旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』―第25回 才能よりも努力よりも、運とご縁が道をひらく

水野 稚
(株) Primus Edge代表取締役/プリムスアカデミー代表

Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2019年4月1日号に掲載された記事をご紹介します。

私が起業したのは40代です。短大卒業後、社会人、専門学校を経て4年生大学に編入。その後、企業向け英語研修講師や大学院生、大学非常勤講師をしていました。それからOxford大学院に留学し、紆余曲折あって、今日に至ります。本稿では、こうした歩みを振り返りつつ、いま私をここに連れてきてくれたものについて、お話ししたいと思います。

かつて私は、自分のことを「山登りタイプ」の人間だと認識していました。頑張って努力して自分を追い込んで、苦しみや辛さと引き換えに目標を達成し、才能を磨くことができると信じていたのです。しかし、そのような日々においても、今日まで続く道へと導かれたのは、実は努力よりも才能よりも、運とご縁のお陰であると確信するようになりました。第一志望の短期大学に不合格となり、不本意ながら進んだ先での恩師との出会い。英語から逃げるようにして進んだ日本語教師養成学校がきっかけなった企業向け英語研修とのご縁。指導教官の辛抱強い説得で、渋々決意した大学院留学。起業したのも、友人の紹介で出会ったメンターに、何年もかけて説得されたことがそもそもの始まりでした。

こうして振り返ると、これまでの道のりは、自分から望んだものではなく、むしろ嫌だと思って避けていたものが多いことに気がつきます。もちろん、最終的には自分で判断していたものの、恩師やメンターのご助言やご忠言を通じて、何か大きな力が働いていたとしか考えられないのです。努力や才能は、そうした大きな流れのなかでこそ活きるのだと思うに至りました。

現在、私は自分のことを「川流れタイプ」だと自覚しています。特段の目的や目標は持たずに、大きな流れに身を任せています。山と川とどちらが良い悪いという話ではなく、私自身は、川のほうが持ち味を活かせると感じています。自分が「川流れタイプ」だと気づいてからは、かつての癖である「努力に逃げる」ことが少なくなってきました。その代わり、自分のすべきこと、魂が動くことに集中します。もちろん、思うようにならないこともままありますが、そうすることで新たなご縁がもたらされ、文字どおり、どこかに「運」ばれて行くようです。このコラムを執筆させていただいたのも、そんなご縁のなせる業だとありがたく思っています。

2017年の創業以来、弊社は英語教育や国際交流/協力事業を展開しています。私の母校であるOxford大学と連携しながら、「世界と伍して渡り合う力を磨くプログラムOxford English Method™」を開発し、B to Bにて高校生から社会人を対象にご提供しています。さらに、駐日各国大使館との協力体制により、次世代を担う中学生から高校生を対象とした国際交流/協力プログラムも手がけています。これらの事業も、運とご縁のお陰でもたらされた閃きが発端となっています。

若い世代の皆さんにおかれましては、自分の心の声に耳を澄まして、閃きを現実にするために、「深刻」でなく「真剣」な努力を重ねられ、大きな流れのなかで、運とご縁を大切にされながら、ご自分の道をひらいていかれると良いかも知れません。陰ながら応援しております。

(「旬刊経理情報」2019年4月1日号より)
(企画・協力 EY新日本有限責任監査法人 EY Entrepreneurial Winning Women)

水野稚

水野 稚(みずの・ゆか)

企業英語研修講師を経て、30代で東大大学院やOxford大学院に進学。慶應や上智大等で非常勤講師を務め、2017年に起業。「世界と伍して渡り合う力を磨くOxford English Method™」を学校や企業向けに開発している他、Oxford大学や駐日各国大使館と連携した国際教育プログラムを展開。英語学習関連著作やメディア掲載多数。Oxford大学修士号、青山学院大学修士号、東京大学博士課程満期退学。