これだけは知っておきたい!税務入門 

第3回 住民税と事業税の税額計算のしくみ

2015.06.08
中川 真紀子
戦略マーケッツ事業部 企業成長サポートセンター
パートナー 公認会計士 中川 真紀子

住民税とはどんな税金?

都道府県や市区町村などの地方公共団体は、国とは別に独自に行政サービスを行っています。その費用を、その地域の住民や会社が負担するのが住民税です。会社が所得に応じて国に納めるのが「法人税」だとすれば、所得に応じて地方公共団体に納めるのが「住民税」です。

住民税の税額計算のしくみ

先ずは住民税についてご説明します。
住民税は、「均等割」と「法人税割」の2つの要素で構成されています。

住民税額 均等割 + 法人税割

「均等割」は、資本金額と従業員の人数により細かく決まっており、各都道府県及び市町村のホームページで公表されています。つまり、均等割は会社の利益(所得)に関係なく赤字の会社でも定額で納めなければなりません。

一方、「法人税割」は、法人税額をベースに計算します。前回、法人税の税額計算のしくみについてご説明しましたが、法人税額が計算されると、自動的に、住民税の法人税割も計算できるイメージです。

均等割の金額と法人税割の税率をまとめると、下表のようになります。

(下の図をクリックすると拡大します)

住民税を計算してみよう

では、具体的な計算例をみてみましょう。
第2回の法人税の計算例<ケースⅰ>会社の資本金額が5000万円でのケースで考えてみます。

住民税の計算例

第2回の計算例で使用した<ケースⅰ>と同様、資本金額5000万円の会社(従業員30名とする)

(下の図をクリックすると拡大します)

まず、①の均等割ですが、資本金額が5000万円の会社は、各都道府県や市町村のHPで公表している均等割表の「資本金額1億円以下1000万円超」かつ「従業員50名以下」の欄を見ます。東京都の場合は18万円です。

次に、②の法人税割ですが、第2回の<ケースⅰ>において、計算されている法人税額は681万円ですので、この金額に都道府県民税、市町村民税それぞれの税率を掛けます。計算した結果117万円となります。

住民税の税額は、この①と②を足した合計の135万円(=18万円+117万円)ということになります。

事業税とはどんな税金?

次に事業税について説明します。会社が事業を行う際には、都道府県の消防・警察・道路・港湾といった行政サービスや、公共施設を利用します。事業税は、会社にこれらのサービスの利用料を負担する税金です。なお、事業税は、都道府県に納める税金であって、市町村には納めません。

事業税の税額計算のしくみ

事業税の計算のしくみは、法人税や住民税と比べると少し複雑なので、全体像だけ簡単にご説明します。

事業税は、①事業税額と②地方法人特別税額の2つで構成されています。①の事業税額は、「所得割」と「付加価値割」と「資本割」の3つで構成されています。また、②の地方法人特別税額は、「所得割」×税率で計算されます。

事業税 ① 事業税額 + ② 地方法人特別税
    ↓  
① 事業税額 所得割 ( + 付加価値割 + 資本割 )
② 地方法人特別税額 所得割 × 税率
(注)② の税率は、資本金額1億円以下の会社は81%、資本金1億円超の会社は148%になります。

なお、「所得割」の計算は、法人税の税額計算と同様に、『会社の儲け(1事業年度の所得金額)×税率』で計算できます。

所得割 会社の儲け
(1事業年度の所得金額)
× 税率

ここで大事なポイントは、資本金額が1億円以下の会社は、「所得割」のみ納めればよく、「付加価値割」と「資本割」はかからないという点です。(付加価値割と資本割は、まとめて「外形標準課税」と呼びます)
資本金額1億円以下の会社は、事業税においても税金が小さくてすみます。

事業税を計算してみよう

今回も、前回の計算例の<ケースⅰ>と同様、資本金額5000万円で、所得金額が3000万円の会社で考えてみます。事業税の税率と事業税額の計算は以下のようになります。

  H26年度までの標準税率 事業税額の計算
①事業税
所得割 所得金額400万円以下の部分 2.7% 10万円
=400万円×2.7%
所得金額400万円超800万円以下の部分 5.0% 20万円
=(800万円-400万円)×5%
所得金額800万円超の部分 5.3% 117万円
=(3000万円-800万円)×5.3%
合計   147万円
②地方法人特別税
計算された所得割の金額に対する割合 81.0% 119万円
=147万円×81.0%
事業税額合計
① + ②
266万円
(注1)法人事業税の税率は、地方公共団体によって、一定の範囲で変わります。
(注2)標準税率については、それぞれ平成26年10月1日以降に開始する事業年度(3月決算だと平成27年度)から、地方法人税が創設されるため、税率が変更されます。

事業税の「所得割」の計算の特徴は、法人税の計算と同様、所得の金額に応じて、段階的に税率が異なるという点です。計算された所得割の金額(①合計147万円)に、地方法人特別税(②119万円)を足した金額が、事業税額の合計(266万円)となります。

「法定実効税率」もぜひ覚えておきましょう

ここまで、法人税、住民税、事業税の税額計算のしくみと、計算例を説明してきましたが、会社がどのくらい税金を負担しているか考える場合は、これら法人3税の合計で考える必要があります。

前回と今回で使用した計算例の場合、資本金5000万円で、所得金額3000万円の規模の会社は、ざっと計算しただけでも、1082万円の税金を負担するということです。

法人税 681万円
住民税 135万円
事業税 266万円
合計 1,082万円
 
 
 
← 所得金額3000万円 × 実効税率36%

ここで、会社にとって、法人3税の負担がどのくらいになるのか見るために使われる税率をご紹介します。この税率は「法定実効税率」と呼ばれます。基本的には、法人3税の税率の合計に、調整をしたものになります。

たとえば、本店が東京都にあり、資本金額が1億円超の会社の場合だと、法定実効税率は約36%となります。

各国ごとに税率を比較する場合には、この法定実効税率によって比較します。
日本の税率は、世界的に見ても高いといわれています。アメリカに次ぐ高さです。日本は良質な行政サービスを行っているので、税率が高いのもやむを得ないところはあるかもしれませんが、ここ数年、国際競争力を高めるために法人税率を引き下げる動きが出ています。

実効税率
米国(カリフォルニア州) 40.75%
日本(東京都) 35.64%
フランス 33.33%
ドイツ 29.55%
中国 25.00%
韓国(ソウル) 24.20%
イギリス 23.00%
シンガポール 17.00%

(出典:財務省HP「法人所得課税の実効税率の国際比較」2013年4月現在)