Winning Women Networkの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性エグゼクティブの法則~Winning Womenから後輩たちへ~』を連載しています。2016年8月1日号に掲載された記事をご紹介します。
振り返るとこれまで私は、数多くの世間の「常識」にチャレンジしてきました。「女子がサッカーするなんて」。これが私の最初のチャレンジだったと思います。
私がサッカーを始めたのは6歳の時。兄がサッカーを始めたのを機に私も同じチームに入団しました。当時はサッカーは男子の競技というのが「常識」で、いざチームに入団すると、周りは全員男子で女子は私だけでした。しかし、日頃から「女の子だから」と行動を制限されることに窮屈な思いをしていた私にとって、サッカーをしている時は自由を感じられる時間でした。どんなに走り回っても、どろんこになっても、叱られるどころか激励されて、私はあっという間にサッカーの虜になりました。
「3時間半もかけて岐阜県から三重県に毎日通うなんて(岐阜県の高校に通いながら、三重県のチームへの移籍)」、「女子サッカー日本代表がオリンピックに出場するなんて(96年のアトランタオリンピックへの出場)」、「女子サッカー選手が電通に入社するなんて(引退後の進路)」、「スポーツ選手が博士号を取るなんて(博士後期課程の入学)」。13歳で「日本代表になりたい」という夢を掲げ、21歳で日本代表に初選出されオリンピックやワールドカップなどに出場するなかで、また、引退後もサッカーを心の拠り所としながら生活するなかで、多くの「常識」にチャレンジしました。自分で納得して物事を決めたいという思いと人がこれまでやっていないことをしたいという思いが結果として「常識」へのチャレンジになったのです。しかし、すべてのチャレンジが順風満帆だったわけではありません。うまくいかなくてやめたいと思ったこと、ネガティブな言葉を浴びて折れそうになったこと、自分の可能性を信じられなくて不安になったこと、数え切れないほどの失敗を繰り返しては、またチャレンジを続けてきました。
ここまでチャレンジを継続できた最大の要因を、常に最良のコーチに恵まれたからだと私自身は分析しています。昨日の自分を越えるために、自分を理解し、モチベーションに働きかけてくれるコーチがいることで、挫折を乗り越えられました。このコーチの存在は、ビジネス界や一般社会においても人が結果を残すうえで不可欠であると信じています。私自身は、選手時代にコーチがいたのはもちろんのこと、引退後はメンターと夫がコーチとしての役割を担ってくれています。日々応援、激励してくれる人がいることで、これまで自分の目標を見失うことなく、常にモチベーションを高く保つことができています。
「女性がスポーツ界からビジネス界への転身なんて」。これが現在私がチャレンジしている「常識」です。現在は「チームビルディングコンサルタント」として、ビジネスマンを対象に、会社でのパフォーマンス向上を課題に、スポーツのメソッドを取り入れたコンサルタントとコーチングを行っています。一方で、ビジネス界で女性であること、元アスリートであることにバイアスを感じることもあります。
ビジネス界での私のチャレンジはまだまだ始まったばかりで、これからも何度も「常識」に押しつぶされそうになるでしょう。しかしながら、コーチ文化をビジネス界にも広げる、という目標を見失わないように、これからもチャレンジし続けていきたいと思います。
(「旬刊経理情報」2016年8月1日号より)
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東明 有美(とうめい・ゆみ) 現在はチームビルディングコンサルタントとしての活動、講演、研修では高い評価を得ている。 |