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情報センサー2017年11月号 Tax update

スクイーズアウトに関する税制改正

EY税理士法人 税理士 服部孝一
他大手税理士法人、EY税理士法人にて計約17年超にわたる本邦・国際税務の経験を有する。国内およびクロスボーダーM&A/グループ内組織再編、M&A税務スキームの構築、税務デューデリジェンス業務などに従事。

Ⅰ はじめに

スクイーズアウトとは、一般に、株式公開買付(TOB)等を通じて対象会社株式の大部分を取得した後で、少数株主から強制的に現金を対価として株式を取得し、対象会社を100%子会社化することを言います。スクイーズアウトについては後述する幾つかの手法がありますが、経済実態としては同様でも完全子法人に対する課税上の取扱いが不整合であったため、見直しがなされました。また、税制適格要件の対価要件について、対象会社株式の3分の2以上を保有する場合には、その大株主が株式の所有を通じて対象会社の資産を引き続き支配している状態と言えることから、少数株主への金銭対価の交付をしても対価要件に抵触しないように手当がなされました。その他、関連する項目の改正がなされています。なお、これらの改正は、平成29年10月1日以降に行われる組織再編について適用されます。

Ⅱ 金銭交付による完全子法人化(スクイーズアウト)に係る税制の見直し

実務において、少数株主から金銭交付により株式を取得して完全子法人とする手法として、一般的に、全部取得条項付種類株式の端数処理、株式併合の端数処理及び株式売渡請求の三つの手法があります。これらの手法について、株式交換と同様に、組織再編税制の一環として位置付けられることとなりました。
この改正に伴い、企業グループ内の株式交換と同様の税制適格要件を満たす場合においては、適格株式交換による完全子法人化の場合と同様に、一定の資産の時価評価制度の対象外となり、連結納税制度の適用においては、開始又は加入前の欠損金を特定連結欠損金として連結納税グループに持ち込んで繰り越すことが認められます。
一方で、税制適格要件を満たさない場合においては、非適格株式交換による完全子法人化の場合と同様、完全子法人は一定の資産について時価評価課税制度の対象となります。 (<表1>参照)

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Ⅲ 合併・株式交換における組織再編の税制適格要件(対価要件)の見直し

発行済株式の3分の2以上を有する場合の吸収合併及び株式交換においては、その再編に当たって少数株主に交付する対価が、対価要件の判定から除外されます。これにより、少数株主へ金銭交付等を行った場合においても、他の税制適格要件を充足している限り適格再編として取り扱われることになります。
現行制度では、金銭交付型株式交換の手法によると、非適格再編として株式交換完全子法人の一定の資産の時価評価が必要になります。そのため、非適格再編による時価評価課税の適用がなされないように、発行済株式の大部分を取得した上で、前述のスクイーズアウトの手法により完全子法人化を行っているケースがみられました。本改正では、これらの手法について、金銭交付型株式交換と経済的実態が類似していることから、株式交換と同様の組織再編税制を適用させるという整合的措置がなされました。

Ⅳ 株式交換・連結納税における資産の時価評価制度の見直し

非適格株式交換等に係る完全子法人等が有する一定の資産の時価評価制度及び連結納税の開始、又は連結納税グループへの加入に伴う資産の時価評価制度について、時価評価の対象となる資産から帳簿価額が1,000万円未満の資産が除外されました。
資産の時価評価に当たって、改正前の税務実務ではいわゆる自己創設のれんの時価評価課税が行われていましたが、帳簿価額のない自己創設のれんは、本改正により時価評価の対象外になります。(<図1>参照)

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Ⅴ スクイーズアウトに係る自己株式取得によるみなし配当事由の見直し

みなし配当事由となる自己株式の取得から、「全部取得条項付種類株式に係る定めを設ける旨の定款変更に反対する株主からの買取請求に基づく自己株式の取得」が除外されることとなりました。但し、株主がその全部取得条項付種類株式の取得決議に係る取得対価の割当てに関する事項を知った後に買取請求を行った場合で、買取請求しなければ端数となる株式のみの交付を受けることとなる場合に伴うものに限られます。これにより、スクイーズアウトの手法による(少数)株主の課税上の処理に差異が生じなくなります。
(<表2>参照)

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