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情報センサー2016年6月号 Tax update

平成28年度税制改正

EY税理士法人 公認会計士 南波 洋
1993年から、太田昭和アーンスト アンド ヤング(現EY税理士法人)にて、日本企業・外資系多国籍企業に対する国内および国際税務アドバイザリー業務に従事。国際税務、税制改正、組織再編税制などに係る講演、寄稿、執筆多数。2004年から、日本公認会計士協会 租税調査会国際租税専門部会 専門委員。

Ⅰ はじめに

平成28年3月29日に、平成28年度税制改正法案が国会で成立しました。以下、法人企業に関連する主要な税制の改正・見直し項目を説明します。

Ⅱ 法人実効税率の引下げ

法人税の税率(現行23.9%:普通法人)が23.4%に引き下げられます※1。また、平成30年4月1日以後開始事業年度においては、さらに23.2%に下げられます。
国・地方を通じた標準的な法人実効税率は、平成27年度の32.11%から29.97%(平成28年度)に、さらに29.74%(平成30年度)に下がります。政府が目標としていた「法人実効税率20%台」が実現します。この引下げには、法人事業税所得割の税率引下げ(6.0%から3.6%へ)も寄与しています。

Ⅲ 課税ベースの拡大

法人実効税率の引下げのための財源確保として、課税ベースの拡大が図られます。

1. 外形標準課税の拡大(法人事業税)

平成28年度から、法人事業税(地方税)の内に外形標準課税(付加価値割、資本割)が占める割合を、現行の3/8から5/8へ拡大します。付加価値割の税率(現行0.72%)が1.2%に、資本割の税率(現行0.3%)が0.5%に引き上げられます。この改正により、一般的には赤字法人等の税負担が増大します。緩和措置として、今回の改正で税負担が増大した事業規模が一定以下の法人について、3年間は負担増を軽減する措置が講じられます。

2. 欠損金繰越控除制度の改正

大企業における繰越欠損金の控除限度割合(現行:所得の65%)が平成28年度は60%に引き下げられます(引き続き、平成29年度は55%、平成30年度は50%に引き下げられます)。

3. 減価償却制度の見直し

平成28年4月1日以後に取得される「建物附属設備」や「構築物」について、償却方法が「定額法」に一本化されます。

Ⅳ 消費税の改正(軽減税率・インボイス制度の導入)

消費税を10%に引き上げる平成29年4月に、軽減税率(8%)が導入されます。対象は、生鮮食品と加工食品(酒類と外食は除く)です。酒類と外食を除くすべての飲食料品の譲渡にかかる消費税率が8%に据え置かれることになります。また、一定の「新聞定期購読料」も軽減税率の対象となります。
平成29年4月(軽減税率導入)からの4年間は、現行制度を基本的に維持しつつ、区分経理に対応するための措置(区分記載請求書等保存方式)が講じられます。この間、中小事業者(課税売上高5,000万円以下)等には、軽減税率対象売上等をみなし計算によって算定する簡便的な方法が認められます。
平成33年4月からは、「適格請求書等保存方式(いわゆる「インボイス制度」)」が導入されます。「適格請求書」の発行・交付が開始され、以降は、適格請求書の保存が仕入税額控除の原則的な要件とされます。免税事業者(課税売上高1,000万円以下)は適格請求書を発行することができません。原則として、免税事業者からの仕入れに関しては買い手側で仕入税額控除ができなくなりますが、6年間は一定割合の仕入れに関して控除を可能とする経過措置が設けられます。

Ⅴ 国際課税

1. 移転価格文書化制度

移転価格税制に係る文書化制度が、「BEPSプロジェクト」の行動13において示された勧告を踏まえ、整備されます。

(1) 国別報告書(CbCR)の作成・提出

多国籍企業グループ(連結売上高1,000億円以上)の最終親事業体である内国法人等は、当該グループが事業を行う国ごとの収入金額、税引前当期利益の額、納付税額その他必要な事項(国別報告事項)を、最終親事業体の会計年度終了の日の翌日から1年を経過する日までに、当局に提供しなければならないこととされます。この改正は、平成28年4月1日以後に開始する最終親事業体の会計年度に係る国別報告事項について適用されます。

(2) 事業概況報告事項(マスターファイル)の作成・提出

多国籍企業グループ(連結売上高1,000億円以上)の構成事業体である内国法人等は、当該グループの組織構造、事業の概要、財務状況その他必要な事項(事業概況報告事項)を、最終親事業体の会計年度終了の日の翌日から1年を経過する日までに、当局に提供しなければならないこととされます。この改正は、平成28年4月1日以後に開始する最終親事業体の会計年度に係る事業概況報告事項について適用されます。

(3) ローカルファイルの作成・保存

国外関連取引を行った法人は、当該国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類を確定申告書の提出期限までに作成し、原則として、7年間保存しなければならないこととされます※2。この改正は、平成29年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用されます。

2. その他

平成28年度からの国際課税原則の帰属主義への変更等に対応して、クロスボーダーの適格現物出資にかかる対象範囲が見直されます。

Ⅵ その他

1. 役員給与損金算入制度の見直し

役員給与について、損金算入される利益連動給与の算定指標の範囲に、ROE等が含まれることが明確化されます。

2. 企業版ふるさと納税の創設

青色申告書を提出する法人が、地方公共団体が行う地方創生を推進する上で効果の高い一定の事業に対して寄附金を支出した場合に、法人事業税・法人住民税及び法人税から税額控除を認める、企業版ふるさと納税制度が創設されます。

3. 固定資産税の軽減

中小企業者等が、「経営力向上設備等」に該当する一定の機械及び装置を取得した場合には、その機械及び装置に係る固定資産税の課税標準を、最初の3年間、価格の2分の1にすることとされます。


  • ※1平成28年4月1日以後開始事業年度から適用
  • ※2一定の法人については、作成・保存義務(同時文書化義務)が免除される。

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