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情報センサー2014年6月号 特別寄稿

会社法改正法案の概要

西村あさひ法律事務所 弁護士 髙木弘明
2002年弁護士登録、05年早稲田大学大学院アジア太平洋研究科非常勤講師、08年シカゴ大学ロースクール卒業(LL.M.)、08~09年ニューヨークのポール・ワイス法律事務所にて勤務、09年ニューヨーク州弁護士登録、09~13年法務省民事局付(会社法、振替法等担当)。会社法、金商法、会計・税務等に関する幅広い知識と経験を基に、国内外のM&Aの他、機関投資家・株主総会対応をはじめとするビジネスロー全般を広く手掛ける。

Ⅰ はじめに

「会社法の一部を改正する法律案」(以下、改正法)が、本年の通常国会で成立する見込みです。改正法の施行日は公布日から1年6カ月以内とされており、来年上半期に施行されることが見込まれます。本稿では、改正法の主な内容について概説します。

Ⅱ 企業統治に関する改正の概要

1. 社外取締役を置いていない場合の理由の開示

事業年度の末日において、監査役会設置会社(公開会社かつ大会社に限る)であって、株式につき有価証券報告書を提出しなければならないもの(典型的には上場会社)が社外取締役を置いていない場合には、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならないものとされます(372条の2)。法務省令の改正により、同様の事項が事業報告での開示事項とされることが予定されており、実際には、事業報告の該当箇所に言及する形で説明がされることが予想されます。
同条については経過措置が設けられておらず、3月決算の会社の場合、早ければ来年6月開催の定時株主総会から同条に基づく説明が求められる可能性がありますので、注意が必要です。

2. 監査等委員会設置会社制度

新たな機関設計として、監査等委員会設置会社制度が導入されます。監査等委員は取締役で、その過半数は社外取締役である必要があります(399条の2第2項、331条6項)。監査等委員である取締役とそれ以外の取締役は、選任や報酬決定において区別され(329条2項、361条2項)、任期も異なります(332条3項、4項)。監査等委員会及び各監査等委員の権限は、基本的には、指名委員会等設置会社(現行法の委員会設置会社)の監査委員会及び各監査委員の権限と同様ですが(399条の2以下参照)、それに加え、監査等委員である取締役以外の取締役の選解任等及び報酬について株主総会で意見を述べることができるものとされています(342条の2第4、361条6項)。
監査等委員会設置会社では、定款の定めにより取締役会決議事項を軽減することができます(399条の13第6項)。このことは、社外取締役及び社外監査役の重複の回避とともに、社外取締役を選任する上場会社にとって、監査等委員会設置会社へ移行する動機になると考えられます(<図1>参照)。

図1 監査等委員会設置会社のイメージ図

3. 社外取締役及び社外監査役の要件

社外取締役及び社外監査役(以下併せて、社外役員)の社外性の要件として、①親会社等又は兄弟会社の関係者でないこと及び②当該株式会社の関係者(重要な使用人を含む)の配偶者又は二親等内の親族でないことが追加されます。特に、子会社の社外監査役に親会社の従業員が就任している事例は少なくないと思われますが、改正法施行後は、子会社は、親会社や兄弟会社以外から社外監査役を迎える必要があります。
社外役員の要件については経過措置が設けられており、改正法の施行の際、現に社外役員を置いている会社においては、改正法の施行後最初に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時までは、なお従前の例によることとされています(附則4条)。

4. 会計監査人の選任等に関する議案の内容の決定

株主総会に提出する会計監査人の選解任等に関する議案の内容は、監査役(監査役会設置会社にあっては、監査役会)が決定することとなります(344条)。他方、会計監査人の報酬については、監査役(会)は、従前通り同意権を有します。
改正に伴い、監査役(会)による当該議案の決定や報酬への同意の理由を、事業報告や監査報告において開示する旨の会社法施行規則改正が行われることが予定されており、これらを通じて、会計監査人の選任等や報酬決定に関する意思決定の透明性が高まることが期待されます。

Ⅲ 親子会社等に関する改正の概要

1. 多重代表訴訟

親会社の株主が、一定の要件の下で、子会社の役員等の責任を追及する制度(多重代表訴訟制度)が導入されます。多重代表訴訟の要件は、①完全親子会社関係の存在、②最終完全親会社等(企業集団の最上位にある完全親会社等)の議決権の100分の1以上又は株式の100分の1以上の保有(①②につき、847条の3第1項、第6項)及び③責任原因事実の発生日における、最終完全親会社等が保有する(完全子会社を通じた間接保有を含む)株式の帳簿価額が、当該最終完全親会社の総資産額の5分の1を超えること(847条の3第4項)とされています。

2. 企業集団の業務の適正を確保するために必要な体制の整備

会社法本体に、取締役会が定めるべきいわゆる内部統制システムの内容として、「株式会社及びその子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制の整備」が定められるとともに(348条3項4号、362条4項6号、416条1項1号ホ)内部統制システムの運用状況が事業報告の記載事項とされます。これにより、企業グループにおける内部統制システムの構築及び運用について事業報告で開示することが求められることになりますので、これを契機に、親会社及び子会社の責任分担を明確にするなど、企業グループ全体の内部統制システムを見直すことが有用と思われます。

3. M&Aに関する改正事項等

改正法には、スクイーズアウトのための新制度として株式売渡請求制度の創設、組織再編等における株式買取請求制度の見直し、組織再編等における差止請求制度の拡充、詐害的会社分割がされた場合の残存債権者の保護等、M&Aに関する改正事項が含まれています。また、資金調達に関する改正も盛り込まれています。


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