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「資産除去債務に関する会計基準」および「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」のポイント

2008.04.04
新日本監査法人 会計監理トピックス
<企業会計基準委員会が平成20年3月31日に公表>

企業会計基準委員会は平成20年3月31日に、「資産除去債務に関する会計基準」および「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」(以下、本会計基準等)を公表しました。

本会計基準等は、平成19年12月に公開草案として公表された後、寄せられたコメントなどの分析を経た上で公表されています。

なお、本稿において意見にわたる部分については、執筆者の私見であり、当法人の公式見解ではありません。

公開草案から最終公表に至るまでの大きな変更点は、次のとおりです。

  • 本会計基準等が対象とする有形固定資産に建設仮勘定、リース資産、投資不動産等を含む旨を記載しました(会計基準第23項)。
  • 適用初年度の期首に資産除去債務について引当金を計上していた場合の会計処理が明らかにされました(会計基準19項)。
  • 四半期財務諸表における注記内容の記載が追加されました(適用指針30項)。
1. 本会計基準等の概要と実務への影響

本会計基準等では、有形固定資産の除去に関する将来の負担を資産除去債務として財務諸表に反映する際の取り扱いを定めたものです。わが国ではこれまで行われてこなかった、資産除去債務を負債として計上するとともに、これに対応する除去費用を有形固定資産に計上する会計処理および開示について記載されています。

本会計基準等では理解を深めるために、賃借建物に係る原状回復費用の処理、合理的な見積もりができないため資産除去債務を計上しない場合の注記等の8つの設例を、適用指針に示しています。

なお、本会計基準の実際の適用に当たっては、インフレ率、見込値から乖離(かいり)するリスク、技術革新などによる影響額を反映するとされていること等、実際の見積もりを行う際には、実務上判断が分かれることが考えられます。

2. 適用時期(会計基準17項、適用指針14項)

平成22年4月1日以後開始する事業年度から適用されます。平成22年4月1日より前に開始する事業年度からの早期適用も認められています。

3. 資産除去債務の定義
内 容 会計基準 適用指針
有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいいます。 3項
23項~30項
  • 「有形固定資産」には建設仮勘定、リース資産、投資不動産を含みます。
  • 使用期間中に実施する環境修復、修繕は対象外です。
  • 除去には売却、廃棄、リサイクル等が含まれ、転用や用途変更は含まれません。
  • 有形固定資産自体の除去が義務付けられていなくても、当該有形固定資産に含まれる一定の有害物質を特定の方法で除去する義務がある場合における、有害物質の除去費用を含みます。
4. 資産除去債務の会計処理

(1)

資産除去債務の負債計上

内 容 会計基準 適用指針
有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用により発生した時に負債として計上します。
金額を合理的に見積ることができない場合には合理的に見積ることができるようになった時点で計上します。
4項~5項
31項~35項
2項
17項
  • 金額を合理的に見積もることができるようになった場合は、資産除去債務の見積もりの変更に準じて会計処理します

(2)

資産除去債務の算定

内 容 会計基準 適用指針
資産除去債務はそれが発生したときに、有形固定資産の除去に要する割引前の将来支出(キャッシュ・フロー)を見積り、割引後の金額(割引価値)で算定します。 6項
36項~40項
3項~5項
18項~23項
設例2
  • キャッシュ・フローには、有形固定資産の除去に直接要する支出だけでなく、処分に至るまでの支出(保管、管理のための支出等)も含まれます。
  • 割引率は、貨幣の時間的価値を反映した無リスクの税引前の利率とします。

(3)

資産除去債務に対応する除去費用の資産計上と費用配分

内 容 会計基準 適用指針
(資産計上)
資産除去債務に対応する除去費用は、資産除去債務を負債として計上した時に、当該負債の計上額と同額を、関連する有形固定資産の帳簿価額に加えます。
(費用配分)
  • 資産計上額を、減価償却を通じて残存耐用年数にわたり費用配分
  • 時の経過による調整額(利息費用)を発生時の費用として処理
7項~9項
41項~49項
6項~9項
24項~27項
設例1、3、4、6
  • 割引率を毎期見直すのではなく、負債計上時の割引率を用いることとされています。このように一定の利息相当額を時の経過によって配分する考え方は、関連する有形固定資産について減価償却という費用配分が行われることと整合します
  • 賃借建物等に係る有形固定資産(内部造作等)に係る原状回復費用については、敷金のうち回収が見込めない額の費用処理が認められています(設例6参照)。

(4)

資産除去債務の見積もりの変更

内 容 会計基準 適用指針
割引前の将来キャッシュ・フローに重要な見積りの変更が生じたことによる調整額は、資産除去債務及び関連する有形固定資産の帳簿価額に加減します。 10項~11項
50項~53項
設例5
  • 資産除去債務が法令の改正等により生じた場合も同様とします。
  • 調整額の割引率は、資産除去債務が増加する場合は見積もり修正時の割引率を、減少する場合は負債を計上した時の割引率を適用します。
5. 資産除去債務の開示
  内 容 会計基準 適用指針
貸借対照表 資産除去債務は資産除去債務等の適切な勘定科目で負債に表示
(流動固定区分はワンイヤールール)
12項
損益計算書 除去費用に係る費用配分額と時の経過による調整(*)
→減価償却費と同じ区分に計上
13項~14項
54項~55項
資産除去債務残高と支出額の差額
→除去費用の費用配分額と同区分(原則、営業費用)
15項
56項~58項
注記
  • 資産除去債務に関する開示
  • 金額を合理的に見積ることができない場合の開示
16項
59項~60項
10項~11項
設例7
キャッシュ・フロー計算書
  • 資産除去債務の履行に伴う支出額は「投資活動によるキャッシュ・フロー」
  • 重要な資産除去債務計上時には「重要な非資金取引」として注記
12項~13項
28項~29項
四半期財務諸表の注記
  • 資産除去債務が前年度末と比較して著しく変動している場合の注記
  • 会計基準の適用開始に伴う注記
30項
時の経過による資産除去債務の調整額は、実際の資金調達活動の費用でないこと、退職給付会計における利息費用が退職給付費用の一部とされていることを考慮し、財務費用(営業外費用)ではなく、減価償却費と同一の区分で処理することとしています。
6. 適用初年度の取り扱い(会計基準18項~20項、61項~63項、適用指針15項)
  • 会計基準の変更に伴う会計方針の変更として取り扱います。
  • 適用初年度の会計処理は次のとおりとします。
(1) 資産除去債務計上額 適用初年度の期首日時点で計算
(2) 既存資産の帳簿価額に含まれる除去費用 資産除去債務の発生時点で計算した金額(*)から、その後の減価償却額相当額を控除した額
(1)-(2) 原則として特別損失に計上

* 割引前将来キャッシュ・フローと割引率は適用初年度の期首と同一と見なします。

  • 適用初年度の期首に資産除去債務について引当金を計上している場合、引当金残高を資産除去債務の一部として引き継ぎます。

本稿は企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」の概要および主な論点を記述したものであり、詳細については、以下の財務会計基準機構/企業会計基準委員会のウェブサイトをご参照ください。



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