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平成31年3月期

決算特集!

最終更新日: 2019.04.03
EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 河村 正一

平成31年3月期決算においては、多くの会社に影響を及ぼすと考えられる「税効果会計に係る会計基準」の一部改正等が期首から適用されています。その他、有償ストック・オプションの会計処理や開示を定めた「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」や仮想通貨の会計処理を示した「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」の会計基準が原則適用、有価証券報告書の記載に関連する「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正等があります。

企業会計ナビから、決算に向けてチェックしておきたい記事を特集します。

平成31年3月期に適用される主な新会計基準等や改正等

原則適用
  • 「税効果会計に係る会計基準」の一部改正等
  • 「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」等(有償ストック・オプション)
  • 「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」
  • 内閣府令第3号「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」の一部改正
早期適用可能
  • 「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」等
  • 「収益認識に関する会計基準」等

1. 決算留意事項をひととおりチェック!

2. 税効果会計に係る会計基準の一部改正等

税効果会計について、以下の基準の改正等が平成30年2月16日に公表され、平成30年4月1日以後開始する年度の期首から原則適用されており、一部の会計処理、表示の見直しや注記事項の拡充などの影響があります。

  • 「税効果会計に係る会計基準」(企業会計基準第28号)の改正
  • 「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第28号)
  • 「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26号)

特に、年度末から対象となる繰延税金資産の発生原因別の主な内訳注記については、税務上の繰越欠損金の額が重要である場合には、評価性引当額の合計額を税務上の繰越欠損金と将来減算一時差異等に区分して記載することや税務上の繰越欠損金に関する繰越期限別の数値情報を記載するなど、新たな注記情報の収集といった実務的な影響が大きいと考えられます。

3. 有償ストック・オプション

有償ストック・オプションの会計処理について、以下の実務対応報告等が公表され、平成30年4月1日以後適用されています。

  • 「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」(実務対応報告第36号)
  • 「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理」(企業会計基準適用指針第17号)

本実務対応報告は、企業が従業員等に対して権利確定条件付き新株予約権を付与し、当該新株予約権の付与に伴ってその従業員等が金銭を払い込む場合(いわゆる有償ストック・オプション)の会計処理や開示を明らかにしており、従来、複合金融商品適用指針に従った会計処理を行っていた場合には、ストック・オプションの付与に伴い企業が従業員から取得するサービスを費用処理するなどの影響があると考えられます。

4. 仮想通貨の会計処理

資金決済法の改正により仮想通貨が定義され、仮想通貨交換業者に対して登録制が導入されています。これを受けて仮想通貨の会計処理について、以下の実務対応報告が平成30年3月14日に公表され、平成30年4月1日以後開始する年度の期首から適用されています。

  • 「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」(実務対応報告第38号)

保有する仮想通貨の期末における評価、売却損益の認識、表示方法及び必要となる注記事項等、仮想通貨に関する一連の会計処理及び開示の取り扱いが示されています。

5. 連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い【早期適用可】

在外子会社等が国際財務報告基準(IFRS)により財務諸表を作成している場合の修正項目に「資本性金融商品の公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する選択をしている場合の組替調整に関する取扱い」(IFRS第9号 金融商品)を追加する以下の実務対応報告の改正が公表されています。平成31年4月1日以後適用されますが、公表日である平成30年9月14日以後最初に終了する連結会計年度及び四半期連結会計期間からの早期適用も可能です。

  • 「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第18号)
  • 「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第24号)

なお、在外子会社等の財務諸表が適用している国際財務報告基準(IFRS)や米国会計基準の改訂が行われ、修正項目に該当しない場合には、連結財務諸表においても会計方針の変更として取り扱われ、重要性に応じて会計方針の変更の注記の要否を検討する必要があります。また、国際財務報告基準(IFRS)や米国会計基準において公表済で未適用の会計基準等がある場合にも、その重要性を踏まえて注記の要否を検討する必要があります。

6. 収益認識に関する会計基準【早期適用可】

企業会計基準委員会より平成30年3月30日に収益認識に関する会計基準等が公表されました。原則適用は平成33年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からとなっていますが、平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からの早期適用が可能です。早期適用を採用しない場合には、平成31年3月期決算には影響はありませんが、重要な影響を与える可能性のある会計基準等であり、影響度の調査などの早期の準備が必要と考えます。

  • 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)
  • 「収益認識に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第30号)

7. 開示関連

(1) 「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正

平成31年1月31日に、内閣府令第3号「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」が公布されました。平成30年6月に公表された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告における、「財務情報及び記述情報の充実」、「建設的な対話の促進に向けた情報の提供」、「情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組」に向けた適切な制度整備を行うべきとの提言を踏まえ、有価証券報告書等の記載事項が改正されました。改正された有価証券報告書の記載項目のうち、【コーポレート・ガバナンスの状況等】の以下の項目については平成31年3月31日以後終了する年度から適用されます。

  • 役員の報酬等(業績連動報酬)
  • 株式の保有状況(政策保有株式)
  • 会計監査の状況(監査人の選定理由・評価)
  • 監査報酬の内容等(監査人と同一のネットワークベースの報酬、監査報酬の同意理由)

(2) 有価証券報告書と事業報告等の「一体的開示」

有価証券報告書と事業報告等の記載の一体的開示について、公益財団法人財務会計基準機構(FASF)から平成29年12月28日に「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について」、また、金融庁等から一体的開示の記載例として、平成30年12月28日に「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組の支援について」が公表されています。

(3) 有価証券報告書レビュー

金融庁は、有価証券報告書の記載内容の適切性を確保するために「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」の改正内容や重点テーマを対象とした有価証券報告書レビューを実施しています。平成31年3月19日に、金融庁から平成31年3月期以降の事業年度に係る有価証券報告書の作成・提出に留意すべき事項が公表されております。今回(平成31年3月期以降)の重点テーマは、以下のとおりです。

〔重点テーマ〕

  • 関連当事者に関する開示
  • ストック・オプション等に関する会計処理及び開示
  • 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する会計処理及び開示

(4) 記述情報の開示

金融庁は、平成31年3月19日付で「記述情報の開示に関する原則」及び「記述情報の開示の好事例集」を公表しています。これらは、平成30年6月に公表された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」の提言を踏まえ、財務情報以外の開示情報である「記述情報」について、開示の考え方、望ましい開示の内容や取り組み方をまとめ、開示の充実を図ることを目的としています。

8. 税制改正

平成31年3月期決算に影響を与える税制改正として、賃上げ・生産性向上のための税制(旧所得拡大促進税制)の改正、大企業(中小企業者等以外)の研究開発税制等の税額控除の適用制限、平成28年度の税制改正による法人税率の引き下げ等があります。その他、収益認識に関する会計基準等の導入に伴う改正も、平成30年4月1日以後に終了する事業年度から適用になります。

9. その他

(1) インセンティブ報酬の会計処理の研究報告(公開草案)

会計制度委員会研究報告「インセンティブ報酬の会計処理に関する研究報告」(公開草案)が平成30年12月14日付で公表されました。インセンティブ報酬の会計上の取扱いに関する現時点における考え方を取りまとめたものであり、会計上の論点と会社法の関係、インセンティブ報酬に関する会計上の論点、スキーム別の会計処理上の論点等について考察がされています。公表された場合は、研究報告の取扱いを斟酌(しんしゃく)することが考えられ、留意が必要です。

(2) 企業結合に関する会計基準等の改正

条件付取得対価に関連して対価の一部が返還される場合の取扱いを定めることと、「事業分離等に関する会計基準」(企業会計基準第7号)及び「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第10号)の記載内容の相違について、対応を図ることを目的として、これらの会計基準及び適用指針の改正が平成31年1月16日に公表され、平成31年4月1日以後開始する事業年度の期首以後実施される組織再編から適用されます。平成31年3月期の決算には影響しないものの、来期の期首からの適用となるため、影響が想定される場合には早期に対応が必要と考えます。

(3) 偶発事象の取扱いに関する研究報告(公開草案)

平成30年12月14日付で会計制度委員会研究報告「偶発事象の会計処理及び開示に関する研究報告」(公開草案)が公表されています。本公開草案は、偶発事象の会計上の取扱いに関する現時点における考え方を取りまとめたものであり、公表された場合は、研究報告の取扱いを斟酌することが考えられます。

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