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情報センサー2015年10月号 Tax update

欠損金の繰越控除制度の見直し

EY税理士法人 公認会計士 南波 洋
1993年から、太田昭和アーンスト アンド ヤング(現EY税理士法人)にて、日本企業・外資系多国籍企業に対する国内および国際税務アドバイザリー業務に従事。国際税務、税制改正、組織再編税制などに係る講演、寄稿、執筆多数。2004年から、日本公認会計士協会 租税調査会国際租税専門部会 専門委員。

Ⅰ はじめに

平成27年度税制改正において、法人税率の引下げが行われました。同時に、この引下げに伴う歳入減に対応する財源確保のために、法人課税ベースの拡大が図られています。「欠損金の繰越控除制度の見直し」もこの趣旨に沿ったものです。以下、見直し項目の概略を説明します。

(下の図をクリックすると拡大します)

Ⅱ 控除限度額の段階的な引下げ

青色欠損金、災害損失金及び連結欠損金の繰越控除制度における控除限度額(現行:繰越控除前の所得の金額の80%相当額)について、次のとおり、段階的に引下げが行われます。

  1. 平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する繰越控除をする事業年度について、その欠損金額控除前の所得の金額の65%相当額とします。
  2. 平成29年4月1日以後に開始する繰越控除をする事業年度について、その欠損金額控除前の所得の金額の50%相当額とします。

中小法人については、改正前と同様に繰越控除制限の対象とはされません。今後も所得金額の100%相当額の控除が可能です。

Ⅲ 再建中の法人と新設法人にかかる特例の新設

前記Ⅱの改正に伴い、過去の欠損金の多寡にかかわらず、所得が発生した年度には相応の課税が生じることになります。再建中の法人が再生計画の見直しを余儀なくされるといった影響や、設立後間もない法人のスタートアップへの影響などに配慮して、平成27年4月1日以後に開始する事業年度について以下の措置が取られます。

  1. 更生手続開始の決定、再生手続開始の決定があったこと等の事実が生じた法人については、その決定等の日から更生計画認可の決定、再生計画認可の決定等の日以後7年を経過する日までの期間内の日の属する各事業年度については、控除限度額が所得の金額の100%相当額とされます。ただし、取引所への再上場等があった場合におけるその再上場された日等以後に終了する事業年度についてはこの特例の対象外となります。
  2. 新設法人について、その設立の日から同日以後7年を経過する日までの期間内の日の属する各事業年度については、控除限度額が所得の金額の100%相当額とされます(取引所に上場された場合等におけるその上場された日等以後に終了する事業年度はこの特例の対象外となります)。ただし、資本金5億円以上の法人(大法人)の100%子法人及び100%グループ内の複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている法人、株式移転完全親法人はこの特例の対象となる法人から除かれています。

Ⅳ 欠損金の繰越期間の延長

青色欠損金、災害損失金及び連結欠損金の繰越期間が9年から10年へ延長されます。これに伴い、当該規定の適用に係る帳簿書類の保存期間、欠損金額の更正期限、欠損金額の更正の請求期限も9年から10年へ延長されます。この改正は平成29年4月1日以後に開始する事業年度において生じた欠損金について適用されます。

Ⅴ おわりに

欠損金の繰越控除限度額の引下げは、決算における税効果会計の観点から大きな影響が見込まれます。将来の控除が予想されている繰越欠損金に対して繰延税金資産を計上している法人は、控除限度額が引き下げられたことにより、繰延税金資産の一部について取り崩しを要することも考えられます。
今後は、単体納税を行っている企業で発生した欠損金については、将来の繰越控除額が大幅に制限されることになります。一方、連結納税においては、親子会社の所得・欠損の相殺後の「連結所得」に対して控除限度額の制限がかかります。企業グループ内に単体納税の黒字法人と赤字法人が混在している場合には、節税の観点から、連結納税制度の導入インセンティブがいっそう高まるものと予想されます。
また、新設法人にかかる控除限度額の特例(Ⅲ(ロ)参照)は、平成27年4月1日以前に設立された法人であっても、「設立日」から7年後の日の属する事業年度までは適用可能です。しかし、合併や、事業を移転する分割・現物出資などの組織再編を行っている法人(合併法人、分割承継法人、被現物出資法人)については、事業を移転する法人等(被合併法人、分割法人、現物出資法人)と事業を受け入れる法人等の設立日のうち、最も早い日がそれぞれの法人の「設立日」とされるので、注意が必要です。例えば、現物出資によって事業を受け入れて新設された法人(被現物出資法人)であったとしても、当該現物出資を行った法人(現物出資法人)が10年以上前に設立されているような場合には、この特例の適用はありません。


  • 期末資本金が1億円以下の普通法人等。ただし、資本金5億円以上の法人(大法人)による完全支配関係がある普通法人や、完全支配関係がある複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている普通法人は除く。

情報センサー 2015年10月号