旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』

第11回 キャリアのかたち

2018.03.01
加藤 史子
WAmazing(株) 代表取締役
Winning Women Networkの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2018年2月1日号に掲載された記事をご紹介します。

「いいんだよ。川下り型のキャリアと山登り型のキャリアがあるんだから」とは、あるとき、上司との面談で言われた言葉でした。

上司の言う、「川下り型のキャリア」とは、川を目の前にして、その状況に対応しながら下るうちに、やがては大海に出るように、目の前の仕事に懸命に対峙することでいずれは道が開けることを指しており、「山登り型のキャリア」とは、自分の目指すキャリアビジョンを明確に描き、そこに向かって1歩1歩近づいていくことを指していました。上司は将来のキャリアビジョンを問われ返答に窮した私に対して、「明確に目指す山の頂上がなかったとしても、それも間違いではない」と話してくれたのです。

当時、私は31歳、1年間の産休・育休を経て第1子出産後に復職した頃でした。初めての育児と仕事との両立に精一杯で、日々の生活を工夫しながら、なんとか出産前と同じく成果を上げたいと必死でした。まさに急流の川下り、次々と出てくる小さな滝や岩を避けてよいコース取りをすることに集中していて、遠く高い山の頂を見上げることはしていなかったのです。その後、第2子が生まれ、その4カ月後に復職したときには、0歳と3歳の育児と仕事の両立という川下りをするうちに覚えた岩や急流の避け方とともに自分なりのリズムを持てるようになっていました。何事も慣れと工夫、カイゼンです。すると1メートル先ぐらいしか見ていなかった状態から、登りたい山、目指したい頂が見えてきたのです。

当時の私の仕事は、じゃらんリサーチセンターという部署で、行政からの受託事業で観光による地域活性を行うことでした。あるとき、長野県庁から「県内には100箇所近いスキー場があるが来訪客が最盛期の半分程度に激減していて地域の衰退が激しい」という悩みを相談され、「雪マジ! 19」という若者(19歳)のスキーリフト券を無償化することで来訪客の裾野を広げ、中長期的な客数増加を図る事業を立ち上げました。この事業は今では日本中のスキー場の約半数に当たる200箇所が参加し、ひと冬に約60万人の19歳が雪山に向かうプロジェクトに成長しています。若者の旅行需要創出による地域活性化の登山が軌道に乗ってくると、隣に見える、さらに険しい名峰が気になってくるものです。「仕事の報酬は、仕事である」ということで、私は新しい山に登りたくなってきました。

2016年7月、40歳で、18年間勤めたリクルートを退職し、WAmazingを創業しました。急増するインバウンド、訪日外国人旅行者と日本の隅々の地域までを結びつける事業を展開しています。創業1年半ですが、正社員23名、外部資金調達も行い、訪日外国人旅行者による観光振興と地域活性を実現するべく奮闘しています。仕事人生は長く、川を下るときも山を登るときもあります。目指したい頂が見えないときも焦らず、諦めない気持ちが大切だと感じています。

(「旬刊経理情報」2018年2月1日号より)

加藤 史子

加藤 史子(かとう・ふみこ)
WAmazing(株) 代表取締役
1998年に(株)リクルート入社。「じゃらんnet」や「ホットペッパーグルメ」などネットの新規事業開発を担当後、じゃらんリサーチセンターに異動。スノーレジャー再興を目指す「雪マジ!19」を立ち上げた。2016年7月にWAmazing(株)を創業し、訪日外国人観光客向けスマートフォンアプリ「WAmazing」をスタートさせる。SIMカードによるインターネット通信環境の無償提供と日本旅行に必要な宿泊、アクティビティ等の予約や購入機能を提供。