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平成29年3月期

決算特集!

最終更新日: 2017.04.04
新日本有限責任監査法人 公認会計士 内川裕介

平成29年3月期は、多くの会社で「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」の原則適用や平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関して影響を検討する必要があると考えられます。また、長期国債利回りがマイナスとなっており、退職給付債務の計算にあたって採用すべき割引率等に留意する必要があります。

企業会計ナビから、決算に向けてチェックしておきたい記事を特集します!

1. 決算留意事項をひととおりチェック!

2. 繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針

「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」が平成29年3月期期首から原則適用となっています。
基本的には今まで実務上の判断基準としていた監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(上記適用指針の公表に伴い廃止)の考え方を踏襲していますが、企業分類を行うにあたり過去の実績を重視していた点を見直し、より企業の実態に沿った結果となるような見直しが行われています。
具体的には、(1)分類2におけるスケジューリング不能差異、(2)分類3における5年を超える見積可能期間、(3)分類4における重要な税務上の欠損金が特別な要因に基づく場合に分類2もしくは分類3と取り扱うことについて、合理的な根拠を持って説明する場合には回収可能性があると認められるケースがあるとされました。また、注記について、上記(1)から(3)に該当する場合(ただし(3)において分類4から分類3とする場合を除く)には「会計基準の改正に伴う会計方針の変更」に該当する点に留意する必要があります。一方で上記(1)から(3)以外の項目に影響がある場合には、追加情報として「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」を適用している旨を記載することが考えられます。

3. 平成28年度税制改正に係る減価償却費方法の変更に関する実務上の取扱い

平成28年度の税制改正により、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備及び構築物について、法人税法上、定率法が廃止され、定額法のみとなりました。 これまで建物附属設備又は構築物について定率法で償却しており、当該法人税法の改正に伴って平成28年4月1日以後取得する建物附属設備、構築物又はその両方のすべての資産について会計上の減価償却方法を定額法から定率法へ変更する場合には、「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」として取り扱うものとされました。
この場合、注記に会計方針の変更の内容として、①法人税法の改正に伴い、本実務対応報告を適用し平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備又は構築物もしくはその両方に係る減価償却方法を定率法から定額法に変更している旨、②会計方針の変更による当期への影響額を記載することになる点に留意が必要です。

4. 退職給付会計関連

(1) 「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い(案)」

日本銀行のマイナス金利政策により、長期の国債等についてマイナスの利回りとなっている状況が続いています。
そこで、「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い」(実務対応報告第34号)が平成29年3月29日に公表されました。本実務対応報告では、退職給付債務等の計算において割引率に長期国債の利回りを使用しており、期末時点で割引率がマイナスとなってしまう場合には、①利回りの下限としてゼロを利用する方法、又は②マイナスの利回りをそのまま利用する方法のいずれかを採用することができるとされています。
本実務対応報告は、平成29年3月31日に終了する事業年度から平成30年3月30日に終了する事業年度に限って適用することとされています。

(2) リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い」

新たな確定給付企業年金の仕組みとしてリスク分担型企業年金が導入され、それを受けて「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い」が公表されました。企業の拠出義務が、制度導入時の規約に定められている拠出額に限定されるか否かで、確定拠出制度に該当するか又は確定給付制度に該当するかを分類し、会計処理を定めています。
当該取扱いは、平成29年1月1日以後からの適用となっています。

5. 税制改正

平成28年度税制改正により、法人税率の引き下げや繰越欠損金の控除等が変更となっており、これらが平成29年3月期の決算に与える影響に留意が必要です。
また、平成29年度の税制改正では、研究開発税制の見直しや役員給与税制の整備等が行われています。

(1) 平成29年度税制改正大綱
(2) 平成28年度税制改正

6. 開示関係

企業内容等の開示に関する内閣府令等の改正が公布され、有価証券報告書の「事業の状況」における「対処すべき課題」が「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に変更されました。経営方針・経営戦略等の内容を記載することや、経営上の目標の達成状況を判断する場合に客観的な指標等がある場合にはその内容を記載することが追加されています。
また、決算短信の様式のうちサマリー情報について、その使用義務が撤廃されました。

7. その他

(1) 「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」

「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」が公表され、公表日以後の適用となっています。「諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取扱い」、「税効果会計に関するQ&A」等における税金の会計処理及び開示に関する部分について、基本的にその内容を踏襲した上で表現の見直しや考え方の整理等を行っており、実質的な内容の変更は意図されていません。

(2) 「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」等の改正

「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」(改正実務対応報告第18号)及び「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」(改正実務対応報告第24号)が平成29年3月29日に公表され、平成29年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用されます。ただし、公表日以後、適用することもできます。
具体的には、国内子会社等が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠して連結財務諸表を作成しており、それを有価証券報告書において開示している場合、一定の修正項目を除き、当該国内子会社等が作成した連結財務諸表を、親会社の作成する連結財務諸表作成にあたって利用することができるものとされています。

(3) 「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)」が公表されています。今後の適用時期に留意してください。
(4) 会社法改正

会社法が改正され、平成27年5月1日から施行となっています。適用2年目となりますが、再度内容を確認しておきましょう。

(5) 平成28年3月期の有価証券報告書の開示事例分析

平成29年3月期の有価証券報告書作成にあたり、前期の有価証券報告書の開示例を参考として確認しておきましょう。

【解説シリーズ】平成28年3月期 有報開示事例分析

(6) 会計基準等の適用時期

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