旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』― 第6回 会計スキルをステップに、自分色の可能性の扉を拓く勇気を!

中沢 ひろみ
(株)シーボン 監査役

Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2017年9月1日号に掲載された記事をご紹介します。

学生時代はバブル全盛期で、自分の将来のキャリア形成を特に真剣に考えることもなく、"何となく、社会や経済の勉強になりそうだから"と、かなり曖昧な動機で、銀行に入社しました。しかし、支店勤務が3年も経つと、仲のよかった同期の女性の多くは、結婚や留学などでいなくなり、後輩の男性には追い抜かれました。総合職でのキャリアはスーパーエリートの一部の優秀な女性のみに約束されている険しいハードルのように思え、悶々としたこともありました。そんななか、職場の先輩にアドバイスを受けたことがきっかけで、遅まきながら始めたのが、簿記や財務分析の勉強です。取引先の会社の経営状況が会計知識を通じてわかるようになることが面白く、もっと専門的に"企業の成長を支援できるようになりたい"という想いが高じて会計士の道を選び、会計事務所や事業会社での勤務を経て、現在に至っています。

会計事務所時代は、はじめのうちこそ監査チームのなかで「紅一点」ということも多かったため、担当先の会社の経理の方に珍しがられることもありましたが、仕事自体に男女の区別はなく、ハードワークを通じたやりがいを実感することができたのもその環境のおかげだったと感じています。受験以来触れていなかった英語も、仕事での接点を通じ、メールや会議がこなせるようになりました。

提携先の海外の会計事務所と連絡を取り合ったり、協働プロジェクトのマネージャーとして取りまとめを行うような業務が増えるにつれ、海外の女性会計士や経理担当者とのコミュニケーションが増えました。出張先でお会いする、現地の経理責任者や会計事務所のマネージャー達は圧倒的に女性が多く、自然体でタフに働く姿には刺激を受けました。ロサンゼルスの会計事務所を訪ねた折には、所内に託児所もあると知り、環境や働き方の違いに驚きました。

その後、シンガポールで現地の監査チームのマネージャーの経験もさせていただきましたが、10人余りのメンバーは国籍もバラバラで、男性は多くて1名程度というチーム構成でした。ガールズトークが飛び交う現場で、仕事の話もプライベートの会話もおしゃべり好きな女子に囲まれながら、時には意見を戦わせ一緒に働くなかで、違いを認め合うことを通じた不思議な連帯感や絆が生まれました。私の英語力が飛躍的に向上したのもこのときでした。

日本では、まだまだ男性が圧倒的に多い業界で、しかも女性は監査法人に勤務する方が多いのですが、海外では男女の比率は完全に逆転し、むしろ女性中心といってもよいくらいです。資格の有無を前提とせず、会計事務所に就職して監査や内部統制の業務を経た後、事業会社でコントローラーや内部監査人となったり、独立して経営者となったりとさまざまな分野での多様なキャリアの積み方が普通のこととなっています。日本でもグローバル化とともに会計スキルをベースにしながら、勇気を持って活躍の場を拓く女性が増えることを応援したいと思います。

(「旬刊経理情報」2017年9月1日号より)

中沢ひろみ

中沢 ひろみ(なかざわ・ひろみ)
(株)シーボン 監査役
公認会計士。大学卒業後、約5年間勤めた銀行(現㈱三井住友銀行)を退職後、会計士となる。新日本有限責任監査法人では、上場企業の監査業務のほか、ベンチャー企業支援プロジェクトの立上げなどにも携わる。(株)日本電産の内部監査部門マネージャーを経て、2013年より(株)シーボン勤務。経理財務担当執行役員を経て、現在に至る。