Winning Women Networkの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性エグゼクティブの法則~Winning Womenから後輩たちへ~』を連載しています。2016年5月1日号に掲載された記事をご紹介します。
たとえば、自分の子どもに、人の役に立つ人間に育ってほしいと願うように、起業家である私は、自分の創ったしくみが社会を進化させるようなものであってほしいと考えています。これまでに3度の出産を経験していますが、最初に生まれた娘には障がいがありました。24時間介護も必要で、そのため、娘を保育園に預けて復帰するという、当初想定していた育児スタイルができなくなり、未来が描けなくなった気がしました。
いっそのこと会社を売却し、子育てに専念しようとすら思いました。当時経営していた会社は社員が少人数で私が中心で回っていました。そのときに仕事と育児の両方の責任を自分ですべて背負おうとするからうまくいかないのだ、チームでやるということをもっと追求すればいいのではないかと気づきました。
まず、会社は上場させることにしました。優秀な人が集まる流れをつくれば、たとえ、私が仕事をやめざるを得なくなっても会社は残ります。
また、育児については実母やベビーシッターなどでチームをつくることにしました。そのときにはじめて、ベビーシッターという育児手法を知りました。しかし、当時、派遣会社に頼むと非常に高額なうえに、シッターを自分で自由に選ぶことができませんでした。障がいを理由に断られることもあり、不便さを感じました。いつか、この分野でより便利なサービスを創りたいと思うようになりました。
「女性の幸せ」には「経済的自立」、「自分らしい美しさ」、そして育児や家族など「社会とのつながり」の3つがあり、女性はこの3つのバランスに悩んでいるのではないかと私は考えています。
このうち、「経済的自立」、「自分らしい美しさ」については、過去に事業として取り組んでいましたが、3つ目の「社会とのつながり」が残っていました。女性が働いていくうえでの1番のボトルネックは、仕事と育児の両立ではないでしょうか。これを解決したい、そしてそのために、安全で、便利で日本一安いベビーシッター事業を開発し、インターネットでユーザーとシッターをつなぐインフラづくりに取り組むことにしました。
事業はまだ立ち上げたばかりですが、社会のインフラになるようなサービスを目指して、地道に、安全性を優先して丁寧に創り上げていきたいと思っています。
私の母親世代は「専業主婦」という生き方がロールモデルのように考えられてきました。ですが、これだけ時代が急速に変化する今は時代の過渡期なので「ロールモデル不在」となってしまいます。それによって悩んでいる女性が多いのかもしれません。でも、逆に考えれば、女性が選択肢をたくさん与えられる時代に生まれたのです。だから、先人の女性達に感謝し、その自由を享受して自分らしい幸せをつかんでほしいと私は考えています。
そんなふうに、1人ひとりの女性が自分の道を切り開いてよい時代になったからこそ、私たち1人ひとりが自分らしく生きるロールモデルになって、一緒に女性が輝く日本の未来を創っていきたいと思っています。
(「旬刊経理情報」2016年5月1日号より)
![]() |
経沢 香保子(つねさわ・かほこ) |