旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』

第28回 キャリア構築の秘訣 ~毎日の変化に日々対応し常に進化する~

2019.10.31
上條 由紀子
特許業務法人太陽国際特許事務所 弁理士
Winning Women Networkの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2019年7月1日号に掲載された記事をご紹介します。

1999年に弁理士試験に合格してから20年という節目の年を迎え、改めて自分自身のキャリアを振り返ってみると、ひとえに周りの皆様のお力添えと恵まれた環境のおかげでここまで進んでくることができたと実感している。そのうえで、自分自身のキャリアに対する心構えや考え方が、少しでも皆様のお役に立てれば幸いある。

私自身、幼少のころから不思議と植物や動物をはじめ「科学技術」にまつわるものが大好きで、トマトの栽培、天体観測、食塩水の蒸留実験に至るまで自宅で試みる理系少女であったと同時に、地球儀を眺めつつ「世界の子供たち」というTV番組を熱心に見て「いつか全世界に友達を作ろう!」という野望を持つ一風変わった子供だった。そして、結局半世紀に渡る人生のほとんどを「科学技術と社会の橋渡し」に関わって生きてきた。

大学・大学院にて応用化学科および物質科学専攻に所属し、環境化学・高分子化学の研究に取り組んだが、自分自身は「科学技術」の研究者よりも、「様々な技術を実際に社会で役立つよう橋渡しをする」仕事がしたい、と思うようになり、それを実践できるキャリアとして、20代は母校の中学理科教員の仕事に携わった。中学教員として科学技術の知識や面白さを次世代の若者達に伝えることで、「科学技術の社会への橋渡し」に取り組んだわけだが、実際には自分自身の未熟さを思い知るとともに、「人と人とのコミュニケーションの重要性」や「真心を持って人と接することの大切さ」を痛いほど学んだ時期でもあった。

そして、中学教員として勤務する傍ら、「科学技術の社会への橋渡し」をするお仕事に携われる「弁理士」を目指し、1999年に合格してから20年目を迎え今に至る。弁理士としての仕事としては、特許事務所において企業の発明の特許出願・権利化業務、海外出願業務を行うことに始まり、職場を大学に移してからは、知的財産マネジメントや産学連携に関する研究や社会人大学院における知的財産人材育成に取り組んできた。

自分自身のキャリア構築においては、「1本の柱のみではなく、異なる分野において少なくとも3本以上の柱を立てていくことが大切」と考えてきたので、「高分子化学・環境化学分野の専門性」に加えて、「知的財産権に関する法律の知識・実践スキル」、「知的財産マネジメントに関する経営の知識・実践スキル」を身につけるべく実務経験を積んできたのだが、実社会においては、人と人との繋がりを大切にし、周りの皆様のお役に立てるよう微力ながらも力を尽くし、一方で、周りの皆様にご支援やお力添えをいただけるよう働きかけていくことが、最も大切であることを日々実感している。

また「科学技術」のみの力では、社会課題を解決してよりよい未来を作るには十分ではないこともわかってきたので、自分自身の今後のキャリアにおいては、「科学技術」に加えて、組織、ファイナンス、政策など様々な社会資源を活かしながら、人材育成の現場で起業家を目指す未来を担う若者達の心に火をつけて、後押しをしていく仕事にも力を注いでいく所存である。キャリア構築は一日してならず、予測できない様々な変化に日々対応しながら、知恵を絞り、常に進化していくことを自らに課していくことが唯一の秘訣だと感じている。

(「旬刊経理情報」2019年7月1日号より)
(企画・協力 EY新日本有限責任監査法人 EY Entrepreneurial Winning Women)

上條 由紀子

上條 由紀子(かみじょう・ゆきこ)

慶應義塾大学大学院理工学研究科前期博士課程修了後、2000年に弁理士登録。同年、太陽国際特許事務所へ入所。東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、慶應義塾大学DMC統合研究機構専任講師、金沢工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科准教授、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任准教授を経て、現在、弁理士として企業やスタートアップの知財面からの支援に従事。エムケー精工株式会社社外取締役、FFGベンチャービジネスパートナーズシニアアドバイザー、総務省情報通信審議会専門委員等も務める。