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改正企業会計基準第10号 「金融商品に関する会計基準」および 企業会計基準適用指針第19号 「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」

2008.03.26
新日本監査法人 会計品質管理部トピックス

平成20年3月10日に改正企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」(以下、改正基準等)が、企業会計基準委員会(ASBJ)から公表されました。本改正基準等は、金融取引をめぐる環境が変化する中で、金融商品の時価情報に対するニーズが拡大していることなどを踏まえて、金融商品についてその状況やその時価等に係る事項の開示の充実を図るために検討されたものです。

なお、本稿において意見にわたる部分については、執筆者の私見であり、当法人の公式見解ではありません。

1.適用時期と適用範囲(基準第41項(4)、適用指針第1項、第2項、第6項、第7項他)

  • 本改正基準等は、平成22年3月31日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用します。四半期財務諸表については、翌事業年度から適用します。3月決算の場合、平成22年3月期末の財務諸表から開示することになります。
(公開草案からの変更点)
平成19年7月に公表した公開草案では、原則として平成21年4月1日以後開始する事業年度から適用することとされていましたが、実務的な影響を考慮して、適用初年度は四半期での適用はしないものとされました。
  • ただし、当該事業年度以前の事業年度の期首から適用することができます。3月決算の場合、平成20年4月1日開始する事業年度の期首から適用することができるため、第1四半期から適用されることになります。
  • なお、注記が必要な金融商品に係るリスク管理体制のうち一部については、平成23年3月31日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用することができます。3月決算の場合、平成23年3月期末の財務諸表から開示することができます。
  • 本改正基準等は、原則として、金融商品会計基準等(本改正基準およびその実務指針・適用指針等を含む)が適用されるすべての金融商品について適用します。
2.新たな開示内容の概要

  • 定性的情報(取引に係るリスクの内容やリスク管理体制等の取引の状況)は、これまでデリバティブ取引について注記として開示されてきましたが、本改正基準等では、これを金融商品全般に拡大しています。
  • 定量的情報(時価やその差額等)は、これまで有価証券やデリバティブ取引の時価等の注記による開示が行われてきましたが、本改正基準等では、これを金融商品全般に拡大しています。
  • 重要性が乏しいものは注記を省略することができます。なお、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表において記載は要しません。
3.金融商品の状況に関する事項(定性的情報)の注記の概要

以下の事項を注記します(改正基準第40-2項(1),適用指針第3項他)。

①金融商品に対する取組方針
②金融商品の内容及びそのリスク
③金融商品に係るリスク管理体制
④金融商品の時価等に関する事項についての補足説明

金融資産と金融負債ごとの取組方針やリスクの種類等の具体的な項目に関しては、適用指針第3項等に記載されています。

<適用時期が遅れる注記事項>
③の記載において、特に、金融資産および金融負債の双方が総資産および総負債の大部分を占め事業目的に照らして重要であり、主要な市場リスクに係るリスク変数(金利や為替、株価等)の変動に対する金融資産等の感応度が重要な企業は、リスク管理上、市場リスクに関する定量的分析を利用しているか否かに応じて、次の事項を記載する。
(ⅰ)定量的分析に基づく情報およびこれに関する情報(同分析を利用している金融商品)
(ⅱ)リスク変数の変動を合理的な範囲で想定した場合における貸借対照表日の時価の増減額およびこれに関連する情報等
4.金融商品の時価等に関する事項(定量的情報)の注記の概要

原則として、金融商品に関する貸借対照表の科目ごとに、貸借対照表計上額、貸借対照表日における時価およびその差額ならびに当該時価の算定方法を注記します(適用指針第4項他)。

(1) 適用対象

  • 有価証券およびデリバティブ取引については、当該科目名称で貸借対照表上に掲記していない場合でも注記します(適用指針第4項)。
  • 貸借対照表に計上されていない場合であっても、金融商品会計に関する実務指針による当座貸越契約および貸出コミットメントの注記額および債務保証の注記額に重要性があれば、その時価および算定方法を注記することが適当とされています(適用指針第22項、第23項)。
  • リース会計基準によるリース債権、リース債務、リース投資資産のうちリース料債権に係る部分については、重要性が乏しいと認められる場合を除いて時価開示の対象とすること、および適用初年度前のリースに簡便的な方法を採用し、貸借対照表価額と時価とに重要な差額がある場合にはその旨を示すことが適当とされています(適用指針第24項、第25項)。

(2) 追加的な注記

以下の項目に関しては、基本的な時価等の開示に加えて、それぞれ追加的な注記が必要とされています(適用指針第4項)。

①有価証券

  • 流動資産項目と固定資産項目とを合算して注記することができます。
  • 個別財務諸表上の注記を行う場合、子会社株式と関連会社株式に区別します。
  • 有価証券としての上記の時価等の注記に加えて、売買目的有価証券、満期保有目的の債券等の保有目的ごとの区分に応じ、貸借対照表計上額、時価、取得原価、売却額および売却損益等を別途注記します(適用指針第26項~第31項)。

②デリバティブ

  • 資産項目と負債項目を合算して注記することができます。
  • デリバティブとしての上記の時価等の注記に加えて、取引の対象物の種類(通貨、金利、株式、債券および商品等)ごとに、ヘッジ会計が適用されているものおよび適用されていないものに区分し、契約額、時価および評価損益等を注記します。ただし、金利スワップの特例処理および為替予約等の振当処理については、ヘッジ対象と一体として時価注記することができます(適用指針第32項~第35項)。

③金銭債権および満期がある有価証券(売買目的有価証券を除く)

  • 償還予定額の合計額を一定の期間に区分した金額を注記します(適用指針第36項)。

④社債、長期借入金、リース債務およびその他の有利子負債

  • 返済予定額の合計額を一定の期間に区分した金額を注記します(適用指針第37項)。

⑤金銭債務

  • 約定金利に金利水準の変動のみを反映した利子率で割り引いた金銭債務の金額または無リスクの利子率で割り引いた金銭債務の金額のいずれかを開示することができます。ただし、算定方法および時価との差額の補足説明が必要です(適用指針第38項)。

(3) 時価

  • 本改正基準等では、時価は金融商品会計基準等に定める時価(市場価格、ない場合には合理的に算定された価額)に基づいて算定し、委託手数料等取引に付随して発生する費用は含めません(適用指針第4項、第21項)。
  • 時価を把握することが極めて困難と認められ、時価注記をしていない金融商品については、金融商品の概要、貸借対照表計上額およびその理由を注記します(改正基準第40-2項、適用指針第5項)。
5.例外的に取得原価または償却原価法を適用する有価証券の対象の限定

時価をもって貸借対照表価額とする有価証券であっても、これまでは市場性のない有価証券は、例外的に取得原価または償却原価法を貸借対照表価額としていましたが、上記の開示の実効性を高めるために、時価を算定することが極めて困難と認められるものに対象が限定されます(改正基準第19項、第81項、第81-2項)。

これを受けて、以下のように他の個所の表現も改正されます。

  • 市場価格のあるもの→時価を把握することが極めて困難と認められる金融商品以外のもの
  • 市場価格のないもの→時価を把握することが極めて困難と認められるもの
6.四半期財務諸表における取り扱い

四半期財務諸表においては、上記の注記がそのまま適用されず、四半期財務諸表に関する会計基準等に定められた注記(時価のある満期目的の債券やデリバティブ取引の時価等について著しい変動がある場合の注記)が踏襲されます。なお、同基準等は最小限の注記項目であるため、これを上回る開示は妨げられません(適用指針第40項)。

7.開示例

注記事項が拡大することとなるため、本適用指針には具体的な開示例(製造業、金融業)が添付されています。

8.関連する会計基準等の字句修正

これまで新たな会計基準等の公表に伴い、既存の会計基準等の関連部分において字句修正が必要となる場合には、個々の会計基準等を改正していましたが、本改正基準では一括して関連する会計基準等の字句修正を行う方法を採用しています(改正基準第121項)。

本稿は改正企業会計基準第10号および企業会計基準適用指針第19号の概要を記述したものであり、詳細については、以下の財務会計基準機構/企業会計基準委員会のウェブサイトをご参照ください。


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