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情報センサー2015年2月号 Tax update

所得拡大促進税制

EY税理士法人
グローバル コンプライアンス アンド レポーティング部
税理士 橋本千秋
主に法人税申告書・消費税申告書作成業務などの税務コンプライアンスサービスに従事するとともに、税金勘定に係る監査業務にも関与している。また、国内税務および国際税務に関するコンサルティングサービスも提供している。

Ⅰ 概要

個人所得の拡大を図る観点から、企業の労働分配(給与等支給)を促すように、所得拡大促進税制が創設されました。具体的には、青色申告書を提出する法人(または個人事業者)が、国内雇用者の給与等支給額について、基準年度と比較して適用年度に応じ2~5%以上増加させた場合、当該支給増加額の10%を税額控除※1できる制度です。また、中小企業者等については、地方税において適用年度における道府県民税および市町村民税の額を、税額控除後の法人税額を基礎として計算できることとなっています。
雇用促進税制は、ハローワークへの一定の事前および事後手続きが要件となっていましたが、所得拡大促進税制は、特段の手続きは必要ありません。要件を満たす場合には、青色申告書に計算の明細書を添付して提出することにより適用できるため、多数の企業による適用が期待できます。なお、所得拡大促進税制と雇用促進税制は、いずれか一方の選択適用となります。

Ⅱ 適用期間

平成25年4月1日から平成30年3月31日(個人事業者は平成26年1月1日から平成30年12月31日)までの5年の間に開始する各事業年度が適用対象期間です。

Ⅲ 適用要件

国内雇用者の給与等支給額について、次の全てを満たす必要があります。

  1. 給与等支給額が基準事業年度の給与等支給額と比較して適用年度に応じ2~5%以上増加していること
  2. 給与等支給額が前事業年度の給与等支給額を下回らないこと
  3. 平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額を超えること

Ⅳ 用語の定義等

1. 国内雇用者

国内雇用者とは、法人の使用人※2のうち国内事業所に勤務する雇用者をいいます。

2. 給与等支給額

給与等支給額とは、各事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。また、適用年度と基準事業年度または前事業年度の月数が異なる場合には、給与等支給額の算出について所要の調整が必要となります。

3. 基準事業年度

基準事業年度とは、平成25年4月1日(個人事業主の場合は平成26年1月1日)以後に開始する各事業年度のうち、最も古い事業年度の直前の事業年度をいいます。

4. 平均給与等支給額

平均給与等支給額とは、継続雇用者に対する給与等の支給額の合計額を、それに係る月別支給対象者数を合計した数で除した金額とされています。

5. 継続雇用者に対する給与等

継続雇用者に対する給与等とは、適用年度及びその前事業年度において給与等の支給を受けた国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。

Ⅴ 平成27年3月決算法人における平成26年度税制改正の適用

所得拡大促進税制は、平成25年度税制改正により創設されましたが、平成26年度税制改正後(以下、改正後)、延長・拡充が手当てされました。Ⅲの①における給与等支給額の増加率が、5%以上から適用年度により2~5%以上に緩和され、平均給与等支給額の対象となる給与等支給額の範囲が改定されました。
また、平均給与等支給額を日々雇い入れられる者のみを除いて算出することとされていましたが、改正後は継続雇用者に対する給与等の支給額と、それに係る支給者数に限定して算定するように変更されました。そのため、適用年度の新規採用者や、前事業年度の退職者に対して支払った給与等については、平均給与等支給額の算定に含めないこととなります。新規採用者の給与等支給額は、高齢で退職した者に係る給与等支払額より一般的に少額になると思われることから、要件の緩和方向に影響する場合が多いと考えられています。
改正後の制度は、平成26年4月1日以降に終了する事業年度について適用されます。
そのため、平成25年4月1日以降に開始し、かつ平成26年4月1日より前に終了した事業年度については、改正前の制度を適用して税額控除を行うこととなっています※3。しかし、前述のとおり、改正後は要件が一部緩和されたことにより、平成25年4月1日以降に開始し、かつ平成26年4月1日より前に終了した事業年度について、改正前の要件は満たさないが、改正後の要件を満たすというケースも起こり得るでしょう。その場合には、翌年度についても改正後の要件を全て満たせば、翌年度の適用の際、適用1年目の税額控除額を上乗せして控除できるとされています。
3月決算法人を例にした場合の適用関係をまとめたフローチャートが<図1>です。前述の取扱いの適用が可能か否かを判定する際の参考にしてください。

(下の図をクリックすると拡大します)


  • ※1法人税額の10%(中小企業等は20%)を限度
  • ※2法人の役員及びその役員の特殊関係者を除く。使用人兼務役員の給与は使用人分も含め対象とならない。
  • ※3主に平成26年3月末決算法人における、適用1年目が該当

情報センサー 2015年2月号
所得拡大促進税制 (PDF:550KB)