実務指針第7項)

連結会計基準(注5)において、いわゆる「みなし取得日」の定めが、従来の「いずれか近い決算日」から「いずれかの決算日」に改正され、また、支配を獲得したとみなす日が、企業結合の主要条件が合意されて公表された日以降としなければならない(企業結合適用指針第117項)とされています。しかし、連結会計基準が適用される企業結合では、通常現金を対価とする株式の取得により支配が獲得され、例えば株式交換のように一定の法的手続を踏まえて実施されるとは限らないことから、連結損益計算書への影響が乏しい場合には、前述の企業結合適用指針第117項の定めにかかわらず、主要条件が合意されて公表された日よりも前に支配を獲得したとみなして処理することができるとされました。

のれんの償却開始時期の明確化(資本連結実務指針第31-2項および第62-2項)

のれんの償却開始時期が原則として支配獲得日であり、通常、それは子会社の損益計算書を連結する期間と一致することが示されています。
また、3カ月以下の決算日の差異が認められていること(連結会計基準(注4)参照)、みなし取得日が認められていること(連結会計基準(注5)参照)によって、支配獲得日を開始日とする期間が子会社の損益計算書が連結される期間とならないことがあり、この場合にも、子会社の損益計算書が連結される期間に合わせてのれんの償却開始時期を決定することが明確化されています。


4.適用時期

企業結合会計基準および連結会計基準等の適用と同様の時期に適用するものとされています。

従って、上記の会計基準等を早期適用しない場合には、平成22年4月1日以後実施される企業結合等に関する会計処理および注記事項から適用されることになります(連結財務諸表に係る事項については、平成22年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用されます)。また、上記の会計基準等を早期適用する場合には、早期適用を行った事業年度(連結会計年度)から、これら改正実務指針等を適用することになります。


本稿は「会計制度委員会報告第7号『連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針』、同第9号『持分法会計に関する実務指針』、同第4号『外貨建取引等の会計処理に関する実務指針』、同第14号『金融商品会計に関する実務指針』及び『金融商品会計に関するQ&A』の改正について」の概要および主な論点を記述したものであり、詳細については、以下の日本公認会計士協会のウェブサイトをご参照ください。



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