旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』

第38回 男女がともに活躍する社会の実現のために

2020.08.27
井口 恵
株式会社Kanatta 代表取締役社長
Winning Women Networkの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2020年5月1日号に掲載された記事をご紹介します。

私はもともと起業しようと思っていたタイプではなく、むしろ新卒では監査法人というお堅い職場に入社しました。会計士になったのはお金を稼ぎたかったからという安直な理由からです。父の仕事の都合で小学校の6年間をアメリカで過ごしたため、幼い頃から貧富の差を感じる機会がたくさんありました。私が住んでいたコネチカット州は高級住宅街で、近所にはベッドルームが10個以上ある、館のような家がありました。一方で今日を生きられるかもわからないような浮浪者の人々も目にしました。そのような現実を幼少期に目の当たりにし、物心がついたころには、大人になったらバリバリ働いてお金を稼げるようになりたい、と思うようになりました。

監査法人では第一希望の国際部に配属になり、こちらも第一希望だった外資系のクライアント担当になりました。当時はリーマンショックの直後で採用を絞っていたので、希望が通りやすい環境だったように感じます。

新卒の私が本格的に入社したのは4月。繁忙期真っただ中でした。入社初日から終電帰りという洗礼を受け、社会人はこんなに大変なのか、と嘆きながら男性ばかりの職場で一生懸命働いていました。もともと男性と対等に働きたいという想いから会計士を志した面もあるので、そのような生活に対する不満はなかったものの、「結婚して子供ができてもこれが続くのだろうか」という漠然とした不安が年々大きくなっていきました。

そのような不安を解消できないまま3年が経過し、2013年にはLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン・ジャパンに転職しました。LVMHは女性が8割。子育てをしながら働く方が多く、フランスの会社ということもあり、基本的に毎日定時帰りでした。ブランド物に囲まれ、得意な英語も活かすことができる楽しい日々を送っていましたが、すぐにあることに気づいてしまいました。従業員はほぼ女性であるものの、役員は皆男性だったのです。

学生時代にはあまり感じることのなかった男女の差を、社会人になった途端多くの場面で痛感しました。そして、そのようななかで目標を諦めていく女性もたくさん目にしました。これはなんとかしなければという想いから、起業することを決心しました。そして「シマムラジュク」という起業塾で、主宰の嶋村吉洋さんから学びながら、ジェンダー平等の実現を理念に「Kanatta」を立ち上げました。

現在はドローンの魅力を発信する女性のチーム「ドローンジョプラス」や、女性を応援するクラウドファンディングなどを運営しています。起業してからは困難ばかりでしたが、まわりの方々にたくさんのご支援をいただきながら、チャレンジし続けています。会社で働く中でも、いろいろな障害があると思いますが、より多くの人々がジェンダーに関係なく活躍し続けられる社会を実現したいと思っています。日本はまだまだ女性が活躍する余地があります。これからの日本を担う女性にとって、私もロールモデルの1人になれれば幸いです。

(「旬刊経理情報」2020年5月1日号より)
(企画・協力 EY新日本有限責任監査法人 EY Entrepreneurial Winning Women)

井口 恵

井口 恵(いぐち・めぐみ)
株式会社Kanatta 代表取締役社長

2010年横浜国立大学経営学部卒。監査法人やファッション業界での経験を経て、2016年に株式会社Kanattaを創業。SDGsの取組みの1つである「ジェンダー平等の実現に貢献する」ことを理念に、さまざまな分野での女性の活躍や社会進出を支援するコミュニティ「kanatta」の形成に尽力している。その代表格である、ドローンの魅力を社会に発信する女性チーム「ドローンジョプラス」は約100名に成長。女性が社会で活躍する場を提供している。