Winning Women Networkの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性エグゼクティブの法則~Winning Womenから後輩たちへ~』を連載しています。2016年12月1日号に掲載された記事をご紹介します。
今の会社に入社したのは29歳の時。「一般企業で見識を広げたい」。そんな漠然とした思いから転職しました。前職の看護師ではCCU(心疾患集中治療室)に勤務していましたが、ありがたいことに上司や患者様からの評価は上々で、仕事に不満はありませんでした。しかし、当時を振り返れば、いつも何かが足りなく空虚感を抱いていました。未来へのキャリアビジョンや、明確な目標がなく、単に日常の仕事を手際よくこなすだけに過ぎなかったからでしょう。職場でよいコミュニケーションが図れていても、やりがいを感じないのは当然だったと思います。今の会社に勤務し、私は、仕事とは何か、そして何のために働くのか、多くを学ぶことになりました。
最初の配属先は、前職経験を活かした介護事業の人材育成部門。当時は介護保険制度の開始前で、利益を追う民間会社の参入に賛否が飛び交う時代でした。私は会社の信用に懸けても円滑に事業を立ち上げたいと仕事に没頭しましたが、現実は甘くありません。介護経験の浅い職員を抱え、問題は次第に山積みに。試行錯誤の結果、事態を好転させたのは、意外にも実務教育ではなく、会社方針や目標、計画であり、企業人として必要な多様な情報でした。ここでは「情報量で人の行動は大きく変わる」ことを学びました。人は仕事に取り組む価値と幅広い情報を得ることで自ら大きく成長するのです。
次に異動したのは社長直轄の組織管理部門。現場の機動力になる給与や組織改革、プロジェクト組成等を手がけました。ここで心得たのは、会社が発展する原点はすべて「人財」にあるということです。どんなに優れた人材でも必要な組織構成や適材適所がなければ結果を出せません。「組織は生き物だ!」。組織に人を当てはめるのではなく、「人の成長に合わせて組織を進化させる」。この重要性を学びました。
その後、2011年に保育部門に異動してからは、すべての経験が実を結びました。事業は違えども成果を出すセオリーは何も変わりません。人を活かすために組織を最適化し、事業計画を明確に示し、人材供給力を上げるために待遇を見直す。営業手法の変革も実行しました。関わる人材へ多くの情報を発信。自分の情熱を伝えることで、同志は増え、結束力を高めるために対話に時間を注ぎました。そして今秋、当時20箇所だった保育施設は127箇所へと広がってきました。「組織を動かす工夫と情熱」、「かけがえのない仲間」の存在が事業をするうえでいかに大事であるかを学びました。
女性が社会で輝くとはどういうことでしょうか。人それぞれ考え方は異なるでしょうが、それは対外的な地位や名誉が安易にもたらすのではなく、自分が持つ固有の能力を活かして社会や会社に貢献する実感を得た時、それが自分の存在価値を感じる瞬間であって、社会で輝く瞬間なのだと私は思います。つまり、肩書きではなく、大事なことは自分自身がどう変わり、どう生きたいと願うかです。小さなことでも自分が中核となって動くことで同志が集まり、仕事が人生をより豊かにしてくれます。
一度しかない人生ですから、ぜひ、大きな輝きを目指して心揺さぶる仕事にチャレンジして行きましょう!
(「旬刊経理情報」2016年12月1日号より)
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井出 貴子(いで・たかこ) |