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「研究開発費に関する論点の整理」

2008.01.21
新日本監査法人 会計品質管理部トピックス
企業会計基準委員会が平成19年12月27日に公表

企業会計基準委員会は、平成19年12月27日、「研究開発費に関する論点の整理」(以下、論点整理)を公表しました。わが国においては、平成11年3月期までは、開発費について資産計上が認められていましたが、現在は、研究開発活動と将来の収益との対応関係が不確実であるという米国会計基準の考え方を踏襲し、研究開発費はすべて発生時に費用として処理されています。しかし、国際財務報告基準においては、一定の開発費については資産計上するものとされています。

企業会計基準委員会は、国際財務報告基準を基本に据えた昨今の会計基準のコンバージェンスの流れの中、現行のわが国の無形資産の取り扱いについて再検討を行なっており、本論点整理によって、研究開発費に関する論点につき広く一般から意見を求めることとなりました。

開発費の資産計上が認められるか否かは、企業活動における研究開発の重要性が一層増大している昨今、今後の企業の行動にも大きく影響していくものと思われ、動向が注目されます。

本論点整理に関するコメントの募集期間は、平成20年2月4日までです。

なお、本稿において意見にわたる部分については、あくまで執筆者の私見であり、当法人の公式見解ではありません。

研究開発費の会計処理(各会計基準間の比較)
研究開発等会計基準
米国会計基準
研究開発費は、すべて発生時に費用として処理しなければならない
国際財務報告基準
  • 研究から生じた無形資産を認識してはならず、これに関する支出は、発生時に費用として認識しなければならない
  • 開発から生じた無形資産は、企業がIAS第38号に定めるすべての要件を立証できる場合に、これを資産として認識しなければならない
論点整理の概要、範囲

国際的な会計基準とのコンバージェンスの観点から特に重要な問題として認識されている項目は、社内の開発費の取り扱いおよび企業結合等により取得した仕掛研究開発の取り扱いです。

本論点整理においては、これらを検討する上で前提となる、研究および開発の定義から検討を行い【論点1】、その上で、わが国の会計基準と国際財務報告基準とで取り扱いが異なる社内での開発活動により発生した開発費の取り扱いを検討し【論点2】、さらに、企業結合等により取得した仕掛研究開発の会計処理【論点3】を取り上げています。また、社内での開発活動により発生した開発費や、企業結合等により取得した仕掛研究開発を資産として計上することとした場合に、資産に含めるべき費用の範囲や、資産として計上した後の会計処理等についても併せて検討を行っています。

本論点整理で取り扱う研究開発費の範囲は、「研究開発費等に係る会計基準」(企業会計審議会 平成10年3月13日)と同一であり、ソフトウェアに係る研究開発費が含まれます。繰延資産に該当する開発費については、これまでも研究開発費等会計基準の適用範囲外とされています。

主要論点

1. 【論点1】 本論点整理の対象となる研究および開発

(1)

研究の定義

研究の定義については、各会計基準間で表現方法に若干の相違はあるものの、「新しい知識の発見を目的とする計画的な調査」である点は共通しています。

(2)

開発の定義

開発の定義については、「研究成果又はその他の知識の具現化」、「新しい製品(サービス)及び生産方法についての計画・設計と、既存の製品(サービス)及び生産方法を大幅に改良するための計画・設計」であるという点で、各会計基準間でおおむね共通しています。

研究の定義および開発の定義の要素として、下記の国際的な会計基準の定義に記載されている要件を明示することによって、研究活動および開発活動の本質をより的確にとらえ、その範囲をより明確にすることができるか否かについてはさらに検討が必要であるとしています。

参考:研究費の定義の要件(わが国の基準との比較)
  研究 開発
国際財務報告基準 単なる新しい知識の発見ではなく、「科学的又は技術的な」知識である点を明示 「事業上の生産又は使用の開始前に行われる活動」である点を明示
米国会計基準 目的とする新しい知識の発見が、「新しい生産方法や技術の開発あるいは既存の製品等や生産方法等の著しい改良に役立つことが期待される」ことを要件として明示 開発とは、研究成果またはその他の知識を、その販売または利用を目的として、新しい製品等や生産方法等の計画または設計、あるいは既存の製品等や生産方法等の著しい改良の計画または設計に具体化することであり、日常的または定期的な変更は、その変更が改良に該当するとしても含まれない点を明示

2. 【論点2】 社内の開発費の取り扱い

【論点2‐1】 社内の開発費の当初認識時の会計処理

開発費を資産計上する処理については、資産計上する情報へのニーズ、開発費が収益を獲得する蓋然(がいぜん)性の有無、資産化の判断基準について明確な基準を定めることが可能か否か、さらに、費用対効果の考慮という観点を踏まえ、検討するものとしています。

検討事項の整理

  • わが国において、社内の開発費の資産計上の問題を検討するに当たっては、国際財務報告基準(IAS第38号)に定める要件を参考とすることが考えられます。それらが経営者の主観的な判断にどの程度依存するのか、その結果として財務情報の比較可能性の確保が可能かどうか、また、このような判断基準が資産計上すべき場合とそうでない場合を明確に区分するものとして適当かどうかについて、実務上の取り扱いも含め検討するものとしています。
  • 開発費を資産計上することとした場合、開発に関する支出の範囲について、製造間接費やその他の間接費の取り扱い等について検討をする必要があるとしています。

【論点2‐2】 一定の社内の開発費を資産計上した場合の認識後の会計処理

論点整理の基本的な考え

開発途上の段階の処理
償却を開始することは適当ではない
開発の失敗が見込まれることとなった場合には、その時点でそれまでに計上した資産を一時に償却することが適当。減損会計を行うに当たって定める資産のグルーピングの方針によっては、減損の会計処理が適用される場合もある。

開発終了後の処理
研究開発活動から得られた成果について自社の生産過程等で利用する場合
生産過程等でその成果の利用を開始したと判断された時点から、一定の方法でその耐用年数にわたり償却。減損の会計処理の要否についても、他の固定資産と同様に判断。
開発活動の成果そのものを市場で売却する場合
売却されるまでの間は特に償却を行わず、その売却時に、計上した開発費の総額を収益に対応する費用とする。

検討事項の整理

  • 開発活動の成果を自社の生産過程等で利用する場合の会計処理として、資産計上した開発費の償却方法についての検討が必要になるとされています。
  • 国際財務報告基準においては、耐用年数を確定できない無形資産の取り扱いが定められていますが、社内の開発に関する支出を資産計上した場合、最善の見積もりを行ってもなお耐用年数を確定できないとして、資産計上した開発費を償却すべきでない場合が存在するのか、もし存在するとすればどのような場合がこれに該当するのかなどについて検討が必要になるとしています。