これだけは知っておきたい!税務入門

第8回 役員報酬に関する法人税の取扱い(各論)

2015.11.18
公認会計士 入交 佐和子

人件費は会社経営では最も必要不可欠な費用であり、会社で発生する費用の大きな部分を占めます。人件費の税法上の処理を知ることは、税金を納める上でとても大切なことです。

なぜ役員の給与が税法上、問題になるの?

会社が支払う給与は、役員と従業員に対するものに分けられます。
税法上、従業員に対するものは、原則、全額が損金に算入できますが、役員に対するものは仕事の対価として相当な額を超える分は損金に算入できません。
その理由は、役員は会社の利益処分について方針を決められる立場にあり、自らの報酬額を過大に決定することで租税回避を図るおそれがあるためです。

給与に関する
税法上の取扱い
役員 従業員
仕事の対価として相当な額を超える分は損金算入できない 原則、全額を損金算入できる

税法上の役員の範囲は?

税法上は、役員の肩書がなくても、その実態が役員と同等である場合には、税法上の役員に含められます。

税法上の役員の範囲
形式上の役員 実質上の役員 同族会社の場合
取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人 従業員以外の者で、経営に従事している者。例えば、取締役または理事となっていない総裁、副総裁、会長、副会長、理事長、副理事長、組合長。 同族会社の従業員のうち、特定の者。例えば、同族関係者のうち、持株割合が一定割合以上で経営に従事している従業員(例えば、オーナー社長の妻は役員と見なされる可能性が高い)。

役員のうち、従業員としての職務にも従事している者はどうなるの?

「取締役総務部長」や「取締役営業部長」等といった肩書を持つ取締役も多くいらっしゃいますが、このように従業員としての職務に従事する役員のことを「使用人兼務役員」といいます。
この「使用人兼務役員」は、給与の扱いが一部、役員と異なる点があります。
具体的には、従業員分については、原則として損金の額に算入できます。したがって、役員分と従業員分の明確な区分が必要となります。
なお、役員のうち、代表取締役、代表執行役、副社長、専務、常務その他これらに準ずる地位を有する者等は「使用人兼務役員」とは見られません。なぜなら、これらの者は会社の代表であることが明らかなためです。
また、監査役は無条件で「使用人兼務役員」にはなれません。

役員に対する給与としては税法上、何が損金として認められるの?

法人が役員に対して支給する給与の額のうち「定期同額給与」「事前確定届出給与」「利益連動給与」に該当する金額については損金算入ができます。

役員給与で損金算入できるもの
定期同額給与 事前確定届出給与 利益連動給与
支給時期が一か月以内の期間で、かつ事業年度内の支給額が毎回同額であるもの 所定の届け出期限までに、所轄の税務署長にその定めの内容に関する届け出をしているもの その算定方法が客観的なもので、いくつかの要件を満たすものであるもの

ただし、これらのいずれかに該当するものであっても、不相当に高額な部分は、損金に算入されません。
不相当に高額な部分の基準には、実質基準と形式基準があり、どちらで判断しても不相当に高額な部分が生じた場合、どちらか多い方が損金に算入されません。
形式基準とは、会社の定款や株主総会での決議事項と比較して判断することをいいます。総会で決めた額を超える場合には、その部分は不相当と判断されます。
一方、実質基準とは、役員の職務内容、会社の財政状況、従業員の給与、同業類似の他社の役員給与等と比較して判断することをいいます。

役員に対する賞与と退職金は税法上、どうなるの?

役員に対する賞与は、役員に対する給与と異なり、その支払いが臨時的であり、損金算入できません。ただし、上述の事前確定届出給与として、所定の期限までに税務署に「誰に、いつ、いくら」臨時の報酬を支払うと届出を行えば損金算入できます。
また、役員への退職金については、規定で定めていれば原則として損金算入できます。ただし、役員としての在任期間、退職の事情、同業類似の他社での役員退職給与の支給状況、その他の状況を総合的に勘案して妥当と認められる金額であることが必要です。