旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』

第46回 与えられた環境の中でも最善を尽くせば、道は自然に拓ける

2021.04.28
高山 靖子
(株)千葉銀行 社外取締役/三菱商事(株) 社外監査役/横河電機(株) 社外監査役/コスモエネルギーホールディングス(株) 社外取締役(監査等委員)
Winning Women Networkの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2021年1月1日特大号に掲載された記事をご紹介します。

成功している女性は、将来やりたいことを明確にし、夢と志をもって自らの道を切り拓いてきている方が少なくなくありません。しかし、私は、今日に至るまで、そうした生き方とは縁遠い人生を送ってきました。

私は新卒で(株)資生堂に入社しました。当時は男女雇用機会均等法施行前で、女性が働き続けることは周囲から期待されていない時代です。私も働くことやキャリアについて明確な考えをもっていたわけでもなく、たまたま縁があって腰掛け気分で入社しまったという、振り返ってみれば、恐ろしく安易な社会人のスタートでした。でも、仕事を通して多くの人と出会い、社会の仕組みを知り、お客さまや周囲の人のお役立ちができることの喜びを経験。自分の成長実感を通して、働き続けることはやはり人生を豊かにすることであると遅ればせながら考えるようになりました。やがて、管理職となり、チームで仕事をやり遂げることの達成感や部下が成長する楽しさも知り、これらは大きなやりがいになりました。もちろん一つの企業組織の中で30年以上働き続けることは決して平坦な道ではなく、異動の度に、明らかに不得手と思える部署や仕事、相性の悪い上司にも遭遇しました。それでもなんとか目の前の仕事や課題を一つひとつやり遂げることで、自然にキャリアの階段を押し上げられていったように思います。

私は還暦を過ぎても未だに自分探しをしているような未熟な人間ですが、自ら意図せずに軌跡として描かれた私のキャリアが、不思議にも私に向いている領域を浮かび上がらせ、社会にお役立ちができる領域を指し示してくれている気がしています。キャリアは必ずしも自分で切り拓くものだけでないというのが実感です。

私が仕事に向き合うとき、大切にしてきたことがあります。それは与えられた環境を所与のものとし、どんな状況でも最善を尽くすことです。最善を尽くすとは、仕事の襟好みはせず、先入観を捨て、どんな仕事にも好奇心をもって向きあうことです。すると、自分なりの発想や新しいアイデアが浮かんできて、仕事が断然面白いものになり、そのプロセスの全てが自分の成長の糧となります。そうした姿勢で仕事に向き合っていると、不思議と社内外にさまざまなご縁が広がっていきます。(株)資生堂を退職後も、企業の社外役員をはじめ、政府や自治体など多方面で仕事をさせていただいていますが、このご縁の賜物であり、仕事に向き合う姿勢は今も変わりません。物理的に可能な限り、まずは何でもチャレンジしてみることにしています。

このような生き方は、一見、なりゆき任せの生き方に見えるかもしれませんが、人生をよく生きるには、ありたい自分の姿に固執しないことも一つの道です。人生は決して自分が思うようにはいかないものです。いつも自分を斜め上から客観的に見つめながら、与えられた環境に対して誠実に向き合い、自ら挑戦し続けていれば、そこに道は自ずと拓けると確信しています。

(「旬刊経理情報」2021年1月1日特大号より)
(企画・協力 EY新日本有限責任監査法人 EY Entrepreneurial Winning Women)

高山 靖子

高山 靖子(たかやま・やすこ)
1980年(株)資生堂入社。主に消費者対応、マーケティング、コーポレートコミュニケーション、サステナビリティなどの業務に従事。お客さまセンター所長、CSR部長等を経て、2011年同社常勤監査役。2015年同社顧問。現在、上記社外役員の他に、厚生労働省中央労働委員会委員、法務省法制審議会委員、独立行政法人国民生活センター紛争解決委員会委員などを務める。