旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』 ー 第44回 経験も知識もゼロからの起業 ~仲間の夢を叶えることが自分のキャリアに~

西原 良子
(株)アトリエはるか 代表取締役社長

Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2020年11月1日号に掲載された記事をご紹介します。

OL2年目の24歳の頃、終業時間に合わせて髪型やメイクを完璧に整え、ほぼ毎日合コンに行っていました。ある時、「毎回のヘアメイクをプロに気軽にやってもらえるお店があったらいいな!」と思い創業しました。経営した経験も美容業界についての知識も皆無な状態からのスタートでしたので、「お店を出すならこの商業施設がいいから、どうやったらここに出店できるのかインフォメーションのお姉さんに聞いてみよう」、「価格は私だったらこのくらいなら払えるからこの値段にしよう」といった具合に、ただただ自分の行きたい店づくりをしました。

そんなわが社も現在創業20年、ヘアメイク専門店として駅ナカ駅チカで全国61店舗を運営しています。美容室とは異なり、カット、パーマ、カラーは行わずヘアのスタイリングとメイクアップを短時間&リーズナブルに行い、女性がデートやパーティーの前に気軽に利用できる便利なお店です。今では年間70万人のお客様にご来店いただき、年商30億まで成長させることができました。

どうして、ただのOLがここまでやってきたのかというと、起業したものの事業にはゴールがなかったからだと思います。

よく人から「ヴィジョンはなんですか?」と聞かれます。正直「あったらいいな」でお店を作り、野望もなく目先のことしか考えておらず、ただ目の前の課題を解決してきただけなので、その質問にうまく答えられません。あえて言うならば、創業時より『夢シート』というツールを使って、従業員に個人の夢やお店の課題、今伝えたいことを書いてもらっているのですが、その夢には『結婚しても働きたい』や『バーキンが似合う女子になる』なさまざまな意見があります。ひとまずこの夢をかなえられる会社になろうと思いながら成長させてきました。結婚しても働きやすい制度を作ったり、バーキンを買えるように社員の平均年収を上げていくこと、女性役職者を増やすためにポジションを増やすなど取り組んできました。そんな従業員たちの夢も、会社が成長すれば変わり大きくもなります。それを叶えられる企業にし続けるには終わりがありません。それでいいのだと思っています。

また私は「失敗したらどうしよう」「恥ずかしい思いをしたくない」と足踏みをすることがありません。「失敗してもいい」と思っていますし、まずは即実行です。失敗しても嫌な思いをするのが自分だけで、誰かが傷つくわけでないのならいいじゃない、と思うのです。この考え方が、なにもないところからスタートできた理由なのかもしれません。

私にはキャリア形成のために何かしたというより、一緒に働く仲間の夢を叶えるために自分にできることしていった結果、後からキャリアがついてきた感じです。会社の成長と共に自己成長をし、昨日よりも今日、今日よりも明日と一歩ずつ積み重ねた生き方をして参りました。

仕事はいつも身の丈に合わせてするようにしています。能力以上のことを求めて、できなくて自己嫌悪に陥ったり、不安になったりするより、今の自分を認めてできることを積み重ねていった方が、振り返ってみるとより良い成果になっている気がします。

(「旬刊経理情報」2020年11月1日号より)

(企画・協力 EY新日本有限責任監査法人 EY Entrepreneurial Winning Women)

最勝寺 奈苗

西原 良子(にしはら・りょうこ)
(株)アトリエはるか 代表取締役社長

2000年12月、24歳のときに女性の「あったらいいな」を叶えるべく、愛知県名古屋市に有限会社アトリエはるかを設立。2001年2月に名古屋のセントラルパークにヘアメイク&ネイルサロン「atelier haruka」1号店をオープンした。20年目を迎えた現在では、東京、名古屋、大阪、福岡を中心に全国61店舗を展開。年商30億円のヘアメイク業界大手企業へと成長した。3人の子供を育てながら経営を行う一方で、自身の経験をもとに女性の働き方などをテーマに講演も行っている。