「旬刊経理情報」連載 女性エグゼクティブの法則 ~Winning Womenから後輩たちへ~

第35回 経営的視点と経理的視点習得のすすめ

2016.05.16
竹本 笑子
竹本容器(株) 代表取締役社長

Winning Women Networkの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性エグゼクティブの法則~Winning Womenから後輩たちへ~』を連載しています。2016年2月1日号に掲載された記事をご紹介します。

私は、祖父が創業した会社の3代目として今から11年ほど前、当時29歳のときに、竹本容器(株)の社長となりました。経営について何もわからない私でしたが、24歳のときに1年間経理部で勉強したことが、経営をするうえで非常に役に立ちました。

経理部での学びは、その後、生産、営業の責任者を担当したときに、担当部署の状況を数値で捉え、会社の経営情報にどのように反映され、どのような分析、対策を講じていくかを考える助けとなってくれました。周りの助けを借りながら、11年間会社を経営してこられたのも、経営を数値で捉える習慣を経理部で身につけたからだといっても過言では有りません。

私のイメージでは、経営は大海原で船を操縦するのに似ているように思います。たどり着きたい目的地を設定し、航海中に起こる環境の変化に対応し、一緒に乗船している社員と力を合わせながら目的地へたどり着こうとするのです。その際に必要なのが、船の位置や周囲の環境を示す計器です。会社の経営でいえば、会社の財務情報、経営環境情報であり、その情報は主に経理部から提供されることが多く、そのため経理部はいわば船でいう計器の役割を果たしているといえるでしょう。計器なくして航海するのが非常に難しいように、経営と経理は密接な関係であり、経営にとって経理(数値認識、計数管理)は、経営をうまく遂行するために必要不可欠なツールだと考えています。

一方で、経営も経理も、それぞれ高度な専門性が要求される職種であるがゆえに、お互い近くて遠い存在になることも珍しくありません。私の経験では、経営が経理的視点を、経理が経営的視点を少しでも身につけると、アウトプットされる仕事の質、付加価値が格段に向上するように思います。

ところで、化粧品業界で著名なデザイナーがこんなことをおっしゃっていました。「デザイナーはデザインセンスがあるということだけでは駄目です。自分の価値を上げたいのなら、デザインの周辺に必要な領域もマスターしなさい。たとえば、マーケティング視点も持つということです。マネジメント能力を身につけるということもよいでしょう。3つぐらいの分野をマスターすると、さらにいい仕事ができるようになります」。

3つをマスターするのは、至難の業かも知れませんが、自分の専門分野だけでなく、そのつなぎ目の分野をマスターしている、もしくはマスターしようとしている人物は、かなりの確率で重宝される人材になるでしょう。特に、数値の分析能力を日々訓練すること(=経理的視点を訓練すること)は、生産、営業、経営、開発、どの分野においても役に立つ能力となります。ぜひ、今日から、自分の専門分野のみならず、その他2つの分野に興味関心を持ち、その分野を習得する意気込みで仕事に打ち込むことをおすすめしたいと思います。また、経理が専門であれば、経営的視点から会社業績に対する提案をしていただけると、会社競争力向上の一助になると思います。経営が経理的視点を、経理が経営的視点を習得されることは私のおすすめであり、読者のみなさまがこうした視点をもつことを願っています。

(「旬刊経理情報」2016年2月1日号より)

竹本 笑子

竹本 笑子(たけもと・えみこ)
竹本容器(株) 代表取締役社長

1998年中央大学卒業、11カ月の国際証券(株)勤務を経て1999年竹本容器(株)に入社し、経理部に配属される。M&Aしたばかりの生産拠点の副所長として就任し社内融和に貢献した後、2001年営業本部副本部長、2004年3月取締役就任。同年12月には父親である前社長から譲られ代表取締役社長就任。代表取締役社長就任後、米国、タイへの進出を実現し、2014年12月には東京証券取引所市場第2部に上場を果たす。EY Winning Women2015特別賞受賞。