「旬刊経理情報」連載 女性エグゼクティブの法則 ~Winning Womenから後輩たちへ~ 

第29回 キャリアをつなげて、学んだこと

2015.08.11
仲瀬 裕子
(株)パソナグループ 取締役常務執行役員CFO

Winning Women Networkの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性エグゼクティブの法則~Winning Womenから後輩たちへ~』を連載しています。2015年8月1日号に掲載された記事をご紹介します。

「スーツ姿で颯爽と活躍する女性がたくさんいる」。私は、こうした雰囲気に惹かれてパソナに入社しました。入社してからは、営業、広報、IRを経て、今に至ります。一見すると、まったくつながらない仕事ですが、1つひとつの業務経験が関係し合い、今の仕事にすべて活かされています。

入社後に初めて配属されたのは、人材派遣の営業部でした。私が入社した92年はちょうどバブルがはじけ、どこも人余りの時代。企業の人件費削減=派遣契約の終了として、しわ寄せが来ました。右肩上がりの派遣事業にも一気に逆風が吹き、これまでの営業スタイルではまったく受注がとれない状況に。そこで、これまでのやり方を180度転換し、提案営業へとシフトするため、ゼロから提案資料を作成し企業アプローチに励みました。

2年後、広報の仕事へ。がらりと仕事は変わり、メディアを相手に広報活動をすることになりましたが、「自社の強みを伝える」という部分は営業とまったく同じでした。メディアに自社の取組みを発信するためには、現場からの情報収集力がなければ務まらなく、そのため、営業時代に培った現場とのネットワークが非常に役立ちました。

広報の仕事をおおむね経験し、もはや広報業務においては知らないことはないというほどに自信がついた頃、新たに立ち上がるIR室を任されました。IRでは、専門用語ばかりを使う投資家やアナリストの対応に戸惑い、「1から10まですべて自分が責任を持ってやらなければ」という責務から、ときには誰にも気づかれないまま、深夜まで残って対応に追われることもありました。私の強みは何だろうと、ふと考えたとき、広報で何度もアピールしてきた自社の歴史や取組みのこと、さらには他社動向も含めた派遣業界や労働法のことならよく知っていたことに気づきました。投資家たちは、実はこうした(彼らの知らない)情報を欲していたのです。

そして、今。私は、IRを含めた財務・経理を管掌するCFOの立場にあります。財務・経理では、私よりもはるかにベテランが多く、彼らとうまくやっていくには...。そうだ、今度は任せればいい。IR時代には1人で仕事を抱え込み、任せるということができず、苦悩しましたが、ここで初めて「任せること」を学びました。ルールに則って数字を出すことは、信頼できるみんながやってくれます。私がしなければならないのは、「その数字と現場とのつながりを、みんなを代表して経営陣に伝えること」。

このように、営業で現場を知り、広報で伝え方を覚え、IRで1人の苦しみを悟り、今、任せることを実践できています。特に、最後に学んだ「任せること」。これには、相手を信頼することが不可欠です。女性の長所でもあり、短所でもあるのが、「責任感の強さ」。それゆえ、他人に「任せる」よりも自分で「やる・抱え込む」方が多いのではないでしょうか。何事も1人でやれることには限界があります。それを知ったとき、すなわち、「任せること」ができたとき、みんな一緒に成長できるのではないかと思います。

(「旬刊経理情報」2015年8月1日号より)

仲瀬 裕子氏

仲瀬 裕子(なかせ・ゆうこ)
(株)パソナグループ 取締役常務執行役員CFO

1992年㈱パソナ入社、人材派遣の営業を経て、1994年広報へ配属。広報部長を務めた後、2005年IR室立上げと同時に執行役員IR室長。その後、(株)パソナグループ執行役員、常務執行役員を経て、2010年より㈱パソナグループ 取締役常務執行役員CFO。パソナグループおよびパソナの財務経理・IR責任者として、グループ全体の管理・財務会計、税務、資金面を担当