「旬刊経理情報」連載 女性エグゼクティブの法則 ~Winning Womenから後輩たちへ~ 

第24回 女性の使命感が日本を変革する

2015.05.22
國井 秀子
芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科 教授

Winning Women Networkの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性エグゼクティブの法則~Winning Womenから後輩たちへ~』を連載しています。2015年3月1日号に掲載された記事をご紹介します。

世界経済フォーラムは、毎年、世界男女格差指数を発表していますが、日本の順位は、相変わらず低いままです。最新データでは、総合点で142カ国中104位です。近年国際競争力が落ちてきているとはいえ、日本は、経済も文化も発展した先進国のはずであり、1985年には国連と女性差別撤廃条約を締結しています。条約の締結は、国連に対し女性差別をなくすことを約束したことを意味しますが、日本はこれを十分実現していないのが現状です。これは、いったい誰の責任でしょうか。そして、これから誰がこの非常に遅れている男女格差撤廃の取組みを加速できるのでしょうか。

条約の履行は、まずもって政治の問題ですが、その政治がとりわけ遅れています。前記の世界男女格差指数は、政治、経済、保健および教育の4つのグループから構成されていますが、そのなかで政治は最も低く、129位という状況です。ちなみに、経済が102位、保健が37位、教育が93位です。政治から変革を加速することが厳しいとなると、この大きな社会問題の解決は、やはりまず女性自身が取り組んでいく必要があります。その先頭に立ってリーダーシップを執ってほしいのが、女性エグゼクティブです。

今活躍している女性エグゼクティブは、ロールモデルもほとんどいない時代にそれぞれの分野を開拓してきた女性でしょう。厳しい環境のなか、多くの試練を経てリーダーシップを大いに発揮できる地位に至っていると思います。今、そういう女性たちのエネルギーを社会の変革に傾けるべき時代になっています。女性の活躍は、生産労働人口の急減や男性のみの同質文化によるイノベーション力低下などに対する対策として追い風になっていますが、そもそも人権問題です。この点でベクトルを合わせて問題解決に向けた舵取りができるのが、女性エグゼクティブではないでしょうか。女性の活躍を正しいことと思っても、なかなか行動に至らない男性も多いです。実績のある女性エグゼクティブが、このチャンスを活かして変革にはずみをつければ、次世代の女性エグゼクティブがもっと育ちやすくなるでしょう。

さて、この活動の源泉になるのは日本の現状に対する歴史的、社会的認識と自らの使命です。キャリアに悩んでいる多くの女性は、人それぞれ抱える問題が違います。しかし、その問題を歴史的・社会的な視点で考え、全体の流れのなかで自分を捉えれば道は開けてくるのではないでしょうか。自分のキャリアを振り返ってみると、自らが遭遇するいろいろな問題をあまり個人的に捉え過ぎず、社会の流れのなかの課題として捉え、そこで自分の使命は何か、何をすべきかと考えてきました。この思考が私のキャリアを開いたのだと思います。

世界が大きく変化している今日、女性差別撤廃は日本の焦眉の課題です。女性エグゼクティブおよび未来の女性エグゼクティブが、その経験を歴史的、社会的に捉え、日本の重大な社会問題である男女格差をなくしていくことにそのパワーを活かせば、より健全な社会の構築と経済の成長につながるものと確信しています。

(「旬刊経理情報」2015年3月1日号より)

國井 秀子氏

國井 秀子(くにい・ひでこ)
芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科 教授

お茶の水女子大学大学院理学研究科で修士号取得後、米国にて修士号およびPh.D.取得。株式会社リコーのソフトウェア分野の研究開発責任者および常務執行役員を経て、2013年3月までリコーITソリューションズ株式会社取締役会長。2013年4月より現職。同大学の学長補佐、男女共同参画推進室室長。また、一般社団法人情報サービス産業協会副会長、内閣府男女共同参画推進連携会議議員、財務省関税・外国為替等審議会委員、文部科学省科学技術・学術審議会臨時委員、日本学術会議連携会員、株式会社産業革新機構産業革新委員、本田技研工業株式会社取締役、東京電力株式会社取締役などを務める。