「旬刊経理情報」連載 女性エグゼクティブの法則 ~Winning Womenから後輩たちへ~

第36回 「私」というダイバーシティ

2016.05.18
原田 文代
(株)日本政策投資銀行(DBJ)
国際統括部担当部長兼女性起業サポートセンター長

Winning Women Networkの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性エグゼクティブの法則~Winning Womenから後輩たちへ~』を連載しています。2016年3月1日号に掲載された記事をご紹介します。

2009年より世界銀行グループの国際金融公社(International Finance Corporation、IFC)の東アジア・太平洋局(香港)に勤務しました。世界銀行のような国際機関ではスタッフのダイバーシティは大前提ですが、日本で教育を受け、日本の金融機関に就職した私には非常に新鮮な体験でした。

香港オフィスのスタッフは100名強でしたが、その出身国・地域は40を超え、性別、年齢、家族といった外形的な要素はもとより、宗教、言語、LGBTか否か等の社会的背景についてもさまざまでした。チームはプロジェクトごとに入れ替わるのですが、たとえばモンゴルの鉄道案件では、主任担当官はベネズエラ人、モンゴル人、日本人(私)、弁護士は香港人、環境・社会専門家はイギリス人、エンジニアはインド人、といった布陣。そんな多様なチームメンバーをまとめる求心力は「各自の能力や個性を最大限に発揮し、プロジェクトに貢献する」という共通認識であり、私自身も日本というアジアの先進国の、非英語圏、女性、中華系の配偶者、金融機関での経験という属性カードをどう生かせるかを模索する毎日でした。

その後DBJシンガポール現地法人の副社長を務めることになり、今度はマネジメントの立場からダイバーシティを考える機会に恵まれました。シンガポールという土地柄、日本人、シンガポール人に加え、永住権や勤労ビザで勤務する外国人等、多様なステータスのスタッフが混在し、その家族の国籍や在留ステータスもさまざまです。人事制度や休暇等の福利厚生制度の改善を通じ、個々の価値観や環境に合った働き方の選択肢を用意することが求められました。日々の仕事においても部下の特性、能力を最大限に生かし、モチベーションを向上させることを常に強く意識していました。

また、先の香港もそうですが、シンガポールも女性がプロフェッショナルとして働くことが当然であり、そのためのインフラも整っています。私自身、周辺国への出張が多いなか、まだ子どもが小さい時期にフレキシブルな勤務体系や、家事や育児の十分なサポートが享受できたことを本当に感謝しています。

昨年から数年ぶりの日本勤務になりました。日本でもダイバーシティの認識とその必要性が広く議論されるようになってきたことは嬉しい驚きです。一方で「健康な日本人男性が主たる稼ぎ手で、その家族も日本人」がスタンダード(私自身には何1つ当てはまりません)、という概念がいまだに根強いのを感じます。サポート体制も発展途上です。しかし企業のグローバル展開、少子高齢化のもと、日本社会におけるダイバーシティは後戻りすることはないでしょう。皆さんも女性であるという属性や、女性ならではのライフイベント、健康上の理由等により、これまでとは違った働き方を余儀なくされることもあるかもしれません。それをマイナスと受け取らず、周りのサポートに感謝しつつも、「私という存在自体が多様性を創出することで組織や社会に貢献しているのだ」という意識を持って前向きに臨んでいただきたいです。

(「旬刊経理情報」2016年3月1日号より)

原田 文代

原田 文代(はらだ・ふみよ)
(株)日本政策投資銀行(DBJ)
国際統括部担当部長兼女性起業サポートセンター長

日本開発銀行(現(株)日本政策投資銀行、DBJ)入行後、アジアの発展途上国・市場経済移行国へのテクニカルアシスタンス、海外企業の対日投資、日本企業の対外インフラ投資等を手がける。国際金融公社(IFC)にて東アジアのインフラ整備に従事、DBJシンガポール副社長を経て、2015年2月より現職。主としてDBJのアジア関連ビジネスを担当するとともに兼務で女性起業家の支援に携わる。東京大学経済学部卒。