旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』

第29回 キャリアにも学問のススメ ~やりたいことより、やれることを積み重ねるために~

2019.11.27
崔 真淑
エコノミスト、一橋大学大学院博士後期課程在籍
Winning Women Networkの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2019年8月1日号に掲載された記事をご紹介します。

皆さま、はじめまして! 3足の草鞋を履く、エコノミストの崔 真淑(さい ますみ)です。ここでは、独立や起業を考えている方に、私の失敗談や経験を伝えることで、皆様のキャリアを歩むためのヒントになればと思います。

学問という軸の有効性
一般的には、エコノミストは大学やシンクタンクで経済分析や関連論文を職業にする方がほとんどです。3足の草鞋と付けているのは、上記の業務以外の仕事も行っているからです。

1つ目は、メディア等での経済解説で、最大でレギュラー番組を9本持たせていただき、今も行わせていただいています。2つ目は、上場企業での社外取締役や、IPO準備企業へのファイナンスやガバナンスに関するアドバイザー業務です。3つ目は、大学院での学術研究です。経済学の手法を用いて、企業の財務意思決定やガバナンス(経営者の暴走や乱脈経営を阻止する制度)についての研究で、今も論文作成の真っ只中です。この3つの業務を自分の会社を通してマネジメントを行なっています。

一見、全てバラバラの仕事に見えるでしょうし、こんなにパラレルだと頭が混乱しそうです。しかし、これらはすべて、私にとっては同じです。経済学という1つを軸に、研究と実践を行っているだけなのです。ここで皆さまにお伝えしたいのは、ビジネスを行う際にも、軸となる学問的視点を持つことの有用性です。たまに、専門性を持とうとしてジャンルを問わずあらゆる資格や教養に飛びつく方がいらっしゃいます。また不安にかられて情報取得ばかりに時間を割く人なども。私もこれらのことを経験してきました(笑)。

しかし、不思議なことに社会人大学で経済学やファイナンス理論を通して世の中を見る癖ができたら、そうしたことが収まったのです。情報取得よりも、自分に必要な情報を見定め、多数ある情報から情報間に共通する未来予測に活かせるような汎用的部分の抽出などが、それです。それは、バラバラだった日々の情報や経験が、知識に昇華できるような感覚です。こうしたことを繰り返していくと、日々いろんなトライアンドエラーを繰り返すことで自分のキャリアにどう一貫性を持つべきかも見えてきました。もしも、先行きをどうすべきか迷っている人がいたら、社会人大学院はおススメです。今一度立ち止まって、積んできた経験や情報の整理にもなるでしょう。

やりたいことより、できることを大切に
最後に皆様にお伝えしたいのは、wantよりcanを繰り返すことの大切さです。今はエコノミストとして活動を行っていますが、その前は新興国で起業も経験しました。しかし、それはあまりにも自分の能力とかけ離れていたため、失敗に終わります。帰国後に経営者の知人にいわれたのは、wantよりcanの大切さはもちろん、ピボットの重要性です。これはベンチャー企業などで使われる言葉ですが、まずは軸となるすぐにキャッシュを稼げる事業を行いつつ、まだお金にならないけど将来性のある事業を育てようという意味です。そこで気持ちを改めて、今すぐお金を稼ぐために帰国後に経済セミナーを行いました。最初のお客様は2名でした。しかし、その積み重ねもあってか、1,000以上の会場での講演、レギュラー番組、社外取締役と自分のピボットになる業務を広げさせていただいています。そこにはご縁はもちろん、学問があったことが大きいです。

もしも、何か新しいことを始めたい時は、canを大切にしつつ、学問に触れることをおススメします!

(「旬刊経理情報」2019年8月1日号より)
(企画・協力 EY新日本有限責任監査法人 EY Entrepreneurial Winning Women)

崔 真淑

崔 真淑(さい・ますみ)
エコノミスト、一橋大学大学院博士後期課程在籍

専門はコーポレート・ファイナンスとコーポレートガバナンス。Good News and Companies代表取締役。(株)シーボン社外取締役。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。東京証券取引所特任講師。テレ東、NHK、BSスカパー!、日経CNBC『崔真淑のサイ視点』等で経済解説を行う。