出版物 / 刊行物 / 調査資料
情報センサー2015年5月号 Law update

最新税務判例 ポイント解説
-税法の文言とは異なる通達の適法性

EY弁護士法人 弁護士・ニューヨーク州弁護士 北村 豊
EY弁護士法人 マネージングパートナー。京都大学法科大学院 非常勤講師(税法事例演習)(2010~15年)。長島・大野・常松法律事務所(00~09年)、金融庁総務企画局政策課金融税制室 課長補佐(09~12年)を経て、EYグループに参加。法務・税務・会計その他の専門家が協働することにより付加価値の高いサービスを提供することができる税務訴訟、税務調査対応、金融取引に関する法務・税務等に注力している。

Ⅰ 文言解釈が原則とされる税法

東京高裁は、平成27年2月25日、外国子会社合算税制の適用をめぐる税務訴訟の判決理由において、税法の文言とは異なる解釈を示す通達の適法性を認める旨、判示しました。
国は、法律の根拠に基づくことなく、税金を賦課・徴収することはできないとされています(租税法律主義)。そのため、税法はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではなく(最高裁 平成22年3月2日 第三小法廷判決)、非課税とすべき場合を定める規定(納税者の負担を減免する規定)についても、これをみだりに拡張解釈(非課税とされる範囲を広げるような解釈)すべきものではないとされています(最高裁 昭和48年11月16日 第二小法廷判決)。
もっとも、税務当局が発出する通達や課税実務においては、税法の文言とは異なる解釈運用がされていることがままあります。そして、税法の文言通りの解釈運用を求める納税者との間で争いになり、その結果、裁判所により通達や課税実務が否定されることがあります(東京地裁 平成24年12月7日 判決等)。本件でも、第一審は、納税者の主張に従い、税法の文言とは異なる解釈を示す通達を否定していました(東京地裁 平成26年6月27日 判決)。
そのため、税法の文言とは異なる通達や課税実務が裁判所で否定されるのはどのような場合か、その線引きが実務的に問題となっています。本件は、通達の適法性がメーンの争点になっていたわけではありませんが、この点の判断が第一審と控訴審とで割れた例として注目されています。本稿では、この点に限定して解説します。

Ⅱ 本件で問題とされた通達

ところで、外国子会社合算税制は、例えば、内国法人が、ケイマン諸島などの税率の極めて低い国または地域(タックスヘイブン)に所在する外国子会社に所得を移転することにより、日本における法人税の負担を減少させることを防止するために、内国法人の所得に一定の外国子会社の所得を合算して法人税を課する旨を定めています(措置法66条の6)。
もっとも、その外国子会社の所得に対して外国でも法人税が課せられる場合は、同一の所得に対して日本でも外国でも法人税が課せられることになるので、国際的な二重課税が生じます。そこで、内国法人に課する法人税の税額を計算する際に、合算する外国子会社の所得に対して外国で課せられた「外国法人税」を一定の範囲で控除することが認められています(同法66条の7)。
問題となったのは、この「外国法人税」の範囲です。税法の文言上は「外国法人税」とは、外国の法令に基づき外国またはその地方公共団体により法人の所得を課税標準として課せられる税をいいます(同法66条の7第1項、法人税法69条1項、同法施行令141条1項)。このため、定義上「外国法人税」には日本の法人税が含まれないことは明らかといえます。
ところが、通達は、「外国法人税」には、外国子会社が日本国内で生じた所得について、日本により課せられた法人税が含まれる旨を定めています(措置法通達66の6-20)。この通達は、一見すると税法の文言とは異なる解釈を示すものといえます。そこで、このような通達でも適法といえるか否かが問題となりました。

Ⅲ 裁判所の判断のポイント

この点について、第一審の東京地裁は、「外国法人税」に外国子会社が日本国内で生じた所得について、日本により課せられた法人税が含まれないことは、税法の文言上明らかとして、この通達の解釈を否定していました。これに対し、控訴審の東京高裁は、次の理由から、「外国法人税」にはこのような法人税も含まれると判示しました(<図1>参照)。

(下の図をクリックすると拡大します)


すなわち、前述の外国法人税額の控除の制度の趣旨に照らすと、措置法66条の7の規定が、外国の法令を根拠とするもので、必ずしも日本の法人税と同一のものとはいえない外国法人税額の控除を認めながら、日本の法人税額の控除を認めない趣旨のものと解することはできないといえます。同規定が、外国法人税額の控除についてのみ明記しているのは、外国子会社合算税制の設計上、ほとんどの場合、外国法人税額の控除が問題になるからであり、同規定は、外国子会社に日本国内の所得が生じ、日本の法人税が課せられることとなるという例外的な場合にも、当然、その法人税額について外国法人税額と同様に扱うことをその内容とするものと解すべきというのが裁判所の理由です(いわゆる当然解釈)。
この裁判所の判断は、租税法規であるからといって当然解釈がおよそ許されないと解することはできないとしたものであり、規定の趣旨に沿って文言とは異なる解釈をする余地を認めたものということができます。もっとも、あくまでも、前述の通り租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではないという理解を前提とするものであって、規定の文言を離れた解釈の適法性については厳格に判断するのが原則である点は変わらないものと考えられます。今後の対応としては、このような裁判所の判断を踏まえ、税法の文言とは異なる解釈を示す通達の適法性については、法務と税務の専門家が協働して検証することが有益といえます。