「旬刊経理情報」連載 女性エグゼクティブの法則 ~Winning Womenから後輩たちへ~ 

第32回 メンタリティを変えれば、すべてが可能

2015.12.08
クリスティン・エドマン
エイチ・アンド・エム へネス・アンド・マウリッツ・ジャパン株式会社
代表取締役社長

Winning Women Networkの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性エグゼクティブの法則~Winning Womenから後輩たちへ~』を連載しています。2015年11月1日号に掲載された記事をご紹介します。

会社の経営者である両親のもとに生まれた私は、小さい頃からビジネスに大変興味がありました。アメリカの大学を卒業した後、父の会社に勤め、現在の夫にめぐりあったのですが、夫の博士号取得のために一緒にスウェーデンに移ることになりました。スウェーデンに引っ越しをした当時は、専業主婦は非常に珍しく、職に就くには言語の問題もあり、将来を考えていたところ、そのタイミングを活かして、かねてから希望していたMBA取得に専念することにしました。その際、卒業時に書いた「将来、H&Mを日本へオープンさせたい」という趣旨の論文が現地の経済新聞に掲載されたことがきっかけで、H&Mに入社することになりました。特殊な経歴なので、今考えると、H&Mに入社したのは運命だったのかもしれません。

日本で育った私が、スウェーデンでの生活やH&Mで衝撃的に感じたことは数知れずでした。特に、育児に関連する考え方は日本とはだいぶ違います。スウェーデンは、福利厚生面では日本よりもインフラが整っているため、その分高い税金がかかるので給与水準がよいとは決していえず、両親(男女)ともに働かなければ、生計を立てることできません。だから、育児も男女一緒にやるのが基本。妻が仕事で抜けられないことがあったら、堂々とその理由をいい、仕事を休みます。本人も周りも、そのことを後ろめたいとか、迷惑がかかるなどと気にすることはありません。それが、当たり前の環境です。

こうした周囲の生活環境もあり、会社側も育児に対して、日本企業とは違った考え方をもっています。たとえば、私の場合、H&Mに入ってから長男を出産したのですが、育児休暇に入ってまもない頃、会社から突然、香港の店舗立上げのプロジェクトメンバーに任命されました。日本企業であれば、育休中の女性に仕事を与えることは非常に稀だと思いますが、私の「H&Mを日本へオープンさせたい」という思いを覚えていてくれた会社がその足掛かりとして香港への異動(チャンス)を与えてくれたのです。日本であれば育休中の女性にはできる限りプレッシャーを与えないことが通常です。しかし、H&Mでは、育休中の女性はエナジャイズして戻ってくることができるため、復帰してからのキャリアを「円滑に進める」ための機会を設けてくれたといえます。20年、30年の長い会社生活のなかのたった1、2年のできごとなのだから、どうってことない。それよりその先、どのようにキャリアを形成させていくかといった長期的な目線で個人をみているのです。

「仕事か、それとも家庭か」。最近では女性の社会進出を推進する日本政府の動きもあるため、どちらもこなしている方が増えてきていますが、日本人の心に根強くある考えではないでしょうか。例として挙げた育児に留まらず、「私には無理」、「迷惑をかけてしまうからできない」。だから、「チャンスがあっても辞退します」。とてももったいないことです。私自身も苦労の連続はありましたが、何とか乗り越えてきました。まず声を上げマインドセットを行うこと。「Everything is possible」。この言葉を胸に挑戦し続けてほしいです。

(「旬刊経理情報」2015年11月1日号より)

クリスティン・エドマン

クリスティン・エドマン(CHRISTINE EDMAN)
エイチ・アンド・エム
へネス・アンド・マウリッツ・ジャパン株式会社
代表取締役社長

1975年に、日本人とアメリカ人のハーフとして生まれ、東京で育つ(国籍はスウェーデン)。米国の大学を卒業した後、数社を経て、スウェーデンでMBAを取得。その後、H&M Hennes & Mauritsz AB(スウェーデン)に入社。香港法人でのエリアマネージャーを経て、現在、日本法人の代表取締役社長を務めている。