旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』

第47回 短所を長所に変えられる場所に

2021.05.31
石川 彩子
(株)ミツモア 代表取締役 CEO
Winning Women Networkの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2021年2月1日特大号に掲載された記事をご紹介します。

私は子供のころから夢見がちのこだわり屋でした。授業中でも空想の世界にいってしまったり、小説を書くのが楽しくて、小学生新聞向けの小説を書いたりしていました。そそっかしく無計画、でも熱中すると止まらない、という性格は子供のころから変わっていません。

社会人になって外資コンサルで働き始めてからは、こだわりすぎが裏目に出て苦労しました。調べすぎてアウトプットが結局時間内に仕上げられなかったり、仕上げられても詳細すぎて逆に分かりにくくなってしまったりと、仕事に必要なバランスを欠いていたんです。そのため、先輩や上司からはひたすら「時間内にまとめる」「大局観を持ち独りよがりにならない」という教育を受けました。自分の傾向と真逆のため、当時は本当に苦しみましたが、現在なんとか会社経営ができるのは、まさに当時に培った大局観のおかげです。

その後、MBAをとってシリコンバレーで就職するのですが、日本を離れて生活しているうちに「日本のためになにかしたい!」という気持ちが強くなってきました。かつてGDPが世界2位の経済大国であった日本が、他国に抜かれ縮小均衡に陥っているのを見て、ITの力で日本経済に貢献し、日本をワクワクする国にしたい、という想いが強くなったのです。日本にはITサービスはあふれており、製品を買うにはアマゾンや楽天があります。でも、こと「サービス」、それも見積が必要な複雑なサービスに関しては、巨大市場であるにもかかわらず、効率化が進んでいません。考えた末、「見積もり」という分野の自動化・効率化をすすめるべくミツモアを起業しました。

起業してからは楽しさと困難の連続です。「見積を自動化する」プロダクトを作るのに自ら携わっているのですが、数百もの業種を深く理解し、依頼者が理解でき、事業者が回答できる算出式に落とし込んでいくのは、とにかく大変です。一方、こだわりや情熱を爆発させられて、しかもそれが実際に世の中で使われるものになるのはうれしい限りです。あきらめずに4年間続けることで、ユーザーに受け入れられるものがようやくでき、従業員も100名を超える規模になりました。社会人時代はデメリットだと思っていた自分の特性も、起業をする上ではメリットになるんだ、と実感しています。

短所は常に、長所の裏返しです。活躍の場を選ぶことにより、短所は長所にもなります。

日本は同調圧力が強く、特に女性は「仕事しながら家庭も大事にして、なんでも完璧にこなさなきゃ」とプレッシャーを感じる人も多いかと思います。でも、私は、色んな人がいて凸凹が受け入れられる社会の方が、幸せな人が増えるのではないかと思っています。器用な人も不器用な人も、それぞれの輝き方があります。「こうでなきゃ」を捨てて、輝ける場所を自らつかみ取りにいくのが、幸せの方程式なのではないでしょうか。

(「旬刊経理情報」2021年2月1日特大号より)
(企画・協力 EY新日本有限責任監査法人 EY Entrepreneurial Winning Women)

石川 彩子

石川 彩子(いしかわ・あやこ)
2007年に東京大学法学部を卒業、2007年から2012年までベイン・アンド・カンパニーで戦略コンサルタントとして勤務。米ペンシルバニア大学Wharton校でMBA取得ののち、2014年からシリコンバレーのスタートアップ企業Zazzleでプロダクト開発・マーケティング・ファイナンスを担当。その後日本に帰国し、2017年2月㈱ミツモアを創業。米国ではローカル(地域密着型)サービスの市場効率化を目指すプラットフォームが複数誕生しているが、日本ではこの分野がまだまだ成熟しておらず、先駆者としてチャレンジしていきたいとの思いで起業。