「旬刊経理情報」連載 女性エグゼクティブの法則 ~Winning Womenから後輩たちへ~ 

第11回 自分の殻を破る ~その先には新しい自分が~

2014.02.21
引頭 麻実
株式会社大和総研
常務執行役員 調査本部副本部長

Winning Women Networkの企画・協力で、「旬刊経理情報」に「女性エグゼクティブの法則~Winning Womenから後輩たちへ~」を連載しています。2014年2月1日号に掲載された記事をご紹介します。

私が大和證券に入社したのは、男女雇用機会均等法施行の1年前。弊社グループで採用された最初の女性総合職の1人でした。あれから四半世紀以上が経ちましたが、本当にあっという間のことでした。この間、いくつかの大きな気づきがあり、そのおかげでなんとかこれまでやってこられたのですが、ここではそのうちの1つの気づきをご紹介したいと思います。

それは、国の審議会に参加させていただいたときでした。証券アナリストという業務をしていましたので、会計にも明るいだろう、利用者視点からの指摘もできるだろう、ということだったかもしれませんが、企業会計審議会に参加させていただくことになりました。まだ30代と若かったのですが、女性枠ということだったと推察しています。審議会といえば大学教授や財界の方々などのお歴々が名を連ねるところです。大変緊張しました。

当時のテーマは、「企業結合会計」で、持分プーリング法を存続させるか否かが最大の論点の1つであったと記憶しています。証券アナリストとして毎日、P/L、B/Sをみているからといって、企業会計基準を正確に理解しているわけではありません。普段、私はどちらかといえば饒舌ですが、せっかく審議会のメンバーとなったにもかかわらず、借りてきた猫のような状態になっていました。議論の中身もよく理解できず、周りの委員の方々とも話もできず、置物のような感じでした。そのときに、これではいけない、せっかく頂戴した機会を無駄にしてしまっている、と強く思いました。そこで、思い切ってそばに座っていらっしゃったある大学教授に疑問点をお伺いしたのです。もちろん、その大学教授は快く教えてくださいました。この一歩が私にとって大きかったのです。これをきっかけに、会計基準についてより深く勉強し、わからないことは積極的に質問し教えていただこうと思いました。また、少しずつではありますが、審議会でも利用者の立場から発言できるようになっていきました。

なぜ最初のうちはお地蔵さんになってしまったのか。自分のことながら当時の私にはわかりませんでした。ですが、時が経つにつれ、それは多分『プライド』だったのだと思い至りました。つまり、自分の殻、自分のスタイルといったものを破ることが怖かったのです。

実はこの気づきは私の社会人人生において非常に重要なものとなっていきました。変に格好をつけず、等身大の自分と向き合い、周りの方々と本音でコミュニケーションをとっていく。これが私の人とのお付き合いにおける基本的な姿勢となりました。

そのおかげでしょうか。多くの社外の方々と交流させていただけるようになりました。社外の方々とのお付き合いにはいつも刺激があります。ただし、お付き合いは双方向です。自分自身も相手にとって刺激的であることが欠かせません。何をもって刺激的かを判断するのは難しいですが、それに向かって努力する醍醐味があります。最初の一歩は大変ですが、ぜひトライしてみてください。新しい自分に出会えると思いますよ。

(「旬刊経理情報」2014.2.1より)

引頭麻実氏

引頭 麻実(いんどう・まみ)
株式会社大和総研
常務執行役員 調査本部副本部長

1985年一橋大学法学部卒。同年、大和證券入社、大和証券経済研究所(現大和総研)配属。電機セクターアナリスト、ストラテジスト、および投資銀行業務等を経て、2009年大和総研執行役員。2013年4月より現職。官民競争入札等監理委員会委員、総務省独立行政法人評価委員会委員、企業会計審議会臨時委員(監査部会)、日本証券アナリスト協会企業会計研究会委員を現在務める。公認会計士・監査審査会委員、企業会計審議会委員を歴任。