Winning Women Networkの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性エグゼクティブの法則~Winning Womenから後輩たちへ~』を連載しています。2016年10月1日号に掲載された記事をご紹介します。
私は現在、塩野義製薬において経営戦略本部長を務めていますが、平成27年の3月までは入社以来一貫して開発畑に軸足をおいて業務を進めていました。
男女雇用機会均等法施行前の入社だったわけですが、私自身のターニングポイントは大きく分けて4つありました。(1)20代後半に開発化合物責任者に指名されたこと、(2)複数のプロジェクトや協力者を有する癌・疼痛部門長に任命されたこと、(3)医薬開発部長に任命され、当時課題の多かった開発本部において変革プロジェクトリーダーとして変革を進めたこと、(4)執行役員医薬開発本部長に任命されたことでした。今回は1つ目のターニングポイントについてお話します。
「なぜ女性が開発化合物責任者に?」、「開発に最低でも数年を要する医薬品の開発担当責任者が女性でもよいのか?」というような声もありましたが、これは当時の開発部長が周囲の反対を押し切って決定したことでした。そのため、部長自身が社内のキックオフ会議や最初の社外との会議などには必ず同席し、ポジティブなメッセージを送ってくださったのです。そのお蔭もあってか、社内においても医療機関や研究機関の先生方は極めて好意的に対応してくださったり、いろいろと教えてくださったり、開発プロジェクトが順調に進むようサポートしてくださっていました。今の私の礎はこの頃応援してくださった方々から学んだことやネットワークによって築かれたと考えています。ただ、なぜ、皆さんが応援してくださったのかを考えると、患者さんの病気を治したいという思い(ゴール)が先生方や社内の思いと一致していたということ、医療機関などの訪問時に相手の方が有用で価値があると思われるような情報をお持ちすることができていたからではないかと思います。
開発化合物責任者に指名されたのは、突然のことでしたが、内勤業務時に種々の問合せ対応、開発品目のデータマネジメントと解析計画の打合せ等を実施する傍ら、少しでも時間があれば、開発品や製品に関する種々のテーマに応じて文献検索をかけ、必要な文献を入手し目をとおすことによって、国内外の競合品や医療に関する最新状況を把握するように努めていたことが有用であったと思います。
指示された仕事をするだけでなく、自らの業務の周辺も含めて社内、社外、海外の状況を深く知り、短期目線ではなくゴールを見据えて業務を進めることができると、仕事が楽しくなり、さらに多くの知識を吸収できるという正のサイクルが回り始めますし、理解者や支援してくださる方々も増えてきます。1人でできることには限りがあり、多くの方々のご協力や支援は大きなプロジェクトになればなるほど重要となってきます。ぜひ、皆さんも多くの理解者や支援者を得て、将来に向けて羽ばたいていただきたいです。
(「旬刊経理情報」2016年10月1日号より)
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澤田 拓子(さわだ・たくこ) |