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「連結財務諸表における特別目的会社の取扱い等に関する論点の整理」

2009.02.16
新日本有限責任監査法人 会計監理レポート
目黒 幸二
<企業会計基準委員会が平成21年2月6日に公表>

平成21年2月6日に企業会計基準委員会(ASBJ)から「連結財務諸表における特別目的会社の取扱い等に関する論点の整理」(以下、論点整理)が、公表されました。本論点整理は、国際的な会計基準やその動向を踏まえ、連結財務諸表における特別目的会社(以下、SPC)の取り扱い等に関する論点を示し、今後の議論の整理を図ることを目的としたものです(第1項)。

なお、4月13日までコメントを募集しており、その意見も参考に、今後、会計基準等が取りまとめられる予定です。

本稿において意見にわたる部分については、執筆者の私見であり、当法人の公式見解ではありません。


1. 現状の会計基準と論点整理の背景(第2項~第7項)

連結財務諸表原則(連結会計基準も同様)では、子会社の判定基準として支配力基準が導入されていますが、一定の要件を満たしたSPCについては、子会社に該当しないものと推定するとされています。

ただし、近年SPCの利用が複雑化・多様化しており、企業および監査人の判断が相当に難しくなっていることから、今般、SPCに係る会計基準等の整備が図られることとなりました。


2. 【論点1】支配の定義と支配力の適用について(第9項~第24項)

SPCに係る中心的な論点(論点3および4)の前提として、一般的な「支配」の定義の見直しが論点とされています。

(1)

リターンの要素の加味

「支配」とは、ある企業が自らのためにリターンを生み出すように、他の企業の活動を左右するパワーを有していることをいうものとし、リターンの要素も加味することが提案されています。

過半数の議決権を保有している場合も含めて、他の企業の営業や財務の方針を決定できる場合には、他の企業の活動を左右するパワーを有していますが、親会社に生じるリターン(プラスあるいはマイナス)の要素も支配の定義に含めることに変更することの是非が論点とされています。

支配の定義において、パワーの要素だけではなくリターンの要素も加味することについては、すでにわが国の企業結合会計基準第7項でも示されており、国際的な会計基準でも提案されているものでもあるため、それらと歩調を合わせたものです。

この結果、事業を営む典型的な企業のみならず、SPCに対する支配についても、定義上、包含されることが明確になるものとされています。

なお、その場合には、企業結合会計基準における支配の定義および関連会社の定義も見直すものとされています。

(2)

支配力基準の考え方の維持

「緊密な者」や「同意している者」の考え方を用いる実質支配力基準については、事業を営む典型的な企業とSPCを区別せず、引き続き適用することが適当との考えが示されています。


3. 【論点2】連結対象となる企業について(第25項~第37項)

(1)

会社に準ずる事業体の取り扱いの維持

会社以外の法人(各種の特別法により法人格を有するものを含む)については、会社に準ずる事業体として、連結対象となり得るとする従来の取り扱いを維持する考えが示されています。

(2)

組合と信託の取り扱いの見直し

現行の取り扱いでは、組合は会社に準ずる事業体とされている一方、信託は、通常、会社に準ずる事業体に該当するとはいえないと解されていますが、経済的な機能が類似しているにもかかわらず、会計処理が異なる場合もあるため、整合するような見直し(図1)が提案されています。

【図1】 組合と信託の整合的な取り扱い案

個別財務諸表における取り扱い 原則 いわゆる総額法(①)
例外(*) いわゆる純額法(②)
連結財務諸表における取り扱い 個別で①の場合 連結対象とはしない
個別で②の場合 連結範囲の検討対象とする

(*) 組合や信託の財産を直接保有するものと見なすことが困難な場合や適当でない場合


4. 【論点3】特別目的会社の取り扱いについて(第38項~第69項))

支配力基準の下、SPCをどのように取り扱うのかについて、他の会計基準等との関係や国際的な会計基準における取り扱いおよびその動向を踏まえた (1)の①は、本論点整理の中心的な論点であり、他は派生する論点です。

(1)

子会社に該当しないものと推定する取り扱いを削除する場合

取り扱いを削除することの是非

一定の要件を満たしたSPCについて子会社に該当しないものと推定する現状の取り扱いは、図表2のような問題点や国際的な会計基準の動向も考慮して、取り扱いを見直し、本論点整理では、削除することが提案されています。

ただし、当該規定を削除した場合であっても、SPCおよびその類似の企業に対しても、従来の支配力基準の考え方を引き続き適用することが適当とされています。

【図表2】現状のSPCの取り扱いの問題点

SPCの資産および負債情報が適切に表示されない
  • 道義的な責任から負担する負債が計上されない。
  • シナジーを通じた間接的な便益やそれを生み出す資産が計上されない。
SPCとの取引が消去されない
  • 出資者等とSPCとの取引
  • SPC同士の取引
取り扱いに幅のある解釈が行われている
  • 開示対象目的会社の開示が実態と相違

流動化に関する会計基準等の見直し

上記取り扱いを削除した場合、SPCを利用した資産の流動化に関する金融商品会計基準および不動産流動化実務指針の規定を見直すとしても、資産の消滅の認識要件と連結の範囲の取り扱いは別のものであるとも考えられることから、個別財務諸表における売却処理は、当面の間、既存のままとすることが提案されています。

支配力基準の具体的な適用の懸念

上記取り扱いを削除した場合、緊密な者や同意している者の考え方が相当程度幅をもって適用されることなどにより、出資者等から独立していると判断するのが適当と考えられるものまでが子会社に該当するとされてしまう実務上の懸念が示されており、その対応が提案されています。

(2)

子会社に該当しないものと推定する取り扱いを維持する場合

現状の取り扱いにおいても、子会社に該当しないものと推定されたとしても、関連会社に該当することはあり得ますが、その判断には実務上、大きな幅があるとされます。

このため、上記の取り扱いを維持する場合であっても、関連会社に該当するかどうかについて、取り扱いを明確化する必要があることが提案されています。

5. 【論点4】特別目的会社に関する開示について(第70項~第81項)

現状では、一定の要件を満たした場合子会社に該当しないものと推定されたSPCについて、開示対象特別目的会社の概要や取引金額等の開示が行われます。

国際的な会計基準では、非連結の組成された企業等についても開示が議論されていることから、本論点整理では、非連結のSPCだけではなくそれに類似する企業についても、開示を拡充することが提案されています。


6. 【論点5】支配が一時的な子会社について(第82項~第92項)

(1)

国際的な会計基準との相違

支配が一時的な子会社については、わが国の会計基準と国際的な会計基準との取り扱いが、図表3のように異なります。国際的な会計基準では、通常、売却目的保有および廃止事業の定義を満たすものとされ、連結の範囲に含めて、資産、負債および損益を他の継続事業とは区分して表示する方法が採用されています。

わが国の取り扱いを現状のままとするか、国際的な会計基準と同様にするかに関しては、両者の取り扱いの相違を引き続き検討していくものとしているにとどめています。

【図表3】支配が一時的な子会社の連結上の取扱い

  連結範囲 測定 表示 注記
日本基準 含めない 帳簿価額 個別上子会社株式(資産)としてのみ表示 連結から除いている旨の注記
国際的な会計基準(*1) 含める 帳簿価額または公正価値(売却費用控除後)のいずれか低い金額 資産・負債および損益を継続事業と区分して表示 資産総額、負債総額、損益の内訳を注記

(*1) 売却目的保有および廃止事業の定義を満たす場合

(2)

連結の範囲に含める場合

仮に、国際的な会計基準と同様に連結の範囲に含める方法を採用する場合であっても、以下の点について、検討が必要としています。

測定の取り扱い

国際的な会計基準では、支配が一時的である子会社が売却目的保有の定義を満たす場合、その資産および負債は、帳簿価額または売却費用控除後の公正価値のいずれか低い金額で測定されます。本論点整理においても、連結範囲に含めるものとした場合であっても、同様な取り扱いとすることが提案されています。

表示および注記の取り扱い

IASBとFASBの財務諸表の表示に関する共同プロジェクトにおいて、取得時に売却目的保有の分類規準を満たす子会社については、廃止事業の定義に含まれるものの、資産総額および負債総額および廃止事業の損益に係る内訳に関する開示は免除されることが現在提案されていることから、本論点整理においても、同様の取り扱いが適当とされています。


本稿は「『連結財務諸表における特別目的会社の取扱い等に関する論点の整理』の公表」の概要および主な論点を記述したものであり、詳細については、以下の財務会計基準機構/企業会計基準委員会のウェブサイトをご参照ください。



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