旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』 ー 第14回 強い思いを強く伝え、実践すること

城宝 薫
(株)テーブルクロス 代表取締役

Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2018年5月1日号に掲載された記事をご紹介します。

起業する前は「どうせ失敗する」、「リスクが高い」など。また、起業した後でも「学生に融資した経験がないんだけど」、「本当に卒業しても事業を続けるの?」など。立教大学在学中に起業したという経験以外、目立った経歴があるわけではない私ですが、それでも会社を設立して今に至るのは、ひとえに社会課題解決への強い思いと、何事も粘り強くやってみるという行動力があったからではないでしょうか。

今のビジネスを始めるにあたってのきっかけを遡ると、それは小学生の頃。インドネシアに行った際にストリートチルドレンを目の当たりにして、同じ年代の子どもたちが食べるために働かなければならない現状に衝撃を受けました。私自身が食べるために困ったということがないなか、同世代の友人たちの状況を知ったことで、「自分にできることを何かしなければならない」という気持ちになり、それ以来、寄付やボランティアなどの活動を積極的に行いました。

その後、高校生のときにアメリカに留学する機会があり、その際に障害者支援団体の活動に参加したのですが、そこでは支援組織としてきちんと収益を上げながら、継続的に取り組んでいくというしくみができあがっていました。何か違和感を覚えたのと同時に、活動していたメンバーから「課題は短期では解決できず、解決できないと気づいたときに、誰かが解決するためのしくみを作らなければならない」という言葉をもらいました。

途上国の子どもたちの支援はやはり単発では解決できない継続的なものです。そのため、「利益をきちんと出しながら組織として継続的に支援できるしくみをつくる」ことが重要です。現在、会社の顧客である飲食業界への貢献と途上国の子どもたちの支援を可能にし続けているのは、根本的に課題解決をしたいという強い思いと、そのしくみづくりを会社として実践しているからこそかもしれません。

実際には思いだけでは足りず、実践するには何事もやらないよりやってみようという粘り強さが欠かせません。経営に必要なものは「ヒト」、「モノ」、「カネ」、「情報」といわれますが、全部がないなか起業してしまったため、オフィスを持つことや銀行口座を開設すること、融資を受けることなどひと苦労・・・。しかし、誰かが「日本の飲食業界への貢献と途上国の子どもたち支援」というサービスをやらなければならないという意気込みを何度も伝えました。その結果、周囲の方々に応えていただけたと考えています。

まだまだ経験して勉強することも多いですが、私が常に意識しているのは「やらないで後悔するよりはやって後悔するほうがよい」ということです。人生は長いし、まず悩んだら行動してみたらどうですか。やってみたら、案外世のなかに受け入れられたり、逆にアイデアはよいけど時代に合わないものだったりということもあるかもしれません。まずは自分の思いを胸に、できることはチャレンジすることをお勧めします。

(「旬刊経理情報」2018年5月1日号より)

城宝 薫

城宝 薫(じょうほう・かおる)
(株)テーブルクロス 代表取締役
立教大学経済学部卒業。大学時代に「学生団体Volante(ボランチ)」を創設し代表として活動。2014年、(株)テーブルクロスを設立し、代表取締役社長に就任。飲食店を予約すると人数分の給食を途上国の子どもたちに届けることができる社会貢献型グルメアプリ「テーブルクロス」を制作し、2015年3月正式にリリースした。47都道府県を対象に加盟店を集め、支援先として国際飢饉対策機構はじめ9のMPO法人と提携している。