これだけは知っておきたい!管理入門 

第3回 在庫管理

2014.07.31
公認会計士 芦田 千晶

5回にわたり、「これだけは知っておきたい!管理入門」シリーズを掲載しています。このシリーズでは、皆さんが会社を経営していくに当たって、日々、直面されるような身近な管理上の問題を取り上げて、どんな解決方法があるのかについて、ご紹介していきます。

  • 第1回 資金管理
  • 第2回 売掛金管理
  • 第3回 在庫管理
  • 第4回 固定資産管理
  • 第5回 経費の管理

このシリーズに登場するWWN社は、こんな会社です。

  • 業種: 女性向け衣料の製造・販売
  • 拠点: 本社のほか、店舗2カ所、工場1カ所
  • 社員: ひろ子社長のほか、社員は30人

それでは、第3回「在庫管理」の中身に入っていきましょう!

1. 在庫管理についてのケーススタディー

★WWN社のある日の出来事

WWN社では、決算月の2月末に工場および銀座の直営店とO百貨店の2店舗において実地棚卸を行い、その結果に基づいて期末在庫金額を確定しています。

決算作業を進めていた3月前半のある日のこと。経理担当取締役のとおるさんからひろ子社長に連絡が入りました。

とおるさん:「ひろ子社長、実地棚卸の結果を見ていたところ、帳簿上は12百万円あるはずの棚卸資産が実地棚卸の結果では10百万円しかありません! 2百万円少なくて変ですね。原因を調査します。」

ひろ子社長:「えっ!・・・どうして? 店舗では毎日、閉店後に在庫数量をちゃんと管理しているはずよね?」

とおるさんが、営業担当社員のよし子さんと実地棚卸の状況を詳しく調べてみたところ、2月にH百貨店にて期間限定出店をした際に工場から出荷した商品について、帳簿上の払い出し処理を行っていなかったことが判明しました。

皆さんの会社では、こんなことはありませんか?

★それではどうしたらいいの?

  • 実地棚卸は会社資産を把握するための極めて重要な作業です。現物の数量をカウントすることで、受払いにより継続的に記録してきた帳簿上の在庫数量(帳簿残高)が実際に存在することを確かめられます。
  • とおるさんのように帳簿残高と実地棚卸の結果を照合し、棚卸差異の原因を調査することで、実施棚卸時のカウントミスや今回のケースのような受払記録の間違い、さらには盗難や不正によるロスなどを発見することができます。
  • 棚卸差異の原因が実地棚卸すべき対象範囲の誤りにある場合は、帳簿上、場所別(店舗・工場別)の在庫を把握して、すべての在庫を実地棚卸の対象とするといった対応が必要です。
  • 実地棚卸時には二人一組でカウントを行うなどして、相互牽制や相互チェック、ダブルカウントにより、正確性を確保することが望まれます。

【WWN社の対応策】

  • WWN社では、営業のよし子さんが期間限定店舗も含めた場所別の在庫リストを作成し、実地棚卸時には各棚卸担当者が場所別の在庫リストと現物の突合を行うことにしました。
  • WWN社では、店舗や工場の現場担当者のみならず、経理部門や営業部門の担当者が二人一組で実地棚卸を行うことにしました。
  • WWN社では、営業のよし子さんが実地棚卸の結果を集計して在庫リストとの差異を分析し、結果をとおるさんとひろ子社長に報告することにしました。

2. 在庫の特徴とリスク

日々、商品を生産、または、仕入れ、販売されなかった分が在庫となります。在庫は今後、販売して利益を稼ぐための会社の大切な財産です。同時に価値のある資産であるために、盗難や横領などの不正によりロスが発生するリスクがあります。
また、長期にわたって販売できない場合には、販売価格の下落により在庫の資産としての評価を下げる必要性も生じます。

3. 在庫管理のポイント

今回、取り上げたケーススタディー以外にも、在庫管理のポイントはたくさんあります。
皆さんの会社では、どのくらい管理体制が整っているか、ぜひ一度チェックしてみてください。

項目 内容
受払管理
  • 商品の動きに合わせて正確に受払いが記録されていない場合、実地棚卸によって期末に多額の棚卸差異が生じたり、盗難や不正の判明が遅れたりするリスクが生じる。
  • 期中に単価計算ができないため、気付かずに赤字販売をしてしまう可能性がある。
実地棚卸
  • 定期的に現物の数量カウントを実施することで、受払いにより継続的に記録してきた帳簿上の在庫数量(帳簿残高)が実際に存在することを確かめられる。
  • 帳簿残高と現物との数量に差異があった場合には、その原因を調査することで、今後の在庫管理に役立てることができる。
在庫分析
・評価
  • 受払管理や実地棚卸などにより在庫数量を把握し、分析することで、適正在庫水準を認識し、必要在庫を確保することができる。
  • 受払管理による単価計算や実地棚卸による不良品・滞留品の発見により、在庫金額の評価を行う際の判断の基礎とすることができる。