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「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」および 「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用指針」のポイント

2009.01.23
新日本有限責任監査法人 会計監理レポート
井澤 依子
<企業会計基準委員会が平成20年11月28日に公表>

企業会計基準委員会は、会計基準の国際的なコンバージェンスの取り組みを進めるに当たり、不動産の時価開示等の必要性をはじめ、その定義・範囲の明確化および時価の算定方法等について審議を重ね、平成20年11月28日に、「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」(以下、本会計基準)および「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用指針」(以下、本適用指針)を公表しました。

本会計基準および本適用指針においては、金融商品の時価の注記対象を拡大したことを踏まえ、一定の不動産については、事実上、事業投資と考えられるものでも、その時価を開示することが投資情報として一定の意義があるという意見があること、さらに、国際財務報告基準(IFRS)ではIAS第40号「投資不動産」において、投資不動産は、時価評価と原価評価の選択適用とされていますが、原価評価の場合に時価を注記することとしていることとのコンバージェンスを図る観点から、賃貸等不動産に該当する場合には、時価の注記を行うこととしています。

公開草案から最終公表に至るまでの大幅な変更点はありません(変更部分について下線を引いています)。

なお、本稿において意見にわたる部分については、執筆者の私見であり、当法人の公式見解ではありません。


1. 適用時期(会計基準9項、33項、35項)

平成22年3月31日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用されます(四半期財務諸表に関しては翌事業年度からの適用、中間財務諸表に関しては、平成22年4月1日以後開始する事業年度の中間会計期間から適用することを原則としています)。

当該事業年度以前の事業年度の期首からの適用も認められています(例:平成21年1月1日以降開始する事業年度)。

新たに注記することとなる事項は、会計基準の変更に伴う会計方針の変更には当たりません。


2. 目的と適用範囲(会計基準1項、3項)

財務諸表の注記事項としての賃貸等不動産の時価等の開示について、その内容を定めることを目的としています。

賃貸等不動産を保有する企業に適用されます。

連結財務諸表において賃貸等不動産の時価等の開示を行っている場合には、個別財務諸表での開示を要しません。


3. 賃貸等不動産の定義・範囲
 
内容 会計基準 適用指針
「賃貸等不動産」とは、棚卸資産に分類されている不動産以外のものであって、賃貸収益又はキャピタル・ゲインの獲得を目的として保有されている不動産をいいます。
物品の製造や販売、サービスの提供、経営管理に使用されている場合は賃貸等不動産には含まれません。
4項(2)、
5項~7項、
19項~29項
2項~7項、
17項、
21項、
22項

賃貸等不動産には、次の不動産が含まれます。

(1) 貸借対照表において投資不動産として区分されている不動産
(2) 将来の使用が見込まれていない遊休不動産
(3) 上記以外で賃貸されている不動産

賃貸等不動産には、将来において賃貸等不動産として使用される予定で開発中の不動産や継続して賃貸等不動産として使用される予定で再開発中の不動産も含まれます。

物品の製造や販売、サービスの提供、経営管理に使用されている部分と賃貸等不動産として使用される部分で構成される不動産について、賃貸等不動産として使用される部分は賃貸等不動産に含めますが、その割合が低いと考えられる場合は、賃貸等不動産に含めないことができます。

また、賃貸等不動産部分の時価または損益を、実務上把握することが困難である場合には、不動産全体を注記の対象とすることができます。この場合には、一定の注記を他の賃貸等不動産とは別に記載します。

リース取引については、以下のように取り扱うこととなります。

(1) ファイナンス・リース取引に該当する不動産
  貸借対照表上、貸手において不動産ではなく金銭債権等として計上されるため、賃貸等不動産には該当せず、また、借手においては固定資産として取り扱われるため、一定の場合には賃貸等不動産に該当します。なお、リース取引開始日が改正されたリース会計基準の適用初年度開始前の所有権移転外ファイナンス・リース取引で、貸手において引き続き賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を適用している場合は、賃貸等不動産に該当することとなります。
(2) オペレーティング・リース取引に該当する不動産
  貸手において、賃貸等不動産に含まれます。