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平成30年3月期

決算特集!

最終更新日: 2018.04.20
新日本有限責任監査法人
公認会計士 内川 裕介

平成30年3月期は、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」が適用2年目となっている他、「税効果会計に係る会計基準の一部改正」の表示及び注記に関する部分が早期適用可能となっています。

その他、多くの会社に重要な影響を与える会計基準の原則適用はありませんが、「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い等」の原則適用や、「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正等があります。

企業会計ナビから、決算に向けてチェックしておきたい記事を特集します。

平成30年3月期に適用される主な新会計基準等

原則適用
  • 「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」等
  • 「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」
  • 「マイナス金利適用時期取扱い」(3月13日公表されました)
  • 「企業内容等の開示に関する内閣府令」等
早期適用可能
  • 「税効果会計に係る会計基準の一部改正」の表示及び注記に関する部分
  • 「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」等
  • 「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」(3月14日公表されました)

1. 決算留意事項をひととおりチェック!

【会計情報トピックス】

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(4月20日更新)

2. 税効果会計

(1) 税効果会計に係る会計基準の一部改正

「税効果会計に係る会計基準の一部改正」(企業会計基準第28号)が平成30年2月16日に公表され、平成30年4月1日以後開始する年度の期首からの原則適用となっています。主に表示及び注記事項の改正を中心としつつ、一部の会計処理の見直しも行われています。平成30年3月期では、表示及び注記に関する事項のみ、早期適用が可能となっています。

具体的には、繰延税金資産及び繰延税金負債の表示は、すべて固定項目の分類となり、繰延税金資産は投資その他の資産、繰延税金負債は固定負債に分類されることになります。

また、繰延税金資産に関する注記については、発生原因別の注記として税務上の繰越欠損金を記載しており、その税務上の繰越欠損金が重要である場合に、①評価性引当額の内訳、及び②税務上の繰越欠損金に関する情報に関する記載が拡充されます。①評価性引当額の内訳については、税務上の繰越欠損金と将来減算一時差異等とを分けて記載することになり、②税務上の繰越欠損金に関する情報については、繰越期限別に税務上の繰越欠損金の金額を記載することになります。

(2) 繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針正

「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26号)が、平成28年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から原則適用となっており、適用2年目となっています。再度内容を確認しておきましょう。

3. マイナス金利適用時期取扱い(案)

長期の国債等の利回りがマイナスとなっている状況が続いていることに鑑み、「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い」(実務対応報告第34号)が公表され、平成29年3月31日に終了する事業年度から適用されています。具体的には、退職給付債務等の計算における割引率に長期国債の利回りを使用しており、期末時点で割引率がマイナスとなってしまう場合に、①利回りの下限としてゼロを利用する方法、又は②マイナスの利回りをそのまま利用する方法のいずれかを採用することができるとされています。

本実務対応報告は、平成29年3月31日に終了する事業年度から平成30年3月30日に終了する事業年度に限って適用することとされていましたが、「実務対応報告第34号の適用時期に関する当面の取扱い(案)」(実務対応報告公開草案第54号)により、当該取扱いを変更する必要がないと企業会計基準委員会が認める当面の間まで、引き続き本実務対応報告を適用することが提案されています。

(3月23日更新)
「実務対応報告第34号の適用時期に関する当面の取扱い」(実務対応報告第37号)が平成30年3月13日に公表されました。公表日以後適用となっています。公開草案の内容から変更はありません。

4. 連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い等

「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」(改正実務対応報告第18号)及び「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」(改正実務対応報告第24号)が、平成29年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から原則適用となっています。

具体的には、国内子会社等が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠して連結財務諸表を作成しており、それを有価証券報告書において開示している場合、一定の修正項目を除き、当該国内子会社等が作成した連結財務諸表を、親会社の作成する連結財務諸表作成にあたって利用することができるものとされています。

5. 開示関連

有価証券報告書と事業報告書等の開示内容の共通化や有価証券報告書の開示の合理化等を目的として「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正が公布されました。有価証券報告書に関する改正は公表日から施行され、平成30年3月31日以後に終了する事業年度の有価証券報告書から適用となります。

主な改正点として、①有価証券報告書の「大株主の状況」における株式所有割合の算定の基礎となる発行済株式について自己株式を控除することに変更、②「新株予約権等の状況」、「ライツプランの内容」及び「ストック・オプション制度の内容」の項目を「新株予約権等の状況」へ統合、③「大株主の状況」の記載時点を事業年度末から原則として議決権行使基準日に変更、④財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析の記載の整理及び充実等があります。

また、事業報告書における株主に関する事項についても、議決権行使日基準とすることができる旨、追加されることが予定されています。

(4月20日更新)
3月26日に「税効果会計に係る会計基準の一部改正」の表示の改正に対応するために会社計算規則の改正、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正に対応するために会社法施行規則の改正が行われています。

また3月30日に公益財団法人 財務会計基準機構は、「有価証券報告書の開示に関する事項-『一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について』を踏まえた取組-」を公表し、有価証券報告書と事業報告等の記載の共通化を図る上でのポイントや記載事例を示しています。

6. 税制改正

平成30年3月期決算に影響を与える税制改正として、研究開発費税制の改正、取得拡大促進税制の拡充、欠損金の控除限度額の見直し等があります。

その他、米国において税制改正が平成29年12月22日に成立し、連邦法人税率の引下げや繰越欠損金の使用制限等が設けられています。米国に子会社等がある場合には税効果会計に影響がありますので、留意が必要となります。

7. その他

(1) 公共施設等運営事業(PFI事業)における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い

「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第35号)が、平成29年5月31日以後に終了する事業年度から適用となっています。

(2) 有償ストック・オプション

企業が従業員等に対して権利確定条件付き新株予約権を付与し、当該新株予約権の付与に伴ってその従業員等が金銭を払い込む場合(いわゆる有償ストック・オプション)の会計処理や開示を明らかにするため、以下の実務対応報告等が公表されています。平成30年4月1日以後適用されますが、公表日である平成30年1月12日以後からの早期適用も可能です。

  • 「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」(実務対応報告第36号)
  • 「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理」(改正企業会計基準適用指針第17号)

(3) 仮想通貨の会計処理等

資金決済法の改正により仮想通貨が定義され、仮想通貨交換業者に対して登録制が導入されています。これを受けて「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」(実務対応報告公開草案第53号)が平成29年12月5日に公表されました。

活発な市場が存在する仮想通貨については、貸借対照表価額を市場価格に基づく価額、帳簿価額との差額は当期の損益として計上することが提案されています。

(3月23日更新)
「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」(実務対応報告第38号)が平成30年3月14日に公表されました。平成30年4月1日以後開始する事業年度の期首から原則適用とし、公表日以後終了する事業年度及び四半期会計期間から早期適用することができるとされています。

(4) 収益認識に関する会計基準

「収益認識に関する会計基準(案)」(企業会計基準公開草案第61号)及び「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」(企業会計基準適用指針公開草案第61号)が平成29年7月20日に公表されています。

収益認識に関する包括的な会計基準を定めることを目的として、IFRS第15号の基本的な原則をベースに、我が国の実務等を考慮した会計処理が提案されています。

当該会計基準(案)は、平成30年3月期決算に影響のある会計基準ではありません。ただし、今後の会計処理へ重要な影響を与える可能性のある会計基準ですので、適用時期等に留意が必要です。

(4月20日更新)
「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」が平成30年3月30日に公表されました。

平成33年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から原則適用となっています。また、早期適用も可能となっていますので、早期適用を検討している場合には適用時期を確認しておきましょう。